ビアンエッセイ♪

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■22241 / 親記事)  GLOOVE
  
□投稿者/ 気まぐれメガネ 一般♪(1回)-(2017/10/27(Fri) 15:58:01)
    ―― No.1 始まりの音  ――




    鏡を見て最終チェックをする。

    化粧よーし。
    髪型よーし。
    服装よーし。

    素晴らしい、パーフェクトだ。



    ドアを開け廊下へ・・・いや、待て。
    もう一度洗面台の前へ立ち、鏡を見る。

    鼻毛よーし。



    今度こそパーフェクトだ。
    ドアを開け廊下を軽やかに通り過ぎ、玄関へ。
    昨日から用意していた黒いシンプルなブーツを前に、大きく深呼吸をする。



    私は今からとある掲示板で知り合った女性に会いに行く。
    メールを始めたのは昨日。
    正直、この早すぎる展開に戸惑っている。




    「ミューさんへ
     
     はじめまして、コーヒー豆といいます(*^^*)
     掲示板を見て気になったのでメールしました。
     映画と音楽が大好きなんですね!
     私も映画が大好きでよく一人で映画館に行きます(*´▽`*)
     音楽は時々ライブを見に行く程度ですが、私も好きです。
     良かったら仲良くしてもらえると嬉しいです(*^^*)
     
     コーヒー豆」




    掲示板の「彼女募集ページ」に書き込んだ私にくれた、彼女からの最初のメール。
    確かに私は映画と音楽が大好きだ。
    共通点があって嬉しい。
    しかしそんなことよりなにより、「コーヒー豆」ってなんだよ。
    OK分かった、「コーヒー」は私も大好物なので良しとしよう。
    だけどなんなんだ「豆」って。
    私はすぐに一つのことを連想した。
    頭で考えるよりも先に、感覚的に、衝動的に、突発的に、私はすぐさま連想したのだ。





    ゆるやかな曲線を描いて白くそびえたつ二つの乳房の上に凛と立つコーヒー豆。




    そう!!「乳首!!」




    掲示板でもらった返信しなければならないメールの中で、埋もれることなく突如煌々と輝きだしたコーヒー豆。っていうか豆、っていうかもう乳首。



    セクはタチである私にって、コーヒー豆はもちろん大好物だ。
    なんとしてでもこのコーヒー豆とは会いたい。
    あわよくばコーヒー豆を見たい。
    願わくばコーヒー豆を舐めたい。
    もはや夢でもいいからコーヒー豆を口に含みたい。



    しかし私は、突き上げる衝動とは裏腹に、とても冷静なメールを返す。
    こういう掲示板の出会いでは、大切なことが3つあるのだ。


    1、個人を特定できるような質問をしない
    いまやネットマナーと呼んでも過言ではない。
    もちろん厳守だ。


    2、会話のキャッチボールを丁寧かつ大切にする
    相手が振ってくれた話題はどんな些細なことでも拾い、大切な質問かのように丁寧に返信すると好印象を残すことができる。
    たくさんの人が利用する掲示板だ。
    相手も数人にメールしている可能性があるため、こういったところでポイントを地道に稼ぐのは必須テクニックである。


    3、がっつかない(すぐに会おうとしない)
    今回はこれが一番難しかった。
    どうしても会いたい、コーヒー豆に。
    隅々まで神経を行き渡らせこのあふれ出すムラムラを微塵も感じさせない巧みな文章で、偶然が重なったように見せつつ計画的に誘い出す。




    結果。
    私は今、黒いシンプルなブーツに足を入れている。
    コーヒー豆に会う為に。

    ここまで来たら願うことはただ一つだ。




    コーヒー豆を舐めたい!!!



    あ、いや、待って。
    もう一つあったわ。




    かわいい子が来ますよーに!!!!!




