| 会ったとたん、まりえはドキッとさせられた。 伊織がいきなりまりえのサングラスを外したのだ。 「せっかく目が綺麗なのに。二人の時は外してて!」 そう言ってまりえの手を取り、歩き出した。 上背のある伊織が大股で歩き出すので、まりえは引き摺られるように歩く。 「ち、ちょっともう少しゆっくり。」 「あ、ごめん。嬉しくて。」 それから二人で店を回った。 まりえは伊織に可愛らしいスカートを勧めたが、嫌だという。 小さい頃は履いていたが、どうしても違和感があったらしい。 今は制服以外には持っていない。 「ボクはなにも要らない!」 「えっ、それではわたしの気が済まないわ。なんでもいいのよ。」 「うーん。そうだなぁ。じゃあこれがいい!」 伊織が指差した先にはイヤリングがあった。 それはチェーンの先に勾玉が付いているものだった。 伊織はその白い勾玉がついた物を手に取り、まりえの耳に持っていき、 「よく似合う!」 「わたしじゃなく、あなたに買うのよ。」 「うん、わかってる。ボクは黒にするからペアにしようよ。」 「え、ええ、わかったわ。」 「知ってる?白い勾玉と黒い勾玉が合わさって宇宙を表すの。 どちらかが欠けてもダメなんだよ!」
伊織がスニーカーも見たいというので、二人で歩いていると 前からチャラチャラした二人連れの男が歩いてくる。 すれ違う時に一方の男がつまづいたのか、まりえにぶつかった。 「気をつけろ!ばばあ!」 「す、すみません。」 ぶつかってきたのは向こうだけど、まりえは謝った。 するとなにを思ったか、伊織がいきなり去って行く男の背中を蹴った。 「てっ!なにすんだ、いきなり。」 「そっちがぶつかってきたんだろう?それにまりえは、ババアじゃない!」 「なにー!」 男が大声を出したので、周りの客がこっちに注目した。それを見て 「ちっ、バカは相手にしてられねぇぜ。」 と言って去って行った。 「ありがとう。でも無茶はしないで。」 「まりえをバカにする奴は許さない。」 まりえは思わず赤面してしまった。 こんなこと言ってくれる人がいたろうか?
続く
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