| レンはアイの涙を見て、はっと我に返って、手を止めた。レンは
「‥‥ごめん‥‥なさい。」
とうなだれて、アイから離れた。 アイはグスングスンと鼻をすすりながら、急いで服装を直すと部屋を飛び出した。
それから何回かユミ先生の家に行ったが、避けているのかレンとは会わなかった。 アイとしても、どういう顔で会えばいいのかわからなかった。
ある日、会社の終わり際に編集長から誘われた。 仕事以外では会いたくなかったので、断ったが、会社の出口で待ち伏せされた。 「おい、ほら行くぞ!たまには付き合え。」 「いや、私、あの、約束があって‥‥」 「たかが、エロ雑誌の編集が気取るんじゃねえよ。」 と腕を掴まれる。その時、その手を払った人がいた。 「おっ、なんだよ!」 レーシングスーツにフルフェイスのヘルメットを被っているため、顔は見えないがレンだ。 レンは黙ってアイの手を引き、歩き出した。 「ちっ、なんだよ!彼氏と待ち合わせかよっ!」 レンはバイクの所まで来ると、黙ってヘルメットを渡した。 振り返ると、編集長がまだ未練がましく見ているので素直にバイクに乗った。 バイクはすぐに高速に入り、郊外へと向かう。 「ねぇ、どこにいくの?」 大声で叫んでも返事がなかった。やがて高速を降り、山の方へ向かう。 アイは不安になってきた。峠道に入り、ラブホテルの看板が目に入る。 ‥‥まさか?!
続く
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