ビアンエッセイ♪

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■22339 / ResNo.10)  すこしづつ…V-11
  
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(54回)-(2018/07/21(Sat) 13:52:07)
    結婚式は いい式だった。

    コウちゃんは 初めてとは思えなくらい堂々としていて 2人がお色直しで中座している間

    南郷さんの職場の女性たちから 写真攻めにあっていた。

    フト見ると 私達の同僚も同じように スマホをかざしている。

    後輩から 「佐々木さんも一緒に!」 と声をかけられて 断ることも出来ず…一緒にカメラに収まった。

    最後の花束贈呈は 南郷さんから ミカの両親へ ミカからは 南郷さんのお兄さん夫婦だけでなく弟さん夫婦にも贈られた。

    辞退する弟さんに ミカがどうしても譲らなかったと お兄さんが 親族代表の挨拶で仰っていた。

    押し通すミカの顔が 想像できて 微笑んでしまった。

    コウちゃんとは 殆ど話す時間のないまま 私は 2次会に向かった。


    帰宅すると コウちゃんは リビングで 引き出物のカタログを眺めていた。

    「おかえりなさい(^^♪」

    「ゴメン…遅くなっちゃった…」

    「2次会 楽しかったですか?」

    「うん…南郷さんとミカが コウちゃんによろしくって…」

    「うまく出来てたんでしょうか…」

    「あたしが 今まで出た 披露宴の中では ダントツだったよ(笑)」

    「ダメな方で?」

    「バカ…その反対に決まってるでしょ(笑) 汗流してくるね♪」

    「あっ お風呂沸いてるんで ゆっくりどうぞ(^^♪」

    「ありがと(^^♪」


    リビングに戻ったら コウちゃんは 寝室に引き上げていた。

    「南郷さんが コウちゃんによろしくって 何度も言ってたよ…ブーケトスの件…」

    そう言いながら コウちゃんの右腕に頭を乗せた。
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■22340 / ResNo.11)  すこしづつ…V-12
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(55回)-(2018/07/21(Sat) 13:56:21)
    ブーケトスをする しない で 南郷さんと意見が分かれている話は ミカから聞いていた。

    「どうせしないんだから ブーケは持たないって言ったら 式場の人どころか南郷君にも
     それはちょっと… って言われてさっ…」と ぼやいていた。

    何故そこまで ブーケトスを拒否するのかについて ミカは ひとことも言わなかった。

    最終打ち合わせに出かける時にも 「これだけは 絶対 折れないんだ!」 と言っていたが…

    翌日…前日とは 打って変わって 晴れ晴れとした表情で

    「やっぱり ブーケは持つことにした」と 報告してくれた。

    何があったのかは 「当日のお楽しみっ♪」で 教えてもらえなかった…


    披露宴が始まる直前

    新郎友人への サムシングブルートスが行われた。

    次は いよいよ…と女性陣が なんとなくざわつき始めた時…コウちゃんのアナウンスが流れた。

    「新婦香織さんの持つブーケは ご本人たっての希望で 新郎 夏喜さんのご両親の墓前に届けられます」

    会場は 水を打ったように静かになった。

    静寂を破ったのは

    ひとりの拍手だった。

    その拍手につられて 会場中が 大きな拍手の渦を作った。

    最初に拍手をした人は 主賓挨拶をしてくれた 南郷さんの上司だった。

    「こんなに心が暖かくなる披露宴に招いてくれて 本当にありがとう」 のひとことは列席者全員の気持ちを代弁してくれたと思う。

    「ブーケトス…あれ…坂本クンのアイディアだったんです」

    南郷さんが 2次会の時 こっそり教えてくれた。

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■22341 / ResNo.12)  すこしづつ…V-13
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(56回)-(2018/07/21(Sat) 14:05:34)
    「打ち合わせの時も ガンとして 『持たない』 と言う香織に 『じゃ トスは止めましょう』 と 声をかけたのはそれまで 黙って聞いていた坂本クンでした。
     『投げる代わりに ミカさんが 持って行くってことにしたらどうです?』の意味が理解出来なくて(笑)
     みんな ポカーンとしたんです…僕も そうでした(笑)」

    南郷さんの言葉は続く…

     「『南郷さんのご両親のお墓に届けるというのは?…』と言って 坂本クン ニコッと笑ったんです…
     それを見た香織の表情が緩みました。
     『それなら 持つ』…そのひとことで 固まっていた空気が 動き始めました(笑)
     香織は 『坂本マジックにひっかかった』 って言ってましたが…坂本クンから 聞いてます?」

