ビアンエッセイ♪

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■9271 / ResNo.30)  優しく愛して(19)
  
□投稿者/ じんじゃーぴんく 一般♪(25回)-(2005/05/06(Fri) 01:24:52)
    「あんたはさ、あの子のことを単なる生徒として見てるのか?」
    「違うわ…。」

    絹香の問いに、美也子は力無く答える。

    「教師という立場でありながらも、あの子を恋愛の対象と見てしまっている自分がいるのよ。周囲から見れば許されざること…。芯を持って、理性を保たなければならない。そうすれば…あの子を恋愛相手に見ることは無いのよね。」

    美也子はここまで一気に言葉を紡ぐと、肩を落とした。

    「まあ…言われてみれば、そうだけどね。」

    美也子の答えに、ちゃらけた絹香の顔付きも神妙になる。

    「でも…そんなの、誰かが止めたって無理だろ?」
    現にあたしがそうだしさ、と絹香が美也子から視線を外し吐息混じりに小さく吐き出した。

    「わかってる…わかってるのよ、それは。」
    美也子は眉をひそめ、頭を小刻みに横に振るとゆっくり天井を仰いだ。

    「教師であるが故にこんなことになってしまったのよ。酷く罪悪感を感じてしまうわ……。」

    「おい!待てよ!」

    美也子の自虐的な言葉を、絹香が声荒し制止した。絹香の表情は烈火の鬼の如く、怒りに満ちていた。

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■9272 / ResNo.31)  優しく愛して(20)
□投稿者/ じんじゃーぴんく 一般♪(26回)-(2005/05/06(Fri) 01:27:14)
    「美也子はあたしとさと子のことまで否定する気なの!?」
    「違う、そうじゃないっ!」
    「そうだろ!自分が上手くいかないからって、人にあてつけるなよ!」

    さきほどとは打って変わって、美也子の返事は語尾に威勢は無い。
    絹香の怒涛に飲み込まれていく。

    「なら…どうしたら良いのよ!?」
    絹香の罵声を押し切って、美也子が吠えた。
    「あたしは貴女みたいに要領良く無いし、教師の立場も弁えなければと思ってるわ!けど、一番大事なのはあの子なのよ!!」
    「言えばいいじゃない!今言った言葉をそのまま!教師の立場とか言ってる場合か!?保身ばっかり考えてると、よそに持っていかれるぞ!」
    「そんなの…嫌に決まってるじゃない!もう…あたし…どうすれば良いか…。」

    美也子の声音は次第に弱くなり、鳴咽混じりになってきた。そして、倒々、膝を折って床にペタリと座り込んでしまった。

    「いっそ…あの子に出会わず…あの子を突き放せば良かったのかも…。」

    「なっ…!何言ってるんだよ美也子!!」

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■9273 / ResNo.32)  優しく愛して(21)
□投稿者/ じんじゃーぴんく 一般♪(27回)-(2005/05/06(Fri) 09:22:16)

    偶然と必然は重なるもので。

    「え……。」

    ゴトッ。
    箱が床に落ちる音がして、美也子と絹香の荒れた空気を引き裂いた。
    部屋の扉を開けたばかりの万紀がそこに静かに立ち尽くしていた。


    「美也子…先…生。」

    「万…紀…。」

    その変わりに、
    さらなる悲劇を運んできた。

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■9349 / ResNo.33)  あーん>_<
□投稿者/ ブルー☆ 一般♪(1回)-(2005/05/08(Sun) 21:36:04)
    続き読みたいです
    連休中は忙しいのでしょうか? これからの展開、楽しみに待ってます

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■9390 / ResNo.34)  ブルー☆さんへ
□投稿者/ じんじゃーぴんく 一般♪(28回)-(2005/05/10(Tue) 18:06:02)
    読んで頂きありがとうございます☆★お待たせしてしまい、すみません(>_<。)GW中はまったりしてました。
    これからまた少しずつ書いて行きますので、どうぞ宜しくお願いしますね♪

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■9391 / ResNo.35)  優しく愛して(22)
□投稿者/ じんじゃーぴんく 一般♪(29回)-(2005/05/10(Tue) 18:07:22)

    焼きたてのフォンダンショコラを一つ。
    熱いうちに、あたしの気持ちと一緒に、溶けだしてしまわない様に。
    早く早くと、箱に詰めて実習室を抜け出した。

    「頑張って、万紀ちゃん!」
    さと子の励ましの声を背中に受けて、あたしは大きく頷くと飛び出した。
    なんだろう。
    先生に、美也子先生に会いに行く目的は変わらないの、なんでだろう。
    胸の奥はかっかと熱かった。


