[]-22043/親
窓際の彼女
KEI




彼女はいつも窓際に座っていた。

本を開いたかと思うと、ゆっくり顔を上げて窓の外を眺める。

瞬きをする横顔さえも美しい。

僕は彼女に見惚れた。



彼女を初めて見たのは半年前。

高校の課題で自分が一番好きな本を紹介するというものがあった。

僕は、ズラズラと文字が統一間隔に並ぶ本が嫌いだった。

どうしようかと悩んでいたら、ふと、子どもの頃母さんに読んでもらった絵本を思い出した。

絵本も本には違いないと思い、僕は学校の図書室を隅から隅まで探したが、僕が探している絵本は見つからなかった。

そこで僕は学校近くの図書館へと足を運んだ。

図書館なんて来たことなかった。

縁もなかったし。

図書館に入り、探してみるとものの5分で見つかった。

好きだった絵本だが、どんな話だったか忘れた僕は1度読んでみることにした。

この図書館はとても広く、椅子に座って読むスペースも沢山あった。

僕は窓から少し離れた席に座って絵本を読んだ。

『大きなきは きらめき 花はまるで ほうせきのようだった。エミリーは 花をひとつ つみとると たいせつにかかえて ママのもとへと かけよった。ママはエミリーの あたまを なでながら……』

絵本は僕が子どもの頃に読んだときのままだった。

絵本を読み終え周りに迷惑をかけないように小さく伸びをした。

窓の外は薄暗くなり始めていた。

「……」

沈み行く夕日によって光輝く一人の女の子がいた。

窓際の彼女は本を開いたまま、窓の外を眺めていた。

とても美しかった。

彼女は外を眺めるばかりで、時折存在に気づいたかのように本に目をやり一時間に一ページという遅さで本を読んでいた。



〜♪ 本日はご来館頂きありがとうございます。間もなく19時になりますので閉館します〜

閉館の放送が流れた。

気づけば僕は二時間半も図書館にいた。

そしてそのほとんどの時間、窓際の彼女を見ていた。

放送が流れると彼女は本を閉じ、本棚へと戻しに行った。

凛とした佇まい、長い髪はサラサラとして歩くたびに揺れ動いた。

バッグを肩に掛け、本を戻すときに背伸びをした。

背伸びをした彼女の足は細く、長く、上品だった。

そして彼女は出口へと向かい振り向いた。

きれいに整えられた前髪はふわふわと上下に揺れ、大きな瞳はどこか寂しげに見えた。

リップを塗っているのかもしれないが、ぷっくらとした唇はキラキラと潤い、鼻筋が通った小さな顔をしていた。

「美しい」

いつしか僕は心の声を抑えることができずにそう言葉にしていた。

一目惚れだった。



続く








03/29 16:37
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No22066
Re[2]: 感想^^ お返事

KEI
(04/24 02:15)
No22062
感想^^

ルナ
(04/12 20:18)
No22058
窓際の彼女16

KEI
(03/31 23:52)
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