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■21759
/ 親記事)
純白の花嫁
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□投稿者/ シロ
一般♪(2回)-(2013/09/23(Mon) 06:45:11)
―――――ああ、これで一体何度目かしら。
そんな風な思いが頭をもたげずにはいられない。
『ただいまご紹介に預かりました、佐々木と申します。
私は新婦である里奈さんとは小学生の頃からの友人で・・・』
折角の友人代表のスピーチも右から左へと流れ、内容が頭に入ってこない。
白とピンクを基調に飾られた室内も、テーブルの上の生花も、全てが夢のよう。
高砂で、微笑みを浮かべながら友人のスピーチを聞く新郎新婦の方へ目をやる。
2人とも性格がよく、人望が厚いようで、結構な人数が集まっている。
招待客も皆いい人そうで、2人はきっと幸せな夫婦生活が送れるだろうと思った。
(里奈・・・・・・。)
眩しいほどの純白のウエディングドレスで身を包んでいる、美しい新婦。
いつもよりも少しだけ濃いメイクをして、幸せそうな表情を浮かべている。
隣の白いタキシードを身にまとった新郎も、幸せそうに座っている。
友人代表のスピーチが終わり、会場が拍手の音でいっぱいになった時。
私は今日の主役である里奈との出会いを、思い出していた―――――
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■21760
/ ResNo.1)
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□投稿者/ シロ
一般♪(3回)-(2013/09/23(Mon) 07:01:54)
里奈と出会ったのは、私が大学2年生、里奈が大学1年生の時。
サークルの新歓で不安そうにしていた里奈に声を掛けたのがきっかけだった。
『何か食べなくてもいいの?』
最初は確か、そうやって当たり障りの無い言葉で話しかけたような気がする。
里奈は先輩に話しかけられたせいか、さっきよりも緊張してしまったようだ。
消えそうな声でいえ・・・、とだけ答え、恥ずかしげに俯いてしまった。
『そういえば名前と学科は?』
『あっ・・・桐谷、里奈です・・・学科は、看護学科です・・・』
『そうなの!私は医学部2年の島崎玲奈、よろしくね』
『はっ、はい・・・よろしくお願いします・・・』
最初はおどおどとしていた里奈も、話すうちに緊張がほぐれてきたようだ。
まだまだ控えめではあるが、微笑み程度の笑みは見せてくれるようにはなった。
里奈は同じ学科の友達と一緒にこのサークルの新歓に参加したらしかった。
しかしその友達が初めてのお酒で酔ってしまい、トイレから戻ってこないという。
『そっかぁ〜・・・まあ、1年生はお酒は初めてだと思うから、無理しないでね。
2日酔いや急性アルコール中毒にでもなったりしたら大変だから・・・』
テレビでは、毎年大学生によるアルコール関連のニュースが流される時期だ。
自分を擁護するわけではないが、問題が起これば大変なことになるのは一目瞭然。
一応このサークルの代表者やメンバーは、そういうことに対しての意識は高い。
一気飲みや無理な飲酒を勧めるような真似はしないだろうが、心配だ。
結局里奈の友達は数十分はトイレに篭もりっきりで、なかなか帰ってこず。
1人きりになってしまった里奈と私は、その時間で距離を縮めることができた。
私も友達が用事で不参加だったため、正直里奈の存在に結構救われた部分がある。
『あ、そうだ、連絡先を教えてもらってもいい?』
この時は、同じサークルに属する後輩、としてしか、里奈を見ていなかった。
連絡先もサークル関連の連絡で必要になるからで、下心は全くなかった。
―――――こうして、里奈と私は、メルアドと携帯の番号を交換した。
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■21761
/ ResNo.2)
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□投稿者/ シロ
