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ガチャッ……
扉を開ける久しぶりの感覚。 息をする度に空気が白くなった。 何も変わらない屋上。でも景色は白に変わった。 今日は卒業式だ。 私は式に出ることなく、君と過ごした2年を振り返るように屋上へ行った。 正確に言えば2年もないが…… 空は青くなかった。曇り空からは深々と雪が降っていた。 私は上履きと制服が濡れるのにも構わず、サクサクと屋上を歩いていた。 柵によりかかり、君を思い出した。
ここには君の笑顔がいっぱいあった。 私も笑っていた。 ここで君にキスをして好きだと告げた。 気まずくもなった。 ここで君からキスをされた。 まぁ……あまり嬉しくないキスだったが……(苦笑
でも普通に考えてみれば、私は自業自得なことをしたんだよなぁ〜…… 君と相馬を引き離したんだから。 私自分のしたこと棚に上げてたなぁ…… で、君を無理やり犯してしまった。
元に戻れるはずないよな。 でも君と過ごした時間は楽しかったな……
そんな君のことを思い出していると、頬に一筋の涙が。
ハハッ、私何泣いてるんだ?今更じゃない。 そう思いながら、外の景色を眺めていた。 微かに仰げば尊しが聞こえてきた。
ガチャッ……
誰も来ないはずの屋上の扉が開いた。 驚き扉の方向に眼をむけた。 そしてもっと驚いた。 そこには君が立っていた。
『ヒっ…ヒトミ……』
君は何故か微笑んでいた。
「やっぱり……ここにいると思った」
何で?
『卒業式は?』
「そんなのどうでもいいの」
何でなんだ?
「久しぶりだね」
君は笑顔だ。
『ぁ…ああ』
君と話しているのが信じられない。
「私もバカだなぁ〜…あんなことされたのに、ここに来ちゃうなんて」
何て言葉を返していいかわからかった。
「でもね……私も酷いことしちゃったし……ごめんなさい」
違う君は悪くないんだよ。謝らないでよ。
『ヒトミは悪くないよ』
「あれからさ……暫くはツカサちゃんのこと憎んでいたの」
『うん』
「でもね、憎しみを越えたらツカサちゃんのことばかり頭から離れなくなって……自分の気持ちに気付いちゃったんだ」
無言と共に2人の間に冷たい風が吹いた。 君の髪が舞い上がって顔が見えなくなった。
次に見えた君の顔。 瞳からは涙が溢れていた。
「好き……なの」
え!!?
「ヒック……ツカサ…ちゃんが……ヒク…好き……」
春が来ると共に君もこの学校からいなくなる。 少し寂しいが、これからは屋上ではなくて心で君と繋がっている。 私の心に春が来た。
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