| 2018/09/01(Sat) 22:08:05 編集(投稿者)
「ふぅー‥‥」 専業主婦のまりえは、夕食の準備の手を止めて溜息をついた。 最近、知らず知らずのうちに溜息をつくことが多くなった。 まりえは40歳。 今の結婚生活に不満はないと言えば嘘になるが、それなりにやっている。 大学時代に付き合った今の夫との間に娘ができ、卒業と同時に結婚。 夫は優しいし、ひとり娘は高校生になりそれなりにいい子に育っている 。 でも何かが足りない。なんだろう? 夫とはあることをきっかけに、かなり前からセックスレスだ。 娘は娘で部活のダンスで頭がいっぱいだ。 自分だけが取り残されている? 何か趣味でも見つければいいのだろうか?
それから数日後、まりえは県立体育館にいた。 今日は娘の桃華が、高校のチームとしてダンス大会に出るのだ。 いよいよ娘の出番。娘達が出てきた。20人くらいの編成だ。 あっ、いた!二列目の左端。 気付かないかもしれないけど手を振ってみる。 曲が流れ、ダンスが始まる。 その時何故かまりえの視線は娘の桃華ではなく、 センターの少女に釘付けになった。 その少女は今時の高校生にしては珍しく真っ黒に日焼けしていた。 娘の桃華は日焼け止を塗りたくって登校しているというのに。 彼女は背が高く170cmくらいだろうか? ルックスも良く、かなり目立つ。 引き締まった若い肉体が躍動する。 ベリーショートの髪の毛を振るたびに、汗が宝石を散らすように飛んでいく。 美しい‥ まりえは心底そう思った。 彼女から目が離せない!どうしたんだろう? と、突然彼女がこちらを見た。あっ‥思わず声を上げそうになる。 確かにいま、目が合った!あっ‥また! まりえの心臓が早鐘を打つ。 なに?なに?どうしたの?わたし。まりえは自分の反応に戸惑う。 出番が終わり、まりえは控え室に向かった。 娘の桃華を探すより先に彼女を探している自分に驚く。 あっ、いた!ファンみたいな娘達に囲まれている。
「ママッ!」 桃華が近づいてくる。 「来なくていいって言ったじゃん。」 そう言いながらどこか嬉しそうだ。 「ごめんね。でも上手だったわよ。」 ほんとは見てなかったけど。 「へへっ‥ありがと。」 あっ、彼女が近づいてくる。 「モモカッ。」 「あっ、イオ。」 彼女はまりえに会釈し 「モモカ、後でね。」 と、まりえのすぐ横を通る。その時彼女の手が腰に触れたような気がした。 同時に彼女の汗と体臭が混じった香りが、まりえの鼻腔をくすぐる。 「今の子はお友達?」 「うん、伊織。高橋伊織、クラスは違うけどね。かっこいいでしょ。」 「えっ、ええまぁね。」
その時はそれで終わったのだが、後日彼女に再会する。 桃華がうちへ連れて来たのだ。
続く
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