| 「貴女には失望しましたわ?もう少し楽しませて頂けると思ってましたのに」
「お待ち下さい!香澄様!」
「もう待ちませんわ。さようなら、麗子」
今日、鈴木麗子というセフレ関係にある女性と別れた。理由は飽きたから。 何十人も身体だけの関係を持つ女性がいる私だけど、飽きたら捨てる主義なの。 麗子は確かに可愛らしくて厭らしい女性で、家庭的だけれどつまらなかったのね。 私は退屈や平凡な日々が嫌いなの。常に何か新しい事や面白い事がないと。 幸い、父親が医者で母親が企業の社長。金はばら撒くほどあるもの。 その金と私の両親譲りのこの容姿で、同性愛者の女性なんて簡単に堕ちる。 男だろうと両性愛者だろうと、簡単に惚れさせる自信もテクニックもあるんだし。
別れを告げたお洒落なカフェをさっさと出ると、後ろでカウンターで突っ伏して泣き出している麗子が見えた。 人の目なんか気にせずに、私の名前を何度も何度も呼ぶ麗子。可哀想に。 名前通り、綺麗で厭らしかった麗子、貴女は既に過去の人。今は何も関係ない人。 でも、手を差し伸べるような事は二度としない。もう飽きた古い玩具だから。
外はちょっとだけ暑くて、でも私にはちょうど良い温度。 だから、珍しく迎えの車も呼ばず、何にも乗らずに歩いて自宅に帰る事にした。 こうやって見ると、この町も綺麗なものなのね、と内心思う。 数年前、生まれ育った場所から引っ越してきたんだけど、案外私はこの町を全く知らない。
しばらく歩いていると、もう下校時間に値する時間で女子中高生が多くなる。 近くに女子校が3校もある場所だから、男子生徒よりも圧倒的に女子生徒が多い。 結構私好みの可愛い子や綺麗な子もいたりして、歩くのも捨てたもんじゃない。 でも、女子中高生は色々とご両親とかが面倒だから、私は相手にしない主義なの。 相手からどうしても、って懇願してきた場合は違うのだけどね。 数ヶ月前に別れた塩谷美羽っていう子も綺麗な高校生だったけど、飽きちゃったから捨てたっけ。
そんな事を考えながら歩いていると、酷く慌てている女性とぶつかった。
「す、すみませんっ・・・・・・・・!!!!!」
そういって上げた彼女の顔を見て、私は少しの間魅入ってしまった。 ・・・・・だって、とっても可愛らしくも綺麗でもある、好みのど真ん中な顔。 走って乱れた黒髪のロングヘアーもCMなんかで映る髪のように綺麗だし。
でも、その子が走ってきた方向からは怒鳴り声が聞こえてきた。 何処だ、だの、出てきやがれ、だの、そんな汚い言葉使いの男性の太い嫌な声。 その子はソイツから逃げているみたいだった。
「ねえ、私と一緒に来ないかしら?」
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