| 「はぁッく・・・・・ン・・・・・ッ」
蜜がたらりと太股を伝うのでさえ快楽で、身震いした。 静かな深夜の部屋にやけに響くモーター音も、また快楽で。 冷たい蔑むような目でじっと見つめられるのも、自分だけ熱に浮かされるのも。 ・・・・・例え相手が、何もしてくれなくて自分で行為をしていても。 全て、今の自分の脳と身体には快楽としか伝えられない。
「・・・・・んなに楽しい?」
相手の腹部に跨って自分で愛撫を施すその姿を見て、どう思ってるんだろうか。 緑の畳の上に寝転んだ相手の上で帯を解いて着物の前を開いて誘う。 そんな自分の淫らで変態な醜態に、相手は少しでも心動かされているんだろうか。 ちらりと見やった相手の顔は、やっぱり冷ややかで無表情な顔のままだった。 それが余計にそそられる、というか、興奮材料に成り代わる。 自分でも呆れるほどに穢れた厭らしい身体なのは、百も承知だけれど。
「ねぇ・・・・も、ヤってよッ・・・・・」
「面倒臭いからヤダ」
「お願いッ・・・・もう限界なの・・・・ッ!!!」
「はぁ・・・・ったく、ちょっとは自重とか自制とかってモンを覚えたら!?」
何十分も自分1人で煽ろうと奮闘していたのが実を結んで、相手が折れた。 頭がゴツッと音が鳴るぐらいに思い切り回転させられて、畳に押し倒される。 押し倒された畳は、ずっと相手が寝転んでいた場所だから生暖かくて。 それも何だか気持ちが良くて、また奥の方から新しい蜜が滲んだ。
情事後、荒い呼吸と火照った身体を落ち着かせるように、2人で畳の上に寝転ぶ。 さっきまでいた場所は温かくて気持ちが悪かったから、端の方へとずれて。 代わりに、さっきまでいた場所には脱ぎ散らかした自分の着物と帯が放ってある。 赤い着物と赤い帯をしばらくの間見つめて、また隣の方へと視線を向けてみる。 そこには仰向けで、瞑想をするように目を瞑った安らかな寝顔のような顔があった。 実際は寝てなんかないことは分かっていたし、また寝れないのもまた分かっている。
「・・・・疲れた。歳かな」
自分は乱れていないくせに、そんなことを低く呟く相手に笑みが自然と零れた。 一生懸命喘ぎ過ぎたせいでひりひりとした違和感を抱える喉は、多分声が掠れたことを知らせる。 身体のあちこちが痛くて、ああ自分も若くないんだなあ、と密かに思った。 自分とは違ってきちんと洋服を着ている相手から視線を外して、木の天井を見上げる。
「激し過ぎでしょ、身体痛い・・・・」
「誘うそっちが悪いでしょ、」
相手――――亜希にそう文句を言うと、そうやって答えが真横から返ってきた。 確かに、亜希が外から帰ってきた瞬間に抱きついてキスして誘ったのはこっちで。 申し訳ございませんね、と言うと、全然申し訳なくない、と返ってきた。 そんな亜希にもつい自然と笑みが零れて、くすっ、と小さく口元だけで笑った。 亜希はそんなこっちの様子をじっと見つめていて、眉間に薄い皺を寄せた。
「・・・・・何」
「ううん、何でもないんだけど」
「・・・・・変なの」
まだ眉間に皺を寄せてむっとした顔をしている亜希の方を向いて、首に腕を絡めた。 突然の出来事に口が半開き状態の亜希に笑いかけて、顎を引いて上目遣い。
「またシたくなっちゃった」
「だから、ちょっとは我慢ってモンを身に付けなさいって、」
はあーと呆れた顔で溜息を吐いてくる亜希も、別に嫌ではなさそうな顔をしている。 微妙に乗り気で自分の顔の横に両手を付いて上に被さってくる亜希に笑いかけた。
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