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皆様、ようこそいらっしゃいました。 私はここで雇われている、井上李緒(いのうえりお)と申します。 本日はお集まり頂き、ありがとうございます。 軽食やお飲物をご用意させて頂きましたので、ごゆっくりお楽しみ下さいませ。
そう言って深々とお辞儀をしたのは、まだまだ若い1人の可愛らしい子。 黒と白のメイド服を身に着け、首には真っ赤な首輪をはめています。 結構色白な子なので、メイド服の黒い生地と真っ赤な首輪がよく映えます。 そのメイド服はミニスカートで、しゃがめばスカートの中が見えそう。 黒いストライプ柄のタイツを穿いているので、生足ではないのが残念です。
そして今日、都心のビルの地下に集められたのは、10人の女性たち。 年齢は10代後半ぐらいが最低ラインの、至って普通の女性ばかりです。 その集められた10人の女性の中には勿論、“貴女”も入っていますよ?
それぞれの女性の自宅に、1つの薄いピンクの封筒が届いたのは半月前。 封筒の中には、今日のこの集まりについてのお誘いと、そのためのカードキー。 彼女たちは、とある女性のファンクラブに所属する女性たちなのでした。 このお誘いは、今回が初めてのものではありませんから、彼女たちは慣れっこ。 そもそも、これが目当てで入会したという女性もいるそうなのです。 まあ、今回お誘いがかかったのは、ファンクラブの“幹部”に属する女性のみ。 幹部の女性は、このファンクラブを持つ女性が履歴書を見て、自ら決めるのです。 ファンクラブに入会する時には、履歴書を送らなければなりません。 それを見て、職業・容姿を配慮したうえで、幹部が選ばれます。 あまりに外見に無頓着な人、理由なく無職だったりする人は論外です。 ある程度外見に気を配っていて職に就いていれば、誰でも可能性はあります。
・・・・・説明が長くなってしまいましたね、話をもとに戻しましょう。 貴女はちょうど暇だったので、今日、この集まりに参加しました。 幹部は15人いるはずですので、どうやら今日は5人が欠席のようです。
李緒と名乗ったその染めていない黒髪をボブにした子が、歩き出しました。 幹部である招待客の女性たちも、その子の後に続いて廊下を進みます。 上は会社のビルなのですが、隠し通路を抜けると、ホテルのようでした。 カードキーと暗証番号で扉を開けると、そこはホテルのロビーのような場所。 全員が揃うまでそこで待機し、全員集まったところで李緒が現れたのです。
3分か5分ぐらい歩くと、ドアが現れ、李緒がインターホンを押しました。 ピンポーン、という音が微かに聞こえた後、無言でドアの鍵が開く音がしました。 李緒はドアを開けるとドアを押さえ、女性たちを先に中に通しました。
部屋の中には、広いキッチンやダイニング、リビングなどが広がっています。 そのリビングの赤いソファーの上に、黒いパンツスーツ姿の女性が座っていました。 優雅に指と足を組み、こちらに気付くと美しい微笑みを浮かべました。 ―――――そう、この女性こそ、ファンクラブを持つ謎の女性、慈雨(じう)。 苗字は分からず・・・というか慈雨という名前が本名かどうかさえ分かりません。 真っ白に染めたベリーショートの髪が特徴的な、優しげな女性です。
「ようこそ、幹部のみなさん。お久しぶりです」
ソファーから立ち上がると、幹部の女性1人1人と握手をして回りました。 モデルや女優にも滅多にいないその美貌に、幹部たちはうっとりとしました。 身のこなしも優雅で上品で、肌も綺麗で白く透き通るようで・・・・。 もう、慈雨を見たら、いくら美人だと言われる女性でも、そう思えません。 そのぐらい慈雨は魅力的で美しく、なおかつミステリアスな女性なのです。
「慈雨様、この間お会いした時は、黒髪でしたよね?」
20代ぐらいの女性が、興奮で頬を微かに紅潮させたまま口を開きました。 慈雨はよく覚えているね、とまた微笑み、先々週染めたの、とにっこり。 その笑みに幹部の女性も李緒も顔を赤らめ、またうっとりとしました。
「さて、今日貴女方を呼んだのは、この髪型を見せたかったのもあるんだけど、 本来の目的は、私が雇っているこのメイド、李緒にお仕置きとしつけをするためなの」
首輪から垂れていた銀の細身の鎖を引っ張られ、李緒はよろめきつつ慈雨の元へ。 慈雨は彼女を受け止めると、そのさらさらの髪の毛を軽く指でといてやりました。 李緒は気持ちよさげ、嬉しげに頬を緩め、ねだるように頭を手にすり寄せます。
「彼女がどういう粗相をしたのです?」
「この間友人を招いたんだけど、その時にきちんと対応が出来なかったの。 それはそれは酷いものでね・・・・私のしつけがなっていなかったみたいね」
「だから、今日は李緒に徹底的にお仕置きをして、しつけ直すわ」
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