    「話す人に見えます?(笑)」

    「やっぱり…香織もそう言ってました。『坂本クンは 自分から喋る人じゃない』 って…だから(笑) 代表で 報告にきましたっ(^^♪」


    「もっとベストな方法はあったと思いますが…
     ミカさんだけでなく 来てくれた人たちにも納得してもらえたんなら よかったです(^^;」

    「それとね…」

    「ん?」

    「今日 カッコよかった(^^♪ 後輩たちが ザワザワしてた(笑)」

    「恭子さんも 写真撮りに来てましたね(笑) あらっ?って思いましたもん」

    「だって…後輩に声かけられて 断れなかったんだもん(>_<) でもね…」

    「なに?」

    「心の中で… 『この人と一緒に暮らしてるんだぞ〜 羨ましいだろ〜』 って…自慢してた( *´艸`)」

    「それは…ありがとうございます(笑)」

    「2次会でも コウちゃんの話題で 盛り上がって…ミカに直接 『司会してた人 紹介して!』 って
     頼み込んでる子もいて…けど ミカは 『あの子は 彼女いるからダメ』 って気持ちいいくらいバッサリ切ってた(笑)」

    コウちゃんは おかしそうに笑っている。

    「彼女持ち って…(笑) そんなこと言って ミカさん 大丈夫だったんですか?」

    「あたしも ちょっとビックリした(笑) でも 言われた子は 何も言ってなかったら いいんじゃない?」

    そう言いながら コウちゃんに ピッタリくっついた。

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■22342 / ResNo.13)  すこしづつ…V-14
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(57回)-(2018/07/21(Sat) 14:09:12)
    「コウちゃん 暑い?」

    「ぜんぜん…」

    「でも…これからあつくなるよね?」

    「季節は 夏に向かいますからねぇ…」

    コウちゃんの素の反応に 思わず 吹き出してしまった。

    「バカっ…そうじゃなくて…」

    「…あっ! うわっ!あちゃ〜(>_<)」 
      
    「今の… 今日いちばんの ビックリだわ(笑)」

    「すみません…」

    「今夜は お預けね(笑)」

    「マジっすか?」

    「マジ マジ(笑) だって 笑い過ぎて…(笑)
     でも 何も無し は 可愛そうだから(笑) これで おとなしく寝なさいっ( *´艸`)」

    コウちゃんの額に デコキスをした。

    「はい…」

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■22343 / ResNo.14)  すこしづつ…V-15
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(58回)-(2018/07/21(Sat) 14:12:29)
    翌朝 仕事だった私は コウちゃんに見送られて 家を出た。

    「バイトは 11時から?」

    「はい…今日は ラストまでっす… 連休なのにどこにも遊びに行けず…ごめん…」

    「それは お互い様でしょ(笑) 仕事終わったら 『駅裏』 に顔出すね♪」

    「待ってます(^^♪」

    「がんばってね(^^♪」

    「はい(^^♪ 恭子さんも 居眠りしないようにね(笑)」

    「昨夜 しっかり寝たから 大丈夫!(笑) いってきます(^^♪」

    「いってらっしゃい(^^♪」

    コウちゃんのハグとキスのセットは 1日のエネルギーの源だ(笑)


    「おはよう! 昨日は ホントにありがとう(^o^) 世間は 連休だといのに出勤?」

    ミカに声をかけられた。

    「おはよう!そっちこそ 結婚式の翌日から仕事って…今日くらい休み取ればよかったのに」

    「ちょっとは考えたんだけどさっ…やっぱ この時期はねぇ…(笑) それに…」

    「もしかして 南郷さんも仕事?」

    「うん…あっちも しばらくはいろいろ忙しいみたい(笑)」


    連休中の図書館は 普段より 学生さんが多い。

    学生さんたちの後ろ姿を見ながら 3年前の今頃を思い出していた。

    1年生だった坂本クンが バイトしているカフェに入って…

    今は その坂本クンと一緒に暮らしている…

    あの頃 今の生活は 想像も出来なかった…
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■22344 / ResNo.15)  すこしづつ…V-16
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(59回)-(2018/07/21(Sat) 16:53:01)
    お昼休み コウちゃんから Lineが入った。


       バイトに向かいます。
       今夜は カレーです(^^♪


    相変わらず シンプルな文面だ(笑)

    卒論にとりかかると言いながら バイトに行くって…コウちゃんらしいと言えばコウちゃんらしい… 


    閉店間際の『駅裏』は 連休だからか いつもよりお客さんが多かった。

    カウンターに座ると コウちゃんが 他人の顔で接客してくれた(笑)

    こちらも他人行儀に

    「カフェオレをひとつお願いします」

    「少々お待ちください」

    何の変哲もないやりとりが 可笑しかった。


    午後7時『駅裏』の閉まる時間だ。

    私は 最後のお客を装って立ち上がった。

    「ありがとうございました」

    コウちゃんが 笑顔で 送り出してくれた。

    外で待つこと15分

    「お待たせしました」

    「お疲れ様(^^♪」

    「恭子さんもね(^^♪」

    2人で帰るのは 久し振りだ。

    「カレーありがとね そろそろ食べたいと思ってたんだ(^^♪」

    「でも…サラダは間に合いませんでした(^^;」

    「それは 帰ってからでも大丈夫!」

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■22345 / ResNo.16)  すこしづつ…V-17
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(60回)-(2018/07/21(Sat) 16:54:39)
    翌日は 連休最終日だった。

