| ……貧弱な身体つき、素顔を引き立てる役に立たない、濃いだけの化粧。 それなのに、娘が二人の裸の女を胸に抱き寄せた時、そこにあのひとが顕現した。
……あれを何と表現すればいいのだろう。あのひとを思わせる女優達に同じ場面を演じさせても、幼い頃に受けた感銘は得られない。 修羅場に動じない胆力。あるがままに対象を受け入れる懐の広さ……そうではない。あのひとの所作の一つ一つが鮮烈に記憶に残るのは、容易に言い表せないあのひとだけの資質によるものだ。
私はそれに気付いていたが、他の女を使って何度も再現しようとした。大概は編集段階でカットしたが、一度だけ、キャットファイトを交えた乱交物でリリースした。 私と友里の母親を彷彿とさせる女同士の乱闘を、観客を巻き込んだ乱交に移行させる節目に、あのひとを模したジャッジに女二人を抱擁させて、後日、それを観た友里に殴り飛ばされ、蹴りまくられた。
「―――恥知らずが」 友里が発した言葉はたった一言。 けれども、それで十分だった。 お互いに同じ光景を抱え込み、再現しようと足掻いている。
やれやれ、因果だな……
(携帯)
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