[]-22357/親
主婦まりえの憂鬱1
いちこ

2018/09/01(Sat) 22:08:05 編集(投稿者)

「ふぅー‥‥」
専業主婦のまりえは、夕食の準備の手を止めて溜息をついた。
最近、知らず知らずのうちに溜息をつくことが多くなった。
まりえは40歳。
今の結婚生活に不満はないと言えば嘘になるが、それなりにやっている。
大学時代に付き合った今の夫との間に娘ができ、卒業と同時に結婚。
夫は優しいし、ひとり娘は高校生になりそれなりにいい子に育っている 。
でも何かが足りない。なんだろう?
夫とはあることをきっかけに、かなり前からセックスレスだ。
娘は娘で部活のダンスで頭がいっぱいだ。
自分だけが取り残されている?
何か趣味でも見つければいいのだろうか?

それから数日後、まりえは県立体育館にいた。
今日は娘の桃華が、高校のチームとしてダンス大会に出るのだ。
いよいよ娘の出番。娘達が出てきた。20人くらいの編成だ。
あっ、いた!二列目の左端。
気付かないかもしれないけど手を振ってみる。
曲が流れ、ダンスが始まる。
その時何故かまりえの視線は娘の桃華ではなく、
センターの少女に釘付けになった。
その少女は今時の高校生にしては珍しく真っ黒に日焼けしていた。
娘の桃華は日焼け止を塗りたくって登校しているというのに。
彼女は背が高く170cmくらいだろうか?
ルックスも良く、かなり目立つ。
引き締まった若い肉体が躍動する。
ベリーショートの髪の毛を振るたびに、汗が宝石を散らすように飛んでいく。
美しい‥ まりえは心底そう思った。
彼女から目が離せない!どうしたんだろう?
と、突然彼女がこちらを見た。あっ‥思わず声を上げそうになる。
確かにいま、目が合った!あっ‥また!
まりえの心臓が早鐘を打つ。
なに?なに?どうしたの?わたし。まりえは自分の反応に戸惑う。
出番が終わり、まりえは控え室に向かった。
娘の桃華を探すより先に彼女を探している自分に驚く。
あっ、いた!ファンみたいな娘達に囲まれている。

「ママッ!」
桃華が近づいてくる。
「来なくていいって言ったじゃん。」
そう言いながらどこか嬉しそうだ。
「ごめんね。でも上手だったわよ。」
ほんとは見てなかったけど。
「へへっ‥ありがと。」
あっ、彼女が近づいてくる。
「モモカッ。」
「あっ、イオ。」
彼女はまりえに会釈し
「モモカ、後でね。」
と、まりえのすぐ横を通る。その時彼女の手が腰に触れたような気がした。
同時に彼女の汗と体臭が混じった香りが、まりえの鼻腔をくすぐる。
「今の子はお友達?」
「うん、伊織。高橋伊織、クラスは違うけどね。かっこいいでしょ。」
「えっ、ええまぁね。」

その時はそれで終わったのだが、後日彼女に再会する。
桃華がうちへ連れて来たのだ。

続く


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