| アタシこと、桜井美咲は幼い頃に両親が離婚して以来、男手一つでお父さんに育てられた。そんなお父さんを助ける為もあってか、料理や洗濯などの家事全般を全て引き受け専業主婦さながらの生活を送っていた。 ところが高校二年に進学する間際、その生活が激変してしまう。お父さんの事業が大成功を収め、横ばいだった収入がうなぎ上りのように上昇。更には二人の子供を連れた人と再婚を果たし、一人っ子だったアタシに突然二人の妹ができた。 「美咲ちゃん、今日からよろしくね」 新しくお義母さんとなる人から挨拶をされる。長身だが物腰柔らかで素敵な女性。年齢もお父さんと同じくらいと聞いていたが、見た目はそれよりもずっと若く綺麗な女性という雰囲気を醸し出している。 「美咲姉さん、これからよろしくお願いします」 「みーちゃん、今日からよろしくねっ!」 お義母さんの後から別の声が同時に聞こえた。それと同時にアタシは色々な意味で思わず驚いてしまった。一つ目は、髪型こそ違えど全く同じ顔が二つ並んでいたからだ。お義母さんの説明では一卵性双生児というものらしく、実の母親ですら昔は意識していないと間違えてしまった程だという。二つ目は、容姿端麗というのはこの二人のために用意されているのではないかと思えるくらい綺麗なこと。大きな目に長く濃い睫毛、鼻筋の通った小さい鼻に、形の良い薄い唇。街ですれ違えば、誰もが振り向くような美人なのである。三つ目は、身長の高さであった。アタシの身長がギリギリ150cmなのに対して、お義母さん、小夜、明紀の全員が頭一つ分違うので恐らく170cm以上はあるだろう。正直羨ましい。 「明紀、もう少し丁寧な挨拶はできないの?」 「小夜は細かいなぁ。これから家族になるんだから別にいいじゃん」 丁寧な口調で話をしている方が小夜(さよ)ちゃんで、屈託のない反応を返しているのが明紀(あき)ちゃんのようだ。小夜ちゃんは艶やかな長い黒髪をしており、フォーマルな衣装に身を包んだ姿はカッコイイお姉さんといった感じだ。反対に明紀ちゃんは毛先をディップで固め、不規則に跳ねさせた栗色のショートカットの髪型をしており、カジュアルなファッションをしていた。 「何事も第一印象は大切です。家族としてやっていくなら尚更です」 「わ、わかったよぉ、もう。えっと、美咲お姉ちゃん、よろしくお願いします」 明紀ちゃんの二度目の挨拶でアタシはようやくアタシは我に返る。 『あ、うん、よろしくね! 小夜ちゃん、明紀ちゃん』 これが私達の初めての出会いだった――。
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