| 注意散漫になりながらもなんとか業務をこなし、午後になってやっと少し落ち着いた。 なんとか気を楽に持てるようになったと思ったら、デスクのPCがメールを受信した。 社内からのメールフォルダに、“重要事項”フラッグのついたメールが入った。 送信者の名前を見て、心臓が一瞬止まる。 岬からだ。
『重要事項: 由希さん、今日は仕事がはかどっていないようですね。 香水を変えた事が原因ですか?香水に気を取られず、しっかり業務に 取り組みましょう。岬』
たった数行だが、何度も読み返す。 香水の香りがよりいっそう強くなった気がする。 あの出来事がまざまざと頭に浮かび、耳まで赤くなるのが自分でもわかる。 由希はモニターから顔をあげ、離れた席に座る岬を見た。 しかし岬は、相変わらず何事も無かったような態度で仕事を続けていた。 わたしが読んでどう反応するか、気にしていないフリをしている。 でも・・・本当は楽しんでいる? 恋愛の初期段階のような駆け引き? それともただの意地悪? 完全に翻弄されている自分に、そしてこの状況に、由希は狼狽した。 可哀想なほどにおろおろとする由希のPCに、新しいメールが着信した。 また岬だ。
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