| 私たちには名前もない。 家族もない。 戸籍もない。 いつ殺されて山奥に捨てられても、誰も探さないし、犯人も捕まらない。 だから仲間内の結束は絶対だ。 裏切りは即、死を意味する。 「楽に殺してもらえると思うなよ、あたしらそんなに優しくないからね」 警察で仲間の名前や住所をバラした、通称アキナが仲間に拘束されたとき、その当時ボスだった通称アヤメは言った。 アキナは全裸で土下座しながら、あまりの恐ろしさに失禁した。 「さあ、どうしようか。中国マフィアに売り飛ばすか。連中はこわいよ。こないだの、えーと、何つったかな」 「キヨミ、です」とナンバー2のイクミが言った。 「そうそう、キヨミなんか、最初は普通にマワされて、次はケツの穴でマワされて、最後はヘソのすぐ下に人工のマ●コを開けられて、そこを寄ってたかって犯されたんだってよ。それでも三日間は生きてたんだって。チャイナマフィアは恐ろしいわ」 「……許してください、何でもしますからぁ……」と土下座したままアキナは泣いた。 自分で掘った穴の中で、後ろ手に縛られた全裸が怪しく揺れた。 林道から車を下りて山に入り、一時間も全裸で歩かされ、身体は血まみれになっていた。 そして自分を埋める穴を掘らされ、後ろ手に縛られ、穴に放り込まれ、あとは埋められて死を待つばかりだった。 「まあ、男たちを喜ばせるのも癪だからね。かといってただ殺すのはもったいない。こんな奴でも生まれてきた意味ってものがあるだろ。お前をこの森の虫たちに捧げるよ」 私たちは焼酎で溶いた蜂蜜をバケツ一杯、アキナの頭からぶっかけた。 「運が良ければ助かるだろ。夏だしね」 一週間後、私たちは再びそこに立った。 アヤメとイクミ以外、みんな吐いた。 私たちは吐きながら、気持ち悪い虫の巣と化したアキナを埋めた。 腐肉の異臭は耐えがたく、シャワーを浴びたくらいでは落ちなかった。 生きながら虫に食われて死ぬなんて…… 裏切りは絶対に、絶対に許されない。 仲間のみんなと同じように、私も心に刻んだ。 はずだった。 なのに、まさか、この私が……(続くよ。今回はハードだから。心臓の弱い人は読まないで)
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