| 『今日はなんで付き合ってくれたの?
旦那さん待ってるんじゃないの?』
『そーねぇ〜。
近藤さんが言ってたことが気になったっていうのもあるし、
佐野さんと話してみたいっていうのもあったし、
夕飯一人よりいいかな?って思ってね』
『一人?』
『彼は現地の下見でインドに行ってるの。
あ、彼ね。旅行会社で企画部にいるんだけど、
企画だけじゃなくて、添乗員なんかも時々ヘルプでやってるみたいでさ。
家に居ないこと結構あるのよ。
今夜もそう。
多分、来週の半ばには帰ってくると思うけど。』
『そうなんだ。結婚してどれくらい?』
『先月の11日で2周年。だから3年目に突入ね。』
『・・・・・・・』
佐野さんは窓の下に広がる新宿の街を眺めている。
『どうしたの?』
と肩に手を置いたときだ。
佐野さんは私の腕を掴んで自分の方に引き寄せた。
そして・・・・・短く唇を重ねてきた。
私はとっさのことで固まってしまった。
『ごめん』
佐野さんがゆっくり手を離した。
『こーゆーことしておいて、
謝らないでよ。』
なぜかキスされて謝られると、
キスをした本人が自分自身を否定しているみたいでイヤなのだ。
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