| 講習を終え、みぎ姫ひだり姫は東京に帰っていった。 ことになっていた。 実際には一日よけいに十三に残り、みゆきとふうかを二時間買って存分に楽しんで帰りたいという。 それを聞いたとき、みゆきは、レズでもない彼女らがいったいなぜ、と思いながら、期待に胸が騒いだ。 女の子に買われる…… あまりにも甘美な期待は、呼ばれた部屋にあったロデオマシンを見て、一気に醒めた。 そこには女の下半身を責める器具がグロテスクに貼り付けられていた。 クリとヴァギナと、そしてアナルも…… しかもそれは二組、向かい合って取り付けられていた。 つまり、女を二人、同時に責める快楽の拷問台なのだ。 「これ、素敵でしょ」とみぎ姫は言った。 「大阪のメーカーに頼んだ特注品なの。あなたたちが最初の被験者よ。存分に楽しんでね」 お金を貰う以上、断ることは出来ず、みゆきとふうかはその器具に乗った。 みぎ姫ひだり姫の前で全裸になることも、そういう器具を装着することも、もう抵抗はなかった。 二人の足首はマシンに固定された。 「じゃ、まずはスタンダードね。振り落とされないように、しっかり抱き合って」 ロデオマシン特有の馬の動きと、同時に、三つの箇所が異なる刺激を伝えてきて、みゆきとふうかは、そのあまりの悦楽に、抱き合いながら声を上げるしかなかった。 「音楽モードってあるわよ」 みぎ姫が言った。 「どんな?」とひだり姫。 「ワルツ、ってどうだろ」 マシンが三拍子で跳ね始めた。 その動きはみゆきとふうかの下半身の微妙な部分三カ所にダイレクトに来た。 二人は三拍子で喘ぎ声を上げた。 「これ、面白い!」 「カラオケとも連動してるみたいよ。何か歌わせてみようよ」 「何かないかな」 みぎ姫ひだり姫がバカ話をしている間も、みゆきとふうかは三拍子で逝き続けた。 みゆきは何度も失神しかけ、ふうかに助け起こされた。 ふうかも同じだった。 買われた以上、買い主の要求は絶対だった。 と言うのを言い訳にして、みゆきはこの甘美な拷問を舐めるように味わっていた。 「歌決まったわよ、これを綺麗にデュエット出来たら下ろしてあげる」 テレビ画面には「十三行進曲」と出た。 勇ましい前奏が始まれば、曲は「蒲田行進曲」だった。 ただ、作曲は外国人なので、「蒲田行進曲」自体がカヴァーなのだとわかった。 字幕には、 「オペラ『放浪者の王』より」とあった。 「さあ、歌いなさい」
淀川ほとり花火も上がる 愛こそ命 宵の宴にさかづき交わし 一夜よ永遠に 十三、十三、夢の街 夢と愛とが出会う街 そぞろ歩けば笑顔も涼し 十三、夢の街
喜びもある悲しみもある それこそ命 宵の宴に想い出語り あの日よ永遠に 十三、十三、恋の街 恋と夢とが出会う街 そぞろ歩けば憂いも消える 十三、恋の街 …… とてもまともに歌えてはいなかったが、その歌声は、なぜか四人の心に滲みたのだった。 (終わりだよ。「十三行進曲」の歌詞はオリジナルだから著作権の問題はありません)
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