| 佐々木は、真里菜の手を引き、商店街の裏路地を抜け、近くの公園へと向かった。
少し奥まった、屋根のあるベンチへ二人は、腰かけた。
休みの日なので、子供たちがキャーキャーと声を出し、楽しそうに走りまわ
っている。
「真里菜、パン食べてないでしょう。ちょっと飲み物買ってくるから、ちょっと待
ってて。」
佐々木は、笑って、すぐ近くの自動販売機へと走っていった。
真里菜は、嬉しくて涙ができてそうだった。
(お姉さま・・何も食べてないから、私を気遣って・・)
佐々木は、レモンティとミルクティを買って、どっちがいい?とたずねる。
真里菜は、ミルクティを選び、食べ損ねたパンを取り出した。
「パン、ぺっちゃんこになっちゃったわね。」
佐々木は、カバンで押しつぶされたパンを見て、ケタケタと笑った。
真里菜も、それにつられて、笑った。
「天気いいわねぇ。丁度いい気候だわ・・。」
レモンティを飲みながら、空を見上げるお姉さま・・。
太陽の光は、抜けるように白い肌を照らす。
色素が薄いのか、髪の毛も瞳の中も、かなり茶色に見えた。
真里菜は、佐々木の横顔を見つめた。
「お姉さま、とっても綺麗。何だか透き通って消えてしまいそう・・」
「何言ってんの。」
佐々木は、うつむいて、照れくさそうに笑った。
うつむいた時、ほんの一瞬だけど、顔が曇ったような・・、気のせい?
佐々木は、にやっと笑って言った。
「ねぇ、そのペッタンコになったパンの味はいかが?」
「美味しいです。ちょっとパンが詰まってしまって固いけど。」
真里菜と佐々木は顔を見合わせて、笑った。
いつまでも、こんな時間が続いたらいいのに・・。
真里菜は、そう思った。
(つづく)
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