    出勤する私に コウちゃんが切り出した。

    「今夜 ちょっと付き合ってほしいところがあるんですけど…恭子さん 今日 早番ですよね?
     仕事の後 時間 大丈夫っすか?」

    「うん 大丈夫…」

    「終わる頃 図書館にお迎えに行きますっ」

    「わかった…」

    ハグとキスは いつも通りだったから…コウちゃん 何を考えているのかな…と思いながら 部屋を出た。

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■22346 / ResNo.17)  すこしづつ…V-18
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(61回)-(2018/07/21(Sat) 16:56:20)
    「どうした? 眉間にシワが寄ってるよ? 寝不足?(笑)」

    ミカに声をかけられた。

    「寝不足になるようなことは 何もしてません(笑)」

    「そうなんだぁ(笑) でも ホント どうした? 何かあった?」

    「まだ 何も…起こるとしたら 夜…かな?」

    「坂本クン絡み?」

    「うん…」

    「だったら 話は 明後日訊くわ(笑) 恭子 明日 休みでしょ(笑)」

    「なにそれ…」

    「だって…夫婦のことは夫婦で解決しなくちゃ…(笑)」


    資料室へ向かうミカの背中を見ながら…

    ふと(夫婦って…ウチの場合 どっちが妻なんだろう…)と 考えてしまった…

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■22347 / ResNo.18)  すこしづつ…V-19
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(62回)-(2018/07/21(Sat) 17:00:27)
    閉館後

    コウちゃんの運転で向かったのは ショッピングモールの中のジュエリーショップだった。

    訝る私に

    「今度は2人で…って言ったの覚えてます?」

    コウちゃんが 小声で囁いた。

    「もしかして…?」

    「はい(^^♪ 左手用を…」

    「そんな言い方って…」

    軽くケリを入れてしまった…

    「どれにします?」

    「私が選んでいいの?」

    「他に誰かいます?(笑) お店の人に決めてもらいます?」

    「あたしが決めますっ(笑)」


    案内をしてくれた店員さんに いくつか出してもらい 最終的に 右手のリングより 少しボリュームのあるリングに決めた。

    コウちゃんと私のサイズは 在庫があったので 当日持ち帰りすることにした。


    「ケースにお入れしますので 少々お待ちください」

    その場を離れようとした店員さんに コウちゃんが何やら囁いた。

    店員さんは にっこり微笑んで お店の奥に下がった。

    「何 話したの?」

    「フフフ内緒っす(笑) あっ 支払いしてきますね」

    レジに向かったコウちゃんの背中を見ていたら 別の店員さんが

    「ステキなご主人ですね」と 声をかけてくれた。

    「ありがとうございます」

    洒落たペーパーバッグを持ったコウちゃんが戻ってきた。

    「お待たせしました 行きますか…」

    「うん」


    駐車場に向かう途中で コウちゃんが

    「今日 レストラン予約してあるんです」と言った。

    「えっ?」

    「ちょっとカッコつけです(笑)」


    お店は…コウちゃんに告白した夜のレストランだった。

    コウちゃんが エントランスで名前を告げる。

    席に案内される…

    オーダーは ディナーコース…

    アルコールのメニューが渡されなかったのは 最初からそう告げていたのだろう…

    あの日と違って 今夜は 気持ちに余裕がある分 食事を楽しむことが出来た。

    「予約 大変だったんじゃない?」

    「3月の終わりには もう一杯だったそうです」

    「コウちゃん いつ?…」

    「ミカさん達の結婚式の司会をお引き受けした翌日(笑)」

    「全然知らなかった…」

    「ガッコで電話しましたから(^^♪」

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■22348 / ResNo.19)  すこしづつ…V-20
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(63回)-(2018/07/21(Sat) 17:04:46)
    部屋に戻った私達は コウちゃんが淹れてくれたホットミルクを飲みながら ソファで寛いだ。

    私の左薬指には 真新しいリングがはめられている。

    「ねぇ…どうして今日だったの?」

    コウちゃんの肩に頭を乗せながら訊いた。

    「ずっと 今年の恭子さんのお誕生日に…って決めてたんです…
     その頃には 卒業後の進路も決まっているだろうって思って…」

    「そうだったんだ…言ってくれたらよかったのに…」

    「いやぁ…ミカさん達のお祝いに集中できたほうがいいなって思って 延期してました」

    「もし…結婚式が無かったら?」

    「それは もう 最初の予定通り…(笑)」

    「フフフ…いつから決めてたの?」

    「右手にはめた時くらいっす(^o^)」

    「そんなに前から?」

    「はい…」

    「別れるかも とかは考えなかった?」

    「はい…少なくとも自分には 理由がありません」

    「あたしにも 理由なんてない…」

    「恭子さん…結婚式も入籍もないけど…」

    「そんなこと気にしたことないって言うと ウソっぽく聞こえるかもしれないけど(笑)
     あたしは 隣にコウちゃんがいてくれたら それでいいの!コウちゃんも同じでしょ?」

    最後のひとことは ちょっと強気に出た(笑)

    「はい」

    コウちゃんの答えは 短い…
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