| 雨雲が低く垂れ込め、今にも降り出しそうな 空の下を麻奈は急いでいた。 麻奈は女性誌の記者をしている。 女性誌と言っても、芸能人のゴシップとエッチな記事がメインだ。 この前は風俗嬢に話を聞いた。 今日は痴漢に話を聞くため、待合せ場所に向かっている。 痴漢と言ってもなんと女性らしいのだ。 さすがに写真はNGということなので、 カメラマンを連れずに麻奈ひとりで会うことになっていた。 急ぐ麻奈の額に雨粒が当たった。麻奈は憂鬱になった。 雨は嫌いだ。おまけに傘をわすれた。
待合せ場所のホテルに着き、指定された部屋の前で身支度を整える。 今日はグレーのパンツスーツで、髪をアップにしている。 ひとつ深呼吸して、ドアをノックした。 中から落ち着いた声でどうぞと。 部屋に入ると何故かゾクッと悪寒が走った。そして驚いた!
「えっ?‥‥あの‥‥えと‥‥」
待っていたのはなんと女子高生だっ た。 上下黒のセーラー服に赤いリボン、漆黒の髪は肩までのソバージュ。 透き通るような白い肌にヘーゼルの瞳と血の滴るような赤いくちびる。 女性でも見惚れるような美少女だ。
「月刊◯◯の方ですか?」 「あっ、はい。」 「こちらへどうぞ。」
ニコッと笑うと八重歯がキラリと覗いた。慌てて名刺を差し出した。
「佐藤麻奈です。よろしくお願いします。」 「こちらこそ、来栖亜里沙です。」
握手を交わしたとき、その手のあまりの冷たさに麻奈は驚いた。 こうしてテーブルを挟んで向かい合っていても、なにか違和感があった。
「信じられませんか?」 「ええ。」 「そうでしょうね。それが好都合なんです。」
そう言って亜里沙は麻奈の首から下に目をやる。 麻奈はまるで裸を見られているように感じて気恥ずかしくなった。 さらに見つめられると肌も通り越し、血流や ひとつひとつの細胞まで見透かされるような錯覚を感じ、本能的に恐怖を感じた。 麻奈は気を取り直して、取材を始めた。
続く
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