| 「朱夏ぁ」 「え?何ぃ?」 「朱夏ー、ドリンクあそこみたいよーっ!」
音楽で声が聞こえないため、大きな声を出し合う。普通のクラブにも行った事ない朱夏は、少し不便だなと感じた。それに、人が思ったより多くて行動もしづらい。
ドリンクをもらい、さてどうしようとまわりを見渡していると、一瞬男と見紛う程のボーイッシュな2人組が近寄って来た。1人が話かけて来る。
「ねぇねぇ、君達って恋人同士?」 「いえ、違います…けど…」
朱夏の方を見ながら聞いて来たため、朱夏が答える。
「良かった♪君達可愛いよね、彼女はいるのかな?」
こうゆう場に慣れた者特有の気安さで話を進める2人。好みのタイプだったのかれいらは積極的にテンション良く会話を続ける。
「やーん、もう、褒め過ぎですからっ♪」 「ほんとほんと、可愛いよ?ぶっちゃけ俺好みなんだよねぇ」
大人しく話に相槌を打つ程度だった朱夏だが、あまりに男性的な人が苦手なため、別行動をしようと1人密かに決める。れいらには悪いが、ずっと彼女らと一緒にいるのは辛い。
「ごめんなさい、私ちょっと化粧室に行って来るね」 「え、朱夏?」 「ごめんねっ」
最後に小声でれいらに謝ると、そそくさとその場を離れる。あとでメールでも謝っておかなきゃ…。
2階へあがり、下でダンスする人達を眺めながら甘いカクテルに口をつける。緊張のためか口が渇いていたようで、染みるようにおいしい。
「ここ、いい?」 「んぇ?」
気が抜けていたためか変な声が出てしまった。振り向くと、フェミニンな可愛らしい人。口を押さえながら慌てて「どうぞ」と寄り掛かっていた小さなテーブルの横を指す。
「ありがと」
年上だろうけど可愛らしいその人にクスクス笑われ、朱夏は下を向いた。
「私、藍(あい)って言うの」 「あ、朱夏です…」
改めて藍さんを見る。ハニーブラウンのセミロングに可愛いらしい顔、半袖ブラウスにスカート…同じネコさんだよねぇ?
(携帯)
|