    ブスとデブのコーヒー豆に興味などないものぉぉぉおお!!!
    ブスやデブならキャッチ&リリースだ。
    可愛い子ならキャッチ&イートだ。




    私の燃え盛るようなムラムラとは打って変わって玄関を開けると、12月の冷たい雨がしとしとと降っていた。
    なるほど、最高じゃないか。
    私は左の口角をあげニヤリとした。



    可愛いコーヒー豆が来たら、相合傘をしよう。



    重く垂れこめるような灰色に包まれた世界に聴こえるのは。
    雨が叩く傘の音。
    時折水をはねながら通り過ぎる自動車の音。
    そして。
    跳ねるような、それでいてきっちりとリズムキープされた私の靴音だけだった。

引用返信/返信 削除キー/
■22242 / ResNo.1)   GLOOVE
□投稿者/ 気まぐれメガネ 一般♪(2回)-(2017/10/27(Fri) 16:04:25)
    ―― No.2  動き出した音  ――



    いつでもすぐに気が付くように左手に握っていたスマホが震えたのは、改札を出た時だった。
    スマホのホームボタンを押すと、時刻は11:50分を表示している。


    待ち合わせ時間は12時。
    早いな。
    コーヒー豆は遅刻しないタイプか。

    メールを開く。



    「待ち合わせ場所、北口イルカの銅像前に着いたよー!」



    やはりコーヒー豆からのメールだった。
    さっそく返信。



    「早いね!私は今改札を出たよ」




    どんどんコーヒー豆に近づいているんだ。
    ヤバイ。
    めっちゃドキドキしてきた。




    イルカの銅像の前で待つコーヒー豆を探す。
    ついつい目線が可愛い人を探してしまう。

    可愛い人来い、可愛い人来い。



    その時、もう一度私の左手に握られたスマホが震えた。



    「あぁ、なんかドキドキする!(笑)
     今どこ?もう銅像前に着いた?」



    可愛いこと言うなー!もう!
    私もめっちゃドキドキしてるよおおおおお!!
    でもコーヒー豆より年上の私としてはお姉さんぶりたいので、ここは余裕な振りをしておこう!



    「ドキドキするの?可愛いね!笑
     今銅像前に着いたよ」



    「可愛くはないよ!(笑)
     すごいなぁ、ミューさんは余裕そうだね。
     私、黒いコート着てるんだけど、分かるかな?」




    うん。余裕そうな振りしてるだけで、心臓バックバクだけどなっ!!


    一通り見渡してみる。
    しかし今日はあいにくの日曜日だ。
    黒いコートを着ている女性は多い。
    返信できずにいる私にまたコーヒー豆からメールが来た。



    「黒いコート着てる人多いね(笑)
     髪型はボブだよ!見つけて!」


    急いでメールの文章を書く。


    「OK!任せて!
     この中で黒いコートを着てボブカットの一番可愛い人に声をかけるね!」


    顔を上げ、今か今かと銅像の前で待ちわびる女性たちの顔を見ながら祈るような気持ちで送信ボタンを押した。
    可愛い人・・・来いいいいいい!!!



    見つけた!!




    きっとあの人だ。
    ドキドキと鳴る心臓がよりいっそう早くなる。
    黒いコートを着て、ボブカットで、スマホを見ながらクスリと笑った女性が一人いたのだ。
    私の左手の中でメールの着信を知らせるバイブが振動していたが、私はそれを無視し、一直線にその女性に歩み寄った。
    私に気が付いた女性が顔を上げる。
    大きくてたれた目の可愛らしい視線が、私のシャープなつり目とカチリと合った。
    私はその可愛い目を真っすぐに見つめながら、




    「コーヒー?」


    女性はニッコリと笑い、言った。


    「豆っ!」



    私たちは吹き出すように笑っていた。
    なんだこれ、合言葉みたいだ。
    そう思っているとコーヒー豆が言った。



    「なんか合言葉みたいだね!」




    その一言に私の心臓はさらにドキリと拍動を強め・・・止まった。
    一瞬、コーヒー豆とシンクロしたように感じたのだ。
    私と感覚が似ているのかもしれない。