一般♪(4回)-(2013/09/23(Mon) 07:16:32)
それから数ヵ月後、遂に長い長い夏休みに突入した。
夏休みはバーベキューをすることになっており、私は里奈にメールを送った。
あの新歓以来、里奈と私が2人で話すことは1回もなかった。
キャンパス内で見かけることはあっても、ただそれだけ。
何度かサークルの集まりはあったが、その時も遠く離れていた。
まあその時に軽く会釈をする程度の挨拶はあっただろうか。
それ以外は友達と楽しそうに話しているのを見かけるだけだった。
『お久しぶりです、医学部2年の島崎玲奈です。
8月20日(土)にバーベキュー兼キャンプをする予定です。
時間は17時に駅に集合、電車での移動となります。
場所は××キャンプ場にしようと思っています。
参加か不参加か、明日の20時までに返信してください。』
とても事務的な、絵文字も顔文字も一切ないメールを送った。
20分後ぐらいに里奈から参加する旨のメールが届いた。
私はまたも事務的にメモにそれを書き記すと、了解、とだけ返した。
だから、里奈から更に返信が来ることは、全くの予想外だった。
『先輩は、参加しますか?』
『一応そのつもりだよー。』
『費用はいくらぐらいでしょうか?』
『まだ参加人数が分かってないから、また改めてメールします!』
『分かりました』
先輩だからなのか、里奈のメールも文字だけが並んでいた。
内容も必要最低限のことだけで、それっきり、返信は途絶えた。
数日後、先輩から来た計画の詳細を元に、数人にメールを送った。
勿論里奈にも送り、分かりました、とだけ、律儀に返信が送られてきた。
律儀に返信してくる辺り、この子は真面目な人なのかもしれない、と思った。
だが、先輩だからそうしている可能性もあるので、その考えはすぐ消える。
それからしばらく、里奈と連絡を取り合うことはなかった。
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■21762
/ ResNo.3)
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□投稿者/ シロ
一般♪(5回)-(2013/09/23(Mon) 07:38:57)
里奈と再び連絡を取り合ったのは、8月20日の昼過ぎだったと思う。
急遽用事が入ったため、少し遅れて行く、とのことだった。
余裕を持って集合時間を設定したので、電車に遅れることはない。
そのことを伝え、気を付けて来るようにとメールした。
集合時間である17時を10分ほど過ぎた頃、里奈は現れた。
もうメンバーは9割方揃っていて、遅れてきた里奈は目立っていた。
里奈はすみません、といかにも申し訳なさそうに頭を下げる。
そして私の横をすり抜け、友達らしきグループと合流した。
『じゃあそろそろ行きましょ〜!』
ムードメーカーでもある代表者の掛け声に、わっと歓声が上がる。
そして私たちサークルの団体は改札口をくぐり、目的地へと向かった。
そのキャンプ場は初めて訪れたものの、かなりいい環境だった。
近くに山と海と川があり、少し離れた場所にはスーパーやコンビニがあった。
管理者の方もとてもいい方で、とても温かく私たちを迎えて頂いた。
私たちは荷物を置いた後、割り箸のくじ引きで男女別のグループを作った。
私は先端が青く塗りつぶされた割り箸を引き、また、里奈も同じものを引いた。
荷物を置いた後、少し休憩し、早速テントの組み立てを各グループで行った。
私と同じグループになった友達がキャンプの経験があり、とても心強い。
ほとんど彼女の指示に従って組み立てたが、あっという間に組み立てられた。
周りを見渡してみたが、他のグループも無事組み立てられたようだった。
『玲奈〜!次は何するの?』
子どものようなハイテンションで声をかけてきたのは、友達である明美。
一応各グループごとに班長がいるのだが、このグループの班長は私。
各班長に配られた冊子を見ながら、次の予定を確認する。
『えーと・・・次はバーベキューの準備だって。
私たちは黄色チームと赤チームと一緒に、川で魚釣りをするみたい』