    保健室の扉の直ぐ前に来た。
    どうしよう、なんて言って渡そうかな?
    「先生、チョコ焼いてみたんだ。味見して?」
    告白じゃないよね。
    「あたしの気持ち受け取って!」
    まんま過ぎて駄目だ。
    あたし…才能無い。
    ふと涙腺が緩みそうになって、ぶるぶると頭を横に振って負けそうな気持ちを振り払った。
    「えと…美也子先生、あたしの気持ちです、食べて下さい。」
    よし、これだ!これでいこう!
    あたしは口の中で何度も同じ言葉を繰り返し呟くと、扉に手をかけた。

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■9392 / ResNo.36)  優しく愛して(23)
□投稿者/ じんじゃーぴんく 一般♪(30回)-(2005/05/10(Tue) 18:09:14)
    と、その時だった。
    「なら…どうしたらいいのよ!?」
    美也子先生の叫びに似たかなきり声が響いてくる。
    「言えばいいじゃない!」
    直ぐ後に絹ちゃんの、怒りに満ちた大声。
    どうしたんだろう。二人して。
    あたしの中の好奇心は抑えがきかず、厚い扉に耳を立ててしまったのです。
    もし、この時何も聞かなければ、あたしはまだ幸せでいられたのかな?

    「いっそ…あの子に出会わず…あの子を突き放せば良かったのかも…。」
    ガラッ。
    言葉と同時に扉を開けてしまっていた。

    最初に目に映ったのは、美也子先生の哀れみと絶望が入り交じって淡く揺れる涙に濡れた瞳。

    絹ちゃんの驚きと戸惑いが複雑に絡み合って、血走った様に見開いた双眸。

    二人の四つの瞳が真っ直ぐあたしを捉らえている。

    これだけで。
    あたしが今此処に居ることにそぐわないことがはっきり見てとれた。



    気がつけば、あたしは保健室から屋上へと走り出していた。


    ドン!
    「いた…万紀ちゃん!?」
    向かい合わせに軽く走って来たさと子にぶつかった。けど、あたしは気付かなかった。


    そんな余裕どこにも無かったよ。

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■9428 / ResNo.37)  優しく愛して(24)
□投稿者/ じんじゃーぴんく 一般♪(31回)-(2005/05/12(Thu) 09:36:46)


    屋上に着くなり、あたしは柵に飛び付いた。
    ガシャン。
    音を立てて、柵を両手で握り締める。赤茶けた錆が手のひらにつこうなんて、知らない。

    「っ……。」

    喉奥が小刻みに震え出した。堪えていた涙が、一つ零れた。

    「ふっ…く…うわああああああ…!!」

    隻を切った様に、次から次へと溢れ流れる涙。
    喉奥に絡み付く熱いもの。
    「あああああ…!」

    声にならない声で。
    あたしはありったけの涙を流した。


    『いっそ…あの子に出会わず…あの子を突き放せば良かったのかも…』


    美也子先生の言葉が頭の中でリフレインする。
    止まらない。止められない。


    「ひっ…う…うああああ…!」

    悲しくて、辛くて。
    心臓が焼けるようだ。
    痛くて痛くてたまらなかった。


    そして、慟哭をあげながらも頭の奥ではっきりと冷めた目で理解している自分がいた。

    夢は所詮、夢でしかなかった。


    あたし…振られたんだ。

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■12627 / ResNo.38)  優しく愛して(25)
□投稿者/ じんじゃーぴんく 一般♪(1回)-(2005/09/02(Fri) 10:40:30)
    しばらく、その場でひとしきり泣いた。
    誰が来ようともかまわず、ずっと。

    やっと手を伸ばして掴めそうだった、大好きな美也子先生。


    涙が溢れれば溢れるほど、美也子先生への想いも溢れ出して止まらない。

    好きだよ。
    大好きだよ。

    愛してるって言い切れるよ、美也子先生。

    お願い…どうか…

    振り向いてよ―――!

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■12644 / ResNo.39)  優しく愛して(26)
□投稿者/ じんじゃーぴんく 一般♪(2回)-(2005/09/03(Sat) 07:01:53)
    「美也子っ!!なんで追い掛けないのよ!!」
    残された者達の間に漂う、生温い緊張感と罪悪感。そして、刹那の沈黙を破ったのは絹香の怒号の声であった。
    絹香は美也子を刺すように睨みつける。美也子はその視線から逃げる様に、床の一点をぼんやり見つめていた。
    「あたしには…そんな資格無いから…。」
    「資格!?そんなものが恋愛に必要な訳!?」
    美也子の呟きを制す様に、絹香はまた声を荒くする。
    煮え切らない美也子に、絹香は苛立ちを隠せずにいた。さと子は第二の一触即発の気配を肌で感じながら、どうすることも出来ないでいた。
    親友の失恋。
    親友の想い人の葛藤。


    ただ、好きなだけなのに。


    さと子の胸中にはそれしかなかった。

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