| 辛いお稽古一 「ツキヨさん この書道教室の師範代としての特別な訓練を始めますよ。なにせあなたは二階堂流の10年に一度の奥技密演にこのお教室から出るのですから…全国のお教室の中からただ一人選ばれたのですよ、家元のご指名で。師範たちの前で恥ずかしくない密演が出来なくては…。覚悟はよろしいですね」 緊張のあまりうわずった声でツキヨは「はい」と返事した。師範代と言ってもなりたてで慣れていない。しかも異例の20代前半の若さ。この、女ばかりで構成されている書道二階堂流の門下生だ。ツキヨに説いている目の前の師範は豊子という。和服の似合う40代半ばの艶のある美人である。初々しいツキヨはこのような大人の女性になりたいと願い、豊子はツキヨの白くみずみずしい肌を羨ましく盗み見することがある。 家元は60にはまだ届かない妖しいほどの美貌を放つ二階堂シノ、お付きの若い女性を数人伴いこの豊子の教室を視察に訪れたのを一度ツキヨは見たことがある。妖艶なシノをただ口を開けて眺めるだけのツキヨを見て、シノは「可愛い…」とだけつぶやき、何かお付きの女性に耳打ちしていた…
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