『おお、魚釣りか!いかにも、って感じだねぇ〜。
さっ、じゃあとっとと準備して、川に行こ!』
幼児教育の学科に所属するだけあって、リーダーシップは私以上にある。
あっという間にグループのメンバー達と打ち解け、上手くまとめてくれた。
私たちは用意された長靴に履き替え、釣竿とクーラーボックスと共に川へ行った。
黄色チームも赤チームも男子のチームだったが、結構楽しい時間を過ごせた。
魚も思った以上に釣れ、晩ご飯には困らないだろうと笑い合ったりした。
・・・しばらくして、少し焦った表情を浮かべた明美がこちらにやって来た。
『ねえ玲奈、うちらのチーム、1人足りないんだけど・・・。
その子がどこに行ったのか知らない?』
『え・・・私は何も聞いてないけど・・・』
男子と談笑していた私だったが、慌てて辺りを見渡して確認する。
確かに、私のグループだけ、1人メンバーが足りない。
その時だった、少し離れた場所から悲鳴のような声が聞こえたのは。
『先輩っ!!里奈がっ・・・里奈があそこに!!』
後輩が指差す方向には、足元をすくわれたのか、溺れかけている里奈。
泳げないのだろうか、焦っているのだろうか、上手く起き上がれないようだ。
私は誰よりも早く川に飛び込み、ばしゃばしゃと里奈のところへ向かった。
幸い、深さは大した深さではなく、流れも急ではなかったため、すぐに行けた。
『里奈っ!!』
里奈の両腕を掴み、引き上げると、里奈はようやく立つことができたようだ。
しばらくむせていたが、私に何度も何度もごめんなさい、と謝ってきた。
私は里奈の無事を確認すると、腕をとって一緒に岸へと連れて行く。
男子が持ってきてくれたタオルで里奈と自分の身体を包み込んだ。
『夏だから風邪は引かないだろうけど・・・気を付けてね?』
『はい・・・本当にすみませんでした・・・』
私たちは道具を片付けると、重くなったクーラーボックスを抱えて戻った。
他のメンバーは薪拾いや食材の準備などをしていたのだが、大喜び。
調理担当のグループが塩焼きにしてくれて、1人1匹は食べることができた。
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■21763
/ ResNo.4)
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□投稿者/ シロ
一般♪(6回)-(2013/09/23(Mon) 07:56:03)
その日の夜だった・・・私と里奈が、キスをしたのは。
川でのことで落ち込んでいるのか、里奈はそれから元気がなかった。
心配をかけさせまいと、無理矢理元気であるかのように振舞っていた。
みんなが寝静まった頃、私は喉が渇いて、携帯と財布と共に外に出た。
近くの自動販売機で飲み物を買い、近くのコンクリートの階段に腰を下ろす。
すると、後ろからガコン、と自動販売機の音がしたので、振り向いた。
そこには、寝ていたはずの里奈が立っており、里奈も私に気がついたようだ。
里奈は無言で私の右隣に来ると同じように腰を下ろし、コーラを飲んだ。
『先輩・・・今日は本当にすみませんでした・・・』
『もういいよ、無事だったんだし・・・』
『・・・はい・・・』
私は落ち込む里奈を励まそうと、色々な質問をして、会話を弾ませた。
看護学科の授業の話を聞いてみたり、高校での話を聞いてみたり。
同時に私も医学部の話をしたり、去年の話をしたりした。
里奈は今ではかなり打ち解けており、けらけらと笑ってくれた。
私は買ったサイダーを飲みながら、里奈と楽しい時間を過ごした。
『先輩って、色んなことを知ってるんですね・・・流石医学部生です』
『医学部だからって、物知りだったり、頭がいいわけじゃないよ』
『それでも先輩は頭がいいし、素敵だと思います!冷静だし・・・憧れです』
突然憧れだと言われ、満天の星空を眺めていた私は、里奈へと視線を移した。
里奈はコーラの缶を握り締めたまま、缶の飲み口を見つめていた。
近くにある街灯が、ほんのりと耳まで赤くなった里奈の顔を照らし出す。
『・・・里奈、酔った?』
『よ、酔ってないです!コーラで酔うわけないじゃないですかっ!』
慌てて里奈は否定し、隠すかのように左の頬にコーラの缶を当てた。
