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■6756 / inTopicNo.1)  見えない鎖
  
□投稿者/ ゆん 一般人(1回)-(2012/01/09(Mon) 22:05:53)



    5月の中旬。
    ここ、田舎の中高一貫校に
    新しく入学してきた
    中学1年生の子も、
    だいぶ学校に慣れてきた。



    井原皐月は、今年の4月、
    高校3年生になってしまった。
    高校生活最後の年でもあり、
    この学校で過ごすのも最後、
    そして遂に受験生だ。










    「皐月!今日バス?」



    この学校の通学方法は、
    徒歩と自転車と電車、
    車での送り迎えの他に、
    バスという方法がある。
    普通のバスではなく、
    学校の通学用のバスだ。
    3つの方向を走っていて、
    利用する生徒は多い。



    皐月は帰りはよく
    そのバスを利用している。
    今、終礼が終わるなり
    声をかけてきた友達、
    岸谷歩は、入学してから
    今までずっと、結構
    仲がいい友達の1人だ。



    「あー・・・・バスだよ」


    「なら一緒にいこ!」


    「いいけど」


    「その前に音楽室に寄らせてー」



    歩は音楽部、という名の
    合唱部に所属している。
    皐月の2歳年下の妹も
    入学してからずっと
    所属している部活で、
    皐月も入学してから
    1年半は所属していた。
    しかし、先輩や顧問と
    いろいろあったりして、
    音楽部と部室の音楽室と
    その顧問である教師は、
    トラウマとなってしまっている。
    が、今は昔と比べて
    かなりマシになった方だ。



    どうやら歩は今日は
    病院に行く予定らしく、
    その旨を伝えるために
    部室に顔を出すようだ。
    仕方なく、カバンを背負い、
    歩について音楽室まで行く。



    音楽室の3つのドアは
    完全に開け放たれ、
    廊下と教室内の窓も
    適度に開けられていた。
    前側のドアの前で
    待たされている皐月には、
    音楽室の中で部活の
    準備をする生徒や、
    話をしている生徒の姿が
    よく見えた。



    部活を休む、と伝えるだけ、
    と言っていた割には遅い
    歩を壁に寄りかかりながら
    待ち、教室の中を見渡す。
    そこに、ふと目があった
    後輩の女の子がいた。
    この部活は主に女の子が
    入る部活なので、中は
    女の子だらけで、さらに
    それなりに人数はいるが、
    なぜかその子だけが
    目に留まった。



    名前も学年もクラスも知らない。
    しかし、スリッパの色からして、
    3月に卒業した先輩が使っていた
    スリッパの色ということは、
    中学1年生のようだった。
    顔も今まで見たことがない。
    制服も身体より少し大きく、
    新しいものに見えるし、
    何よりまだ部活の雰囲気に
    いまいち馴染めていない、
    そんな感じがした。



    胸元まで髪を伸ばし、
    こちらを見てくる後輩は、
    大人しそうな印象を受ける。
    とりあえず、初対面の人を
    そんなに見つめるのも
    いかがなものか、と思い、
    すっと目を逸らした。



    「さ、行くか!」



    話が終わったらしい歩に
    声をかけられた皐月は、
    その場をあとにした。



引用返信/返信 削除キー/
■6758 / inTopicNo.2)  (削除)
□投稿者/ -(2012/01/09(Mon) 22:41:59)
    この記事は(投稿者)削除されました
引用返信/返信 削除キー/
■6759 / inTopicNo.3)  見えない鎖 2
□投稿者/ ゆん 一般人(4回)-(2012/01/09(Mon) 22:42:36)






    あれから数日が過ぎた。
    あの後輩のことは忘れ、
    いつも通りの生活を
    送っていた。



    あの日から部活に
    顔を出すことはなかったし、
    高校2年生から音楽の
    授業はなくなるので、
    そもそも音楽室にすら
    行くことがないからだ。



    皐月も美術部と
    JRC部という
    ボランティアの部活を
    兼部しているが、
    美術部は幽霊部員で、
    JRC部は普段は
    活動があまりない。
    JRC部の回覧板が時々
    回ってくることがあるが、
    積極的に活動に
    参加することはなく、
    最低限の活動にしか
    参加していない。



