| これ以上ないくらい優しいキス。
割れものを扱うかのようにそっと抱きしめる腕。
拒絶されないだけでなく、受け入れて 抱きしめ返してくれた抱擁は、初めてかもしれない。
満たされる。それだけで。
いくら体を犯しても、満たされなかった心が。
それでも、さらに欲が出てくるのが人間というもので。
再び口づけをしようとして、数ミリ手前で止める。
触れるか触れないかの距離。
涼子が戸惑いうっすらと目を開ける。
それでもそこから先へは進まず、誘うように斜に、 涼子を見下ろす。
涼子の腰にまわした裕の手は、背中から腰に向かって ゆっくり撫でおろし、また撫であげるといった動きを繰り返している。
涼子は裕が動くのをしばらく待っていたが、 やがて焦れておそるおそる、首をのばした。
唇が重なる。
涼子からのキス。
本当に自分が受け入れられていることの、証。
何とも言えない感情がこみあげてくる。
もっと涼子が欲しい。
もっと。
もっと。
もっと・・・・・。
むさぼるように涼子の唇にかみつく。
それに一生懸命応えようとしてくれるのがまた、嬉しい。
息苦しくなって一度唇を離すと、 すぐに涼子の少し汗ばんだ首筋に顔を埋める。
「あ…」
耳元で、涼子が小さく声を洩らす。
その聞こえるか聞こえないか程度のかすかな音に、 しかし耳を伝って裕の全身に震えが走った。
首筋に薫る涼子のニオイ。 上出来のドラッグのように、裕のあらゆる感覚を侵してゆく。
アタマガオカシクナリソウ。
「はー…はー……」
あまりに呼吸の荒い裕が心配になった涼子が、 背中にまわした手で裕をさする。
「はっ……あ」
全身が敏感になった裕はそのちょっとした刺激にも 過剰な反応をしてしまった。
「裕……?」
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