私は何だか不思議な気分になった、どきどきと心臓が高鳴り、緊張感が走る。
まるでキスをする直前のような・・・そんな高まった気分を味わった。
『里奈・・・』
少し掠れた声で名前を呼ぶと、里奈はびくりとして、缶を下ろした。
そして気まずそうにこちらを見て、更に頬を赤く染めた。
私は里奈の手から缶を抜き取り、私の左側の空いた場所に置く。
視線を泳がせる里奈の頬を両手で挟んで、ゆっくりとこちらに向けた。
里奈は真っ赤になり、唇を軽く噛み、私の手に添えられた手は汗ばんでいた。
―――――それは、映画のワンシーンのように、全てがスローモーションだった。
里奈が目を閉じるのも、私が里奈に顔を近づけるのも、2人の唇が重なるのも。
ふわり、と、掠るかのように軽く唇を重ね合わせ、しばらくして離した。
里奈はゆっくりと目を開け、そして、促すように再度目を閉じた。
ちゅっ、ちゅっ、と小さなリップ音を立てながら、角度を変え、何度も口付ける。
舌は入れなかったし、体を触ったり、ましてや押し倒したりもしなかった。
ただただ軽いキスを繰り返し、何度もお互いの唇を重ね合わせただけだった。
私と里奈は、2人きりで、星空の下、しばらく唇を重ね合っていた。
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■21764
/ ResNo.5)
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□投稿者/ シロ
一般♪(7回)-(2013/09/23(Mon) 08:10:49)
それからどうやって自分達のテントに帰ったのか、あまり覚えていない。
しかし、キスをしたからといって、私と里奈が恋人になったわけではなかった。
どちらもそのような話を持ち出すことはなく、ただ、キスをするだけの関係。
その日以来、2人きりになる度に、私たちは意味もなく唇を重ね合った。
2人で出かけたり、頻繁に連絡を取ったりするわけでもなく・・・。
私は何分そうやって回想していたのだろう、料理が運ばれてきて我に返った。
フランス料理のような美しい前菜が運ばれてきて、次々と置かれていく。
隣に座っていた明美に促され、慌ててナプキンを膝の上に広げた。
いつもはカジュアルな格好を好む明美も、今日はフォーマルな格好だ。
色素が薄い髪は後ろで丸められ、淡いオレンジ色の膝丈のドレスを着ている。
そして肩には半透明のクリーム色のストールがかけられている。
「明美、今日の格好、似合ってる」
「・・・玲奈ってば、突然どうしたの?そういう玲奈も似合ってるよ」
くしゃり、と笑った彼女の目元には、ラメ入りのピンクのシャドウと黒いライン。
オレンジ色のチークも、薄いピンクのグロスも、明美にかなり似合っている。
「玲奈は昔から緑がよく似合うよねぇ〜」
そう言いながら、明美は私の深い緑のシンプルなドレスと、黒いボレロを見た。
私は黒いショートヘアにラメ入りのスプレーをつけ、メイクはシンプルに。
黒いラインとブラウンのシャドウと透明なグロスをつけただけだ。
なんやかんや、余興や新郎新婦からのご両親への手紙やらが終わっていく。
料理も美しいだけではなく、どれも美味しく、胃も適度に満たされた。
かなりいい式になったんじゃないかと、再び高砂の2人を見ながら思う。
―――――里奈とは、結局、恋人関係にはならなかった。
2人とも何も言わずに、ただキスをするだけの、先輩と後輩の関係を貫いた。
それでも私は、里奈のことが好きだったのではないだろうか。
今、新郎と並んでいる里奈を見て、胸の奥がズキズキと痛むから。
前からそうだった、私はよく大事なことを話さない性格だと言われる。
女性が好きなことは、中学生ぐらいの時に初恋を経験して気が付いている。
だけど関係を壊すのが怖くて、良き友達でいることぐらいしかできなかった。
片思いをしていた人の結婚式に呼ばれるのも、1度や2度ではない。
幸せそうな姿を見るたびに、ああ好きだったのだと実感する。
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■21766
/ ResNo.6)