    4限目の授業が終わった。
    文系クラスにいる皐月は、
    お弁当を食べるため、
    隣の理系クラスの教室に
    お弁当を持って移動した。



    お弁当を食べるメンバーは、
    1人アメリカに今年の夏まで
    留学しているため、
    1人欠けている状態だが、
    元は5人で食べている。
    つまり今は4人だ。



    その欠けている1人は
    元ゴルフ部、現JRC部。
    しかしあとの3人は、
    元音楽部、あるいは
    現役の音楽部だ。



    吉井彩は元音楽部で、
    今は美術部に所属している。
    同じクラスの友達だ。
    その子から教室を出る前に、
    先生に呼ばれているので
    先に食べておいて欲しい、と
    伝言を預かった。



    教室に行くと、既に
    現役の音楽部の2人、
    篠崎礼華、松原奈々が
    食べる準備を整えて
    待ってくれていた。



    「よっしー遅れるってさ」


    「じゃあ先に食べとくか」



    早速皐月も準備を整え、
    おかずを口に運ぶ。
    それからしばらく3人で、
    途中から4人で、
    普段通りの他愛ない会話を
    していた、その時だった。



    「皐月、速水優って知ってる?」


    「ん?誰それ」



    聞いたことがない名前だった。
    食べるのが早い皐月は、
    もうお弁当箱を片付ける。



    「音楽部の後輩なんだけど」


    「全然知らない」


    「だよねー・・・・」


    「その子がどうかしたの?」



    礼華が皐月にそんなことを
    聞くのはかなり珍しい。



    「いやさ、皐月と似てるんだよね」


    「その子が?」


    「うん、似てるよ」


    「ちなみにどこが?」


    「自分で自分を追い込むとこや
     不安定なのが似てる」


    「・・・・・喜べない」



    全然喜べる話じゃなかった。
    確かに小学6年生の頃から
    自傷行為がやめられず、
    高校1年生の冬には1か月半、
    精神科の閉鎖病棟に入院し、
    今でも通院して薬を
    飲んでいる状態だし、
    自傷行為もやめられない。
    そんな自分と似ている、
    と言われてしまっても、
    喜ぶどころか心配になる。



    「その子、まだ馴染めないんだよね」


    「そりゃ奈々、仕方ないでしょ、
     まだ5月なんだからさ」


    「でももうそろそろだよね」


    「時間がかかるんじゃない?」



    その日は、そんな会話をして
    終わったが、その子が
    どんな見た目の子なのかは
    分からず仕舞いだった。
    結局、名前と皐月に
    似ている、ということしか
    分からなかった。



引用返信/返信 削除キー/
■6760 / inTopicNo.4)  見えない鎖 3
□投稿者/ ゆん 一般人(5回)-(2012/01/09(Mon) 22:57:30)



    6月になり、梅雨入りも
    近づいてきた頃、
    また歩の付き添いで
    部活が始まる前の
    音楽室に行った。



    そこで、忘れていた
    あの後輩を見つけた。
    やはりその子は
    なぜか皐月の視界に
    他の後輩よりもはっきり
    入ってくる子だった。
    皐月はやはり気になって
    その子をじっと見つめる。
    その子はぼうっとして
    気付いていないようだ。



    「あ、皐月!この子だよ、
     前に言ってた子!」



    突然、礼華が笑顔で
    その後輩の隣から
    皐月に話しかけてきた。
    後輩は一体何の話なのか
    当たり前なのだが
    分かっていないようだ。
    きょとんとしている。



    「・・・・その子?
     速水優ちゃんだっけ」


    「そう、中1の1だよー」


    「よく見たら可愛いな」



    そう、優は目立つような
    外見ではないのだが、
    ちゃんと見てみると、
    皐月的には可愛い部類に
    入る外見をしていた。



    礼華は戸惑う優の手を
    引き、皐月の前に来た。
    初めて優に近づいて、
    皐月は思った。



    「ちっさ」


    「さっきから何気失礼だよ」



    おどおどしている優は、
    身長が165cmある皐月より
    10cm以上は低いようだ。
    中学生になったばかり、
    というのもあるだろう。



    「初めましてー」



    皐月が微笑みを浮かべて
    挨拶をすると、
    優は小さな声で同じく
    初めまして、と
    返してきた。



    「小動物みたい・・・・
     なんかビビってるチワワとか」


    「そ、そんなことないです」



    思わず頭をポンポンと
    撫でてしまった皐月に、
    優は逆らいもせず、
    控えめな否定な言葉を
    やはり小さめの声で
    口にした。



    「あ、もうバスの時間だ、
     じゃあね」



    時計を見ると、
    バスが出発する時間の
    3分くらい前だった。



    (速水優って・・・・
    あの子のことだったんだ)



