| 朝からザワザワと騒がしい、有名な名門である学校の校門を潜り抜ける。
最近、あまりいい事がない。
(父様も母様もお忙しいし、ずっと飼っていた猫も死んだ・・・。)
彼女は河合紅<カワイ コウ>。とある大手会社の一人娘。 腰までの色素の薄い、茶色のポニーテールに茶色の瞳、すらっとした身体。 身長は低めだが存在感はあった。
お金持ちのお嬢様ばかりが集うこの女子校。 紅は可愛い容姿とは反対に、意外と友達が少なかった。
「ごきげんよう」
そう交わされる挨拶を適当にあしらい、一人教室へ足早に向かう。
そんなクールで可愛らしい紅に他の生徒は悶えていた。 (か、可愛いわ・・・・!!)
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紅は鈍感な為、そんな人々の心を自覚しているわけでもなく。 教室に着くと、鞄を窓側の一番奥の自分の机に置き、隣のクラスへと足を運ぶ。
幼い頃からの数少ない友人である、浅生蓮<アソウ レン>に会う為にである。 蓮は紅とは対照的で、肩までも無い漆黒のショートヘア、黒い瞳、ナイスバディ。 身長は高めでクラスでも中心的人物だ。
そんな明るく強気な蓮と、クールで冷淡な紅は不思議なほど仲が良い。
「・・・・蓮。来た」
今朝もクラスメイトに囲まれていた蓮の、黒いカーディガンを軽く引っ張る。 自然と人々は紅に道を開ける。
みんなはこの、美人な二人のコンビに憧れており、くっつかないかと密かに応援していた。
「あ、紅〜!今日も可愛いvv」
紅のふっくらとした頬にチュッと軽く口付ける。蓮のスキンシップだ。 紅も平然と蓮に口付けを返す。
「ねえ、今日はお昼ご飯中庭で食べない?」
「ん、いいよ」
そこで予鈴が鳴ってしまい、紅が教室に戻る。
「・・・・・可愛い紅・・・・・」
そう蓮が呟いたのを、紅は勿論、他のクラスメイトも知る由はなかった・・・。
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