| 「あんたはさ、あの子のことを単なる生徒として見てるのか?」 「違うわ…。」
絹香の問いに、美也子は力無く答える。
「教師という立場でありながらも、あの子を恋愛の対象と見てしまっている自分がいるのよ。周囲から見れば許されざること…。芯を持って、理性を保たなければならない。そうすれば…あの子を恋愛相手に見ることは無いのよね。」
美也子はここまで一気に言葉を紡ぐと、肩を落とした。
「まあ…言われてみれば、そうだけどね。」
美也子の答えに、ちゃらけた絹香の顔付きも神妙になる。
「でも…そんなの、誰かが止めたって無理だろ?」 現にあたしがそうだしさ、と絹香が美也子から視線を外し吐息混じりに小さく吐き出した。
「わかってる…わかってるのよ、それは。」 美也子は眉をひそめ、頭を小刻みに横に振るとゆっくり天井を仰いだ。
「教師であるが故にこんなことになってしまったのよ。酷く罪悪感を感じてしまうわ……。」
「おい!待てよ!」
美也子の自虐的な言葉を、絹香が声荒し制止した。絹香の表情は烈火の鬼の如く、怒りに満ちていた。
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