SMビアンエッセイ♪

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■7714 / inTopicNo.1)  ノコギリ
  
□投稿者/ omame 一般人(1回)-(2015/07/22(Wed) 14:22:12)
     大学付属の博物館の学芸員をしていると、妙な展示会の主催もするもので、最初法学部の教授から話を聞いたときは、冗談だろうと思ったものだ。
     何しろ、世界中から拷問具、処刑具の本物を集めて展示しようというのだ。
     言い出しっぺが、そういう趣味のあるレズビアン教授だと聞いて、なるほど、とは思ったが。
     その教授はハバーマス玲奈というドイツ人とのハーフで、三十前の恐ろしいほどの美人だった。
     そのケの無い私だって、二人きりで研究室にいて、真正面から見つめられると胸がドキドキするくらい。
    「これは……」
     教授は台の上に置かれた巨大なノコギリ二つを前に、潤んだ目をして言った。
    「何に使うかわかる?」
    「木を切るんですか?」
    「これは拷問具よ、どう使うかってことを聴いてるの」
    「全然、想像もつきません」
    「とびきり残酷な使い方をするの。とくに女にとって、よ」
    「わかりません」
    「これ見て」
     教授は本を開いて、古くさい版画のようなものを指さした。
     私は思わず息を飲んだ。
     逆さに縛り付けられ、Yの字にされた女の、まさにその部分にノコギリが当てられていたのだった。
    「頭が下にあるでしょ。だからどれだけ出血しても、脳は失血しないの。最後の最期まで意識は明瞭で、記録によると、胸まで切り進んでも生きて泣き叫び続けたんですって」
     私は返事も出来ず、目のやり場にも困った。
    「このノコギリはね、こっち、目が粗い方が初期の頃のものなの」
     教授はノコギリの歯に指をやり、優しくなでた。
    「これだと、あっという間に切り進んじゃって、つまらなかったんだって。それで……」
     教授はもう一つのノコギリを指さした。
    「こっちになったんだって。目が細かい分、なかなか切り進まない。出血も少ないから、存分に楽しめるの。もちろん、女にとっては、どっちが地獄か……どっちだと思う?」
     そんな……いったい何を聴くの?
    「私はこっちかな……」
     そう言って、教授は目の細かいノコギリに触れた。
    「だって、長く楽しめそうじゃない? この感触を、ア・ソ・コで……」
     切れ長の目が潤んでいた。
    「私は……」と私はやっと言った。
    「そういう趣味、ありませんから」
    「わかってるわよ。そういう趣味のない子を、徐々に仕立てるから楽しいんじゃないの」
     いったい何を?
     立ち上がろうとして、立てなかった。
     コーヒーに何か入れられた?
     意識が飛んだ。
     気がつくと、自分の胸が見えた。
     脚も。
     全裸でYの字に縛り付けられていた。
    「気がついた?」
     教授も全裸で私の前に立っていた。
    「な、何をするんですか?」
    「大丈夫よ、まだ殺しはしないから。ただ、あなたのような綺麗な子を一度オモチャにしてみたかったの」
     教授の指が、私の……
    「可愛いわ。綺麗ね。処女?」
     答えない。
     指が優しく嬲りだした。
    「処女じゃないわね、この感じ方は」
     悔しいけど、声が漏れる。
    「声出しても大丈夫よ。完全防音のSMホテルだから」
     悔しい、悔しい、悔しい。
     なんで感じてしまうの?
    「駄目よ、まだ逝っちゃ」
     指が離れ、安堵と、それとは別の未練が……
     教授はその指を愛おしそうに舐める……
    「美味しいわ」
     そう言って、その口で……
     違う……これまで味わったどの口とも……
     女の唇、女の舌……
     嫌悪感が次第に消え、快楽だけが……
     目の前には教授の草むらが匂い立つように……嫌悪と吐き気と、救いようのない快楽……
     何度も何度も絶頂に至らせられ、もう気が狂うかと思ったとき、もう一人の気配に気付いた。
    「あなたに最期に選ばせてあげる。どっちのノコギリがいい?」
     ベッドの上には、研究室で見せられたノコギリが二つ、無造作に置かれてあった。
     もう一人の全裸の女がニヤリと笑った。
    「このノコギリは二人で使うものなの。この拘束台も良く出来てるでしょ。本当は排泄プレイにつかうものなんだけど、血をそのまま流せるからね。さ、どっち?」
     恐怖に凍り付いた。
    「やっぱり目の細かい方よね。たっぷり楽しめるわ」
    「止めて、止めて下さい」
    「そうそう、それそれ、この恐怖に歪んだ目が良いの。一度試してみたかったの。返り血を浴びてもいいように、こうやって裸になって、あなたが目を覚ますのをまってたの。じゃ、もう結論は出たってことでいいわね」
     教授は女と目交ぜをしてノコギリを持ち上げ、私の脚に通した。
     重く冷たい金属の感触がそこに……それだけで充分痛い。
    「記録によると、二十五人がこれで殺されてるわ。あなたは二十六人目ってことね」
    「やめて……」
     無言でノコギリが挽かれた。
     焼けるような痛みがそこに走った。
     痛みなんてものじゃない……
     叫んだ、ただひたすら。
    「痛い?」
     叫び返すしかない。
     またノコギリが動く。
    「もう、性器は真っ二つよ。どう? 痛い?」
     血が、腹から胸に流れてくる。
     痛いとか、そういう感覚じゃない。
     人間の耐えられる痛みじゃない。
    「面白くないな、もう死ぬの?」
     何度も何度もノコギリが動く。
     脊髄が縦に断ち切られ、全身がビリビリと痺れる。
     激烈な痛みが……
     耐えられない、耐えられない、
     そう思った瞬間、全てが消えた。
    「死んじゃったね。つまんないの」
     これが私の聴いた最期の声になった。

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