    コーヒー豆にもっと近づきたい。
    なんでもいいから、もっと彼女を知りたい。
    できればコーヒー豆のブラジャーの下に凛と立つ二つのコーヒー豆も。
    願わくばそのコーヒー豆の味も。


    コーヒー豆の大きくてたれた目を見つめながら私の心臓は、ゆっくりと、だけど力強く、確かなリズムを刻み出す。
    その拍動に合わせじんわりとしみ渡るような暖かい血液が、私の体中を駆け巡っていた。


引用返信/返信 削除キー/
■22243 / ResNo.2)  Re[2]: GLOOVE
□投稿者/ 気まぐれメガネ 一般♪(3回)-(2017/10/27(Fri) 16:58:56)
    ―― No.3  中で響く音  ――


    「私、美味しそうなパスタ屋さん調べといたんだ」



    そう言いながらコーヒー豆はスマホのブラウザを開いた。
    途端に大音量で音楽が流れ出す。



    「うわー!ちょっ!!待って待って待ってぇー!!」




    なるほど、コーヒー豆はドジ・・・っと。
    心のメモ帳に書き記しておこう。
    さらにメモ帳に書くため、質問をしてみる。



    「今の曲は誰の曲?」


    「西城秀樹だよ」


    「え!?え・・・っとぉ、え!?
     西城秀樹って、あの、昭和歌謡の西城秀樹?」


    「うん!私ね、今昭和歌謡にハマってるんだぁ」


    「そ、そっか。お母さんの影響とか?」


    「ううん。お母さんはSMAP聴いてるよー。
     解散って聞いたときは庭に記念碑建てるって言ってさー。
     止めるの大変だったんだからー」


    「ええ!?おか、おか、お母さん!?記念碑!?」


    「お父さんはビリー聴いてるな」


    「ビリーって、どこのビリーかな?」


    「もちろんビリージョエルだよぉー!!ミューさん面白ぉーい!」





    豆ファミリーの方がよっぽど面白いわ。
    どんな豆たちだよ。



    「あ、パスタ屋さん、あっちみたい」



    スマホの地図を見ながら歩きだしたコーヒー豆についていく。
    雨は上がり、相合傘はできそうもない。
    まぁいい、チャンスは必ずやってくる。



    「そう考えたらさ、私はお父さんの影響を受けてるんだなぁ」


    「え?ビリー・ジョエル?」


    「うん。ビリー・ジョエルってさ、アメリカの昭和歌謡みたいなものじゃない?」


    「え・・・っと、まぁ、うん、年代的にはそうなる・・・のかな」


    「じゃ、私はお父さんの影響です!」



    と言いながら私の目をのぞき込んできたコーヒー豆に、ちょっとドキッとしてしまった。
    コーヒー豆は私より低身長なので、上目遣いがなんともエロイ。
    慌てて視線を足元へと外す。
    ドキッとしたことがバレないように、なんとか次の会話をひねり出さねば。



    「あっちだ」



    と言いながら突然右折したコーヒー豆になんとかついていき、
    ひねり出した質問をしてみる。



    「それで、SMAPの記念碑はどうなったの?」



    言ってからすぐに後悔した。
    あ、この質問広がらないな。
    それよりもっとコーヒー豆自身のことを知りたいのに。


    「なんかね!街中のSMAPのCDを買い占めて、そのCDでタワーみたいな記念碑を作る!って言い出したんだよー!あ、あっちだ」



    今度は左折。

    なんとか気の利いた事を言いたいな、なんかないかな。



    「それは・・・カラスが寄って来なくなるね!」


    「メリット小さいよぉ〜!」



    そう言って歯並びの良い笑顔を見せたコーヒー豆は、とても可愛らしかった。
    ヤッバイ、めっちゃタイプだ。
    どうしよう。
    可愛い人がいいとは思っていたけど、まさかこんなにタイプの人が来るなんて思ってもみなかった。



