| 話は前後しますが、退院の日、ゆきちゃんの部屋に行きました。 気まずい思いをするでしょうけれど、一言挨拶をするのが礼儀だとも思ったので。 個室のドアを開けると、カーテンの向こうで看護師さんの声がしていました。 「二日も絶食? どうして?」 「お腹の中に何もないようにしないと、入れたゴムのウンチが汚くなってしまうんです。だから、二日間、水と下剤だけで……」 「それで極端なプレイをしたら、あなた、今度は衰弱して死ぬわよ。それにその、ウミガメプレイだっけ? そんなに気持ちが良いものなの?」 「それ自体はそんなに……ただ、苦しみから解放されるって……」 「それは快楽じゃないわよ。苦痛からの解放なんて……ああ、だからマゾなのか」 「ごめんなさい」 「相手の女の子はどうなの? あなたを愛してるの?」 「それはないと思います。ただの客ってだけで」 「そうでしょ。もう止めなさいよ」 「……それは、無理です」 ゆきちゃんは泣き始めたみたいでした。 「どうして?」 「マリアさんがいないと生きていけません」 「あなた、しっかりして。ただのSM嬢のお仕事なのよ。そのマリアって子、プレイ以外のこと、してくれたことあるの?」 「……ない、です」 「キスもしないんでしょ」 しばらく沈黙がありました。 明らかに二人はキスしているようでした。 「ヒッ」とゆきちゃんのうわずった声がして、ベッドの軋む音がしました。 「こんなこと、して貰ったこと、ないんでしょ」 「ない、ないです」 「脚をもう少し開いて……ほら、これは?」 「あ、あああ、ないです。初めてです」 「こんなことは?」 「ダメ、ダメです」 「ダメなの? 止める?」 「止めないで! 続けて」 ゆきちゃんのあえぎ声が高くなりました。 「声が出ちゃうわね。あなたにも口を使ってもらおうかな」 ベッドが軋りました。 「さ、あなたも舐めて」 この後、女二人があえぎながら舌を使う隠微な音が続き、いたたまれなくなった私は挨拶もせずに病室を出たのでした。(ゆきちゃんの希望をかなえてみたよ)
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