| 瑠花は、よく磨かれた白い丸い皿に乗っている人参のグラッセを、銀のこれまたよく磨かれたフォークで突き刺した。
それは、突き刺すと形が崩れそうなくらい柔らかく、鮮やかな丸いオレンジ色のものだった。
突き刺した今にも崩れそうな人参を、ゆっくりと、しかし手早く口の中に入れてよく味わう。 人参の独特の臭みは無く、甘くて見た目通り柔らかいグラッセが口の中で噛み砕かれる。
瑠花が幼い時に今も昔も多忙な父親と母親と、最初で最後かもしれない夕食を一緒に高級レストランでとった時。 初めて食べた高級な食材をふんだんに使ったサラダ、ハンバーグ、スープにデザート。 そこで食べた人参のグラッセは、彼女の唯一の両親との思い出だった。 甘くて柔らかい、優しいグラッセ・・・・。
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