| 教室に戻ると、中はまだ昼休みの侭の空気が一面に漂っていた。あたしは慌てて席に着いて一息着く。 「ふぅ。」 「間に合って良かったね、万紀ちゃん。」 「さと子。」 あたしの間横の席、そこには入学してからの大の仲良しのさと子が座っていた。色白の肌に柔らかいくるくるパーマのショート。おっとりとした雰囲気で、傍にいるだけで安らぐ存在。 「え…でも、次は調理実習でしょ??」 あたしはお弁当箱をさりげなく机の中に入れ、話を繋いだ。 「うん。万紀ちゃん来てから一緒に行こうと思って。」さと子はゆったりとした口調で言葉を紡いで、微笑んだ。 そして、目だけであたしの手の行き先を一瞥するとこう言った。 「保健室行ってたの?夏歩(かほ)達が探してたよ。」さと子、鋭い。普段おっとりしている半面、恋愛沙汰はとても敏感になるらしい。また、さと子はあたしの片思いの相手を知る、唯一の友達だ。というよりも、あたしはさと子だけにしか話せないんだけどね。 「うん、また昼食一緒に食べたんだ。」 自然とあたしの声も弾む。 「そっかぁ。良かったねぇ万紀ちゃん。」 さと子は柔らかい表情で嬉しそうに笑った。
(携帯)
|