引用返信/返信 削除キー/
■6761 / inTopicNo.5)  見えない鎖 4
□投稿者/ ゆん 一般人(6回)-(2012/01/09(Mon) 23:14:33)



    それから更に日が過ぎ、
    6月の下旬になった。
    妹に用事があったので、
    音楽室に顔を出した。



    「あ、井原先輩・・・」



    妹への用事が済み、
    帰ろうかとした時に、
    聞き覚えのある声で
    名前を呼ばれて
    振り返った。



    振り返った廊下には、
    あの優が立っていた。



    「どうしたの?」



    特に呼び止められるような
    用事も何もないはずの
    優に呼び止められて、
    内心驚いていたが、
    顔には出さずに笑顔で
    切り返す。



    「長袖・・・暑くないですか」


    「・・・・・へ?」



    確かに、自傷行為により
    両腕に残ったたくさんの
    傷跡を隠すために、
    皐月は長袖を着ている。
    しかし、それは優も
    一緒だった。
    理由は一緒なわけない
    と思いたいが、
    優も長袖だった。



    6月から基本夏服だが、
    ブレザーを脱いだ
    長袖のブラウス姿なら
    6月以降も許される。
    なので長袖姿の生徒も
    いることにはいるが、
    やはり少ない。



    「君もでしょ?」



    笑いながらそう指摘し、
    じゃあ、もう帰るから、
    と背中を向けた。



    「あ・・・・あのっ!!」


    「ん?」



    再度、先ほどよりも
    大きな声で優に
    呼び止められ、
    皐月はまたも振り返る。



    「先輩は・・・・」


    「先輩は?」


    「仲良く、してくれますか・・・?」



    何てことを聞く後輩だ。
    そんなことを聞く人は
    あまりいないだろう。
    しかも部活が同じ
    先輩にならまだしも、
    違う部活にいて、
    あまり会わない、
    しかも自分よりも
    5つも年上の先輩だ。



    「・・・・まあ、
     いじめる気はないよ」



    そう言ってやると、
    優はほっとした顔をした。
    そんな優を少しだけ
    可愛らしいな、と思いつつ、
    今度こそ背を向けた。



引用返信/返信 削除キー/
■6762 / inTopicNo.6)  見えない鎖 5
□投稿者/ ゆん 一般人(7回)-(2012/01/09(Mon) 23:35:07)



    「皐月は好きな人いないの?」



    そう歩に聞かれたのは、
    7月の中旬の帰り道。
    いつも1便と2便で
    帰るバスの便が違う
    歩と皐月だが、
    今日は音楽部が
    なぜか突然部活が
    なしになったのだ。
    夏にコンクールがあるため、
    それは珍しいことだった。



    「あー・・・いないな」


    「いないの?」



    今まで、ネットで知り合って
    男性とも女性とも
    付き合ったことはあった。
    どっちとも付き合ってみて、
    自分には女性との方が
    合っていると思っていた。
    男性嫌いというのもあるが、
    そっちの方が無理がない。



    しかし、皐月は今、
    恋愛をする気には
    なれなかった。
    受験生だから、とか
    そんな理由ではなく、
    恋愛をすることが
    面倒臭いのだ。



    歩は今自分が運営している
    サイトを通じて知り合った
    とある男性のメル友に
    熱を上げているようだ。
    恋をしている、という
    感じではないようだが。



    その男性との話を聞きながら、
    皐月は優のことをなぜか
    ふと考えていた。



    別に気になる、とか、
    好きなんじゃないか、とか、
    そんなのじゃない。
    ただ、浮かんできただけだ。



    が、どう考えてみても、
    優に関する情報が少ないうえに
    そこまで親しくもない。
    想像できなかった。
    というか想像する方が
    無理だった。



    皐月が先に降りるまで
    しばらく歩の話を
    皐月は聞いて、それに
    つっこむだけだった。



引用返信/返信 削除キー/
■6763 / inTopicNo.7)  感想^^
□投稿者/ 舞 一般人(1回)-(2012/01/11(Wed) 00:50:12)
    どうなるのか、楽しみですぅ^^

引用返信/返信 削除キー/



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