[]-21616/親
赤い糸(1)
夢花






栞はここ数ヵ月、毎晩出会い系サイトを見て回るのが日課になっていた。
どうしても彼氏が欲しいとか、両親に急かされているというわけではない。
彼氏が欲しいと思わないこともないけれど、ネットで探すのはハイリスクだ。
慎重なところがある栞は、そんなリスクを冒してまで出会いを求めたくなかった。




時々、多少興味をそそられる募集記事を目にすることはある。
しかし、栞が彼らにメールを送ることは今まで1度もなかった。
いつも「あ、この人、いい感じの人だな」で終わってしまうのだ。




今夜も最近と同じように、晩ご飯もお風呂も終えてからパソコンを開く。
そして、いつも見ているサイトを見たり、リンク先に飛んだりした。
今日も今日とて、栞にメールを送る気を起こすような人はいない。




(・・・・ん?)




それは、サイトからサイトへと飛んでいる途中で見つけたリンク。
サイトのタイトルを見ると、栞が今まで見たことがないサイトのようだ。
色々なサイトを見て回っていたので、まだあったのかと少し驚いた。
まあ最近ではネット上の婚活も活性化しているようだし、不思議ではない。
栞はそのまだ覗いたことがないサイトのリンクを・・・・クリックした。




(えーと・・・・・)




随分可愛らしい感じのサイトの内装だな、と思いつつ、とりあえず見て回る。
友達を募集するところがあったので、まずはそこをクリックしてみた。




(!?)




栞は、そこに投稿された出会いを求める募集記事を見て驚いた。
『男性・ネカマお断り』という言葉が、高確率で並べられていたから。
よく読んでみると、出会いを求めている人は、全員が女性のようだ。
・・・・女性が女性との出会いを求めているサイトだったのだ。




(これって“レズ”とかいう人たちの出会い系・・・・?)




栞は同性愛者ではない・・・・というより、女性との恋愛経験がない。
過去に女性を好きになったことはないし、反対になられたこともなかった。
少なくとも女性同士の告白やキスやそれ以上のことは、一切したことがない。
このサイトだって、リンクから飛ばなければ知らなかっただろう。




(どうしよう・・・・)




引き返した方がいいのかどうか迷いながらも、募集記事を読む。
そこでは、さまざまなタイプの女性が出会いを求めていた。
フェミニンな人、ボーイッシュな人、カジュアルな人・・・・。
いくつかの分からない単語があったが、調べて理解した。
彼女たちには彼女たちなりの世界や価値観があるのだろう。




(こんな出会い系もあるんだ・・・・)




男性同士の出会い系サイトがあるというのは、友達から聞いて知っていた。
でも、女性同士の出会い系サイトがあるというのは、初めて知った。
まあ私生活ではなかなか出会いがないだろうから、あってもおかしくない。
若干男性が苦手な栞には、そのサイトはどこか居心地がよく感じられた。




その日は友達を募集するところだけを見て、眠りについた。
・・・・そのサイトを、お気に入りに登録して。






09/06 07:57
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