| スッとメニューを差し出す手が後から伸び、
『お決まりになりましたらおちらの受話器でお受けいたします』
と言って、部屋には私達二人になった。
カラオケボックスの様に電話で注文する様だ。
しかし、その電話はカラオケボックスにある様な無機質な受話器とは違い、
ヨーロピアン調のお洒落で小さな受話器だった。
『飲む前に食べますよね?』
佐野さんがメニューを広げながら聞いてきた。
『そうね。この雰囲気だと、カクテル飲みたいから、まずは腹ごしらえかな?』
と言っても丼物や定食があるわけじゃない。
お薦めがいくつかると言ったので、食事のオーダーは佐野さんに任せた。
『食前酒って和気じゃないけど、軽くシャンパンど?』
佐野さんとシャンパンはちょっと不釣合いな感じで少し笑ってしまった私に
『まったぁ。今私のこと笑ったでしょ。
こんなお洒落なバーと似つかわしくないとか思ったんだ。きっと』
『違うわよ。佐野さんがシャンパンを薦めたからちょっと笑っちゃったの。
ごめんごめん』
『シャンパン・・・似合わない?』
『日本酒とかビール・・・・かな?
焼酎なんかも似合うかも。
でも、ウィスキーとかロックで飲んでも・・・って、
結局お酒なら何でも似合うのかな?』
『なんだそりゃ(笑)そんな酒飲みじゃありませんよ〜』
そんな会話をしながら、楽しく食事を済ませた。
料亭というだけあって、どれもこれもみなおいしかった。
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