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嗚呼、陽が落ちたな。
そう思って膝を抱え込んだ体制のまま、ゆっくりと空を見上げてみた。 黒に近い夜になりきっていない濃いブルーの空が映る視界。そこに右手を足してみれば、まだ乾かずに絡み付く液体が鈍い光を反射して光っていた。不意に歪んだ視界に驚いて顔を下げると、濡れた膝を見て自分が泣いているんだと気付く。
何故?
上手く思考が出来ない。 なのに涙はいまだ零れ続けるし、手はいまだ絡み付いた液体で濡れている。 私はどうしたんだろうか。 ここは屋上で、もう夜で… そこでまた空を見上げると、ブルーではない色へと変わっていた。 どこまでも暗いその色を見ると不思議と落ち着いて、瞼を閉じた。
そうだ──…
思い出す。 夕暮れに、朝に、昨日、先週、先月去年…どんどんと遡っていく。 遡った記憶はまるで映画のように動き出す。
私と彼女の物語を、最初に出会った夜から始めようか。 まだ夜になったばかりで、朝は遠いから。
(携帯)
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