    「ここだ!」



    突然立ち止まったコーヒー豆に合わせて私も慌てて立ち止まる。
    そして見上げた目線の先には、セブンイレブンが。



    「セブンのパスタが好きなの?」


    「あれ?お店無くなったのかな?」



    心のメモ帳追記。
    コーヒー豆は方向音痴。



    「そんな簡単に無くならないでしょ!
     私に地図、見せてみて?」



    わざとコーヒー豆の顔に近づいて、そっと匂いを嗅ぐ。
    すんすん、なるほど、残念、風下だ、匂わない。

    コーヒー豆が慌ててスマホを私に突き出した。




    「あの、えっと、今度はミューさんが案内して!!」



    絶対照れてるよーーー!!
    可愛いなーーー!!


    ここはお姉さんらしく頼りになるところを見せるチャンスだ。
    スマホを握るコーヒー豆の手を包むように握り、画面だけをこっちに向ける。




    「おけ。
     あぁ、んとー、なるほど、これ、きっと逆だよ。
     最初に右折したところを左折だったんじゃないかな。
     こっちだと思うよ」



    そう言ってコーヒー豆を見ると、完全にそっぽを向いて耳が真っ赤になっていた。
    どうやら私の勘違いでなければ、コーヒー豆は私に好印象を持っているらしい。
    なんて可愛いんだ。
    このまま抱き寄せてしまいたい。

    しかしここは真摯な対応をしよう。
    焦ってはいけない。
    私たちにとっての今日はまだ始まったばかりなのだから。




    パッと手を放し歩き出す。
    コーヒー豆に穏やかな声音で話しかけながら、頭の片隅で考えるんだ、私。
    さっき二つ目の信号機を曲がってきたから、なるほど、こっちだ。
    そして、到着した。




    「イルカの銅像だね」




    コーヒー豆の言葉にそっとうなずくしかなった。
    自信満々に歩いてきたのに!!
    恥ずかしっっっ!!




    もう一度スマホの地図を難しそうな表情でのぞき込むコーヒー豆を、じっと眺めてみる。
    色白の肌。切りそろえられたボブカット。スッと通った鼻筋に、大きくてたれた目。
    ぷっくらと控えめに膨らんだピンク色の唇がとてもとても、それはそれは、なんともいやはや、エロイ。
    もう一度完結に言おう。
    唇が、エロイ。そう、エロイのだ。
    キスしたい。
    その柔らかそうな下唇をそっと咥えて吸いながら舌先でチロチロと・・・





    「分かったぁー!!」



    うわお!!ビックリしたーーん!!
    いきなり大きい声出すから肩がビクって!!ビクってなったわ!!




    「これさ、南口だよ!私たちが居るのは北口でしょ?
     北口と南口の分岐だから、イルカの銅像に戻って来て正解だったんだね!
     ミューさんすごーい!!」



    あぁ、良かった。とりあえずビビったのは気付かれてないっぽい。



    「偶然だけどね(笑)。
     それか、もう一度私が改札から出てくる所からやり直して、今までのこと無かったことにする?」



    コーヒー豆はころころと笑い声をあげ言った。



    「やだよ。せっかくのミューさんとの思い出、なくしたくないよ」



    そう言ってうつむいたコーヒー豆。
    そっと優しく抱き寄せて、その赤く染まった耳にキスしたい。
    なんて可愛いんだろう。
    見た目だけじゃなく、心も可愛い人なんだ。
    愛おしいなぁ・・・



    「で、なんで今ミューさんはビックリしてたの?」




    バレてたぁぁぁああああ!!
    せめてスルーしてほしかったぁぁぁああああ!!




    現実に響くことのない私の心の声は、耳障りなほどの大音響でしばらく心の中に響いていた。
    そしてそっと記そう。
    コーヒー豆は意外と私を観察している、って心のメモ帳に。



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