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□投稿者/ シロ
一般♪(9回)-(2013/09/23(Mon) 08:25:49)
無事式が終わり、新郎と新婦に入口で見送られる時がやって来た。
少し遠方で次の日が休みであることもあり、私は明美と一緒に宿泊する。
既に予約は済ませてあるから、近くにあるホテルにタクシーで向かうだけだ。
2回お色直しをして、今は淡いピンク色のドレスに身を包んだ里奈が見える。
隣には、にこやかに親戚であろう老人達に挨拶をする新郎の姿がある。
私は何気ない風を装って里奈の前に立ち、改めてお祝いの言葉を述べた。
「改めて結婚おめでとう、里奈。すごくいい式だったよ、ありがとう」
「いえ、こちらこそ来ていただいて・・・とても嬉しかったです。
これからも新郎共々、よろしくお願いします」
「・・・こちらこそよろしくね。2人で幸せになってね」
あの甘くて切ない記憶について聞こうとしたが、思いとどまった。
里奈は新郎と一緒に幸せな家庭を築いていく、それでいいじゃないか、と。
それにもう過ぎた昔のことだ、今更蒸し返す必要はない、とも。
明美と一緒に自動ドアを通り抜けると、満天の星空が見えた。
初めて里奈とキスをした時も、こんな綺麗な星空だった気がする。
明美も私の視線に気付いたのか、一緒になって空を見上げた。
「綺麗だね・・・明日は晴れるかな?」
「どうだろうね・・・」
秋の星空を、しばらく明美と一緒に見上げていた。
明美とタクシーで約10分の距離にあるホテルに行き、チェックインを済ませる。
7階の部屋のカードキーを手渡され、預けていた荷物と共に部屋へと向かう。
明美は隣で今日の式の思い出を語っており、私はただ相槌を打っていた。
部屋のドアを開けると、明美も私もベッドの上に倒れ込むようにして飛び込んだ。
メイクを落としてシャワーを浴びたいのだが、どっと疲れが襲ってきた。
それは明美も同じようで、枕に顔を埋め、今にも寝てしまいそうな雰囲気だ。
「明美、寝たら駄目だよ。・・・先にシャワー浴びておいで」
「えぇ〜、一緒に浴びようよぉ〜玲奈ぁ〜」
「何ふざけたこと言ってんの、早く浴びてきなさい」
「えぇ〜・・・」
そう言ってちらりとこちらを見た明美の目は、なぜか少し冷たく感じた。
ぎくりとはしたが、すぐにいつもの明美の目に戻ったため、何も言えない。
そして明美は着替えを抱え、渋々シャワールームの方へと去って行った。
私はベッドに仰向けになるように体勢を変えると、ため息をついた。
(里奈・・・幸せになってね・・・)
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■21767
/ ResNo.7)
Re[7]: 7
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□投稿者/ まる
@
一般♪(2回)-(2013/09/23(Mon) 19:48:06)
一気に読ませていただきました。
素敵なお話ですね… シンプルだけど思いの詰まった綺麗な作品ですね。^^
玲奈さんの繊細な心境が切なく伝わってきました。
これからも応援しています。。
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■21768
/ ResNo.8)
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□投稿者/ シロ
一般♪(10回)-(2013/09/24(Tue) 04:18:25)
まる様
一気に読んで頂いたとのことで、感想ありがとうございます。
思いつきで一気に7話分を更新した作品ですが、お褒め頂き恐縮です。
最後までこの作品の行方を見守って頂けたら嬉しいです。
作者・シロ
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■21769
/ ResNo.9)
8
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□投稿者/ シロ
