| 此れは、或る時代の、ヨーロッパの或る国の物語…
街には噂があった。 とある故公爵未亡人、通称マダム バタフライは黒髪の日本人。恐ろしく美しいがその正体は鬼畜で、人の生き血を吸って生きている。 公爵も、生き血を吸われて死んだとさ。
下町で生きていたマリアも、噂を聞いていた。 そして、いつも思っていた。 何故、同じ日本人の血を持つのにこうも違うのか… マリアは『真里亜』と書く。すなわち、日本人の名なのだが、事情が違う。 マダム バタフライは公爵に見初められ、そして先立たれた。しかし、マリアは男爵の気紛れで、行きずりの日本人との間に成された子。行きずりの恋の結末は、いわゆるお決まりのパターンで「捨てられた子」なのだった。 マリアは捨てられた子。
未開の国、東洋の混血児。
近くて遠い二人の出会いから、物語は始まる…。
(携帯)
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