一般♪(11回)-(2013/09/24(Tue) 04:55:25)
20分ぐらいでシャワールームから出てきた明美は、スキンケアを始めた。
私も明美ももう若くはなく、既に20代後半の世代だ、ケアには気を遣う。
化粧水や乳液を肌に叩き込む明美を横目に、私もシャワールームへ入った。
ツインルームだからなのか、シャワールームも心なしか広く感じる広さだった。
久しぶりに着たドレスを脱ぎ、軽く畳んで棚にしまうと、カーテンを閉める。
そして指先で確認しながら少し熱めのお湯になるように調節し、体を濡らした。
緊張とフォーマルな衣装で固まっていた体が、芯からほぐれていくようだ。
俯いて髪の毛も濡らすと、アメニティのシャンプーで頭を泡で包み込む。
シャンプーは普段自分が使っているメーカーのものではないが、いい匂いがする。
リンスインシャンプーらしいので、泡を流すと軽く水を切り、今度は体を洗う。
ボディーソープもアメニティとして置いてあったものだが、いい匂いだった。
シャンプー同様泡立ちがよく、何だか幸せな気分になっていくのを感じた。
最後に持ってきた洗顔剤でメイクを落として、ようやく全身がさっぱりした。
明美と同じぐらいの時間をかけてシャワールームを出ると、明美はベッドにいた。
最近流行りの番組を見ながら、時々楽しげな笑い声を1人であげている。
時々聞こえる明美の笑い声を聞きながら、ドライヤーで髪を乾かしていく。
そして明美と同じく化粧水と乳液を肌に叩き込み、ようやくベッドに腰掛けた。
「今何の番組をしてるの?」
「え、玲奈、この番組知らないの!?」
「最近全然テレビ見ないから分かんない」
明美が説明してくれたものの、私からすれば興味をそそられない内容だった。
再び番組に夢中になる明美に多少呆れながらも、私はデジカメの電源を入れる。
そこには、今日撮ったばかりの、新婦姿の里奈の写真が何枚も並んでいた。
満面の笑みを浮かべる姿や、新郎と一緒にケーキに入刀しようとしているところ。
勿論、新郎の写真も撮ったし、久しぶりに会った友人や知人達も写っている。
しかし気付かない間に、カメラのレンズは、里奈の姿ばかりを収めていた。
(これじゃあまるで、未練たらたらの女のよう―――――)
里奈とは、里奈が大学を卒業してから、たまに連絡を取り合うぐらいだった。
私は6年間は大学に通わなければならなかったし、医学部とだけあって忙しい。
里奈も実習や課題に追われていたらしく、自然消滅のようになっていた。
ふと思い出した時に、近状を尋ねたり、報告したりする程度の関係になった。
とは言っても同じ大学の同じサークルで活動をした先輩と後輩の仲だ。
疎遠になっていたわけでも何でもない私を結婚式に招くのは、至って通常。
見送りの時に、すぐそこの喉まで出てきていた質問を、もう1度自分に問う。
(里奈は私のことを、どう思っていたんだろうか・・・)
恋人だろうか、友人だろうか、それともただの先輩だろうか、知人だろうか。
それは里奈に聞かなければ永遠に分からないが、私は聞く勇気を持っていない。
聞いて気まずい関係になるよりも、今までのような関係を保っていたいのだ。
私は明美に勘付かれない程度に深く深呼吸をし、ベッドの上に寝転んだ。
明美は依然番組に夢中のようで、1人でテレビを見ながら楽しそうにしている。
壁にかけられている時計を遠目に見ると、とっくに22時を過ぎていた。
明美は明日は1日休みらしいが、医者である私は午後からは仕事の予定だ。
そこまでデリケートでもないし疲れているので、今日はこのまま眠れるだろう。
きちんとベッドに潜り込み、携帯のアラームをセットすると、そっと目を閉じた。
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■No21768に返信(シロさんの記事) > > > > まる様 > > > 一気に読んで頂いたとのことで、感想ありがとうございます。 > 思いつきで一気に7話分を更新した作品ですが、お褒め頂き恐縮です。 > 最後までこの作品の行方を見守って頂けたら嬉しいです。 > > > > 作者・シロ > > >
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