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Nomal possession /美優 (09/06/26(Fri) 21:30) #6001
Nomal possession /美優 (09/06/27(Sat) 20:02) #6002
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Nomal Re[1]: possession /愛美 (09/06/30(Tue) 11:22) #6019
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Nomal 感想応援 /あき (09/08/12(Wed) 00:55) #6097
│└Nomal possession 〜あき様〜 /美優 (09/08/12(Wed) 14:28) #6101
Nomal 感想 /雪の (09/08/12(Wed) 09:05) #6098
  └Nomal possession 〜雪の様〜 /美優 (09/08/12(Wed) 15:27) #6102
    └Nomal Re[3]: possession 〜美優様〜 /雪の (09/08/12(Wed) 20:18) #6105
      └Nomal possession 〜雪の様〜 /美優 (09/08/14(Fri) 00:28) #6106


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■6001 / 親階層)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(1回)-(2009/06/26(Fri) 21:30:49)
    あたしは昔から、何となく自分がおかしい事に気が付いていたと思う。












    あたしは今まで付き合ったことがあるのは2人くらい。



    恋をするたび、あたしはただただその人だけを愛して、欲した。



    愛する人に、愛しているが故に、極度の束縛や独占なんかを求めてた。



    愛してる人に、部屋にずっと閉じ込められても平気。



    愛してる人に、暴力を振るわれても平気。



    むしろ、束縛や独占なんかをされたいって、強く思ってたと思う。



    今まで付き合った人は、みんなあたしのそこが嫌で別れて、離れていった。



    その度にあたしは1ヶ月くらい泣いて、引きこもって、ただただ悲しんだ。
[ □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 6001 ] / ▼[ 6003 ]
■6002 / 1階層)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(2回)-(2009/06/27(Sat) 20:02:16)
    リンゴーン・・・リンゴーン・・・・・・・・・





    終礼が終わると同時に、学校中に鈍い鐘の音が鳴り響いた。
    学校が終わった合図だ。















    豊かな自然の中に、ひっそりたたずむ白を基調とした立派な校舎。


    『黒百合女学院』。男子禁制の、女の園。


    全寮制で男性は教師にも生徒にもいない、ただただ女ばかりがいる学校である。
    偏差値も高く、大会でもほとんど上位を占める有名校。
    中高大一貫校で、密かに秘め事のように、山や海に囲まれた場所にあった。


    体育祭や文化祭、卒業式や入学式くらいでしか親には会えない。
    バスや電車も、1日に2本くらいしか通らないような場所である。
    行事ではるばる来た生徒の親は、学校の近くにある高級感溢れたホテルに泊まるのだ。









    そんな金持ち学校の高等部1年薔薇組に、あたしはいた。
    あたし・・・・・天音梨乃。15歳。今年高等部にあがったばかりだ。
    といっても、大体が中学生の頃から一緒にいる人ばかりだから、大した変化はないけど。





    「りーの!」





    ここの学校の制服である黒いシャツ、白い赤のラインが入ったスカート。
    胸元に高等部の証である赤いリボンと、金のバッジを留めた女の子がやって来た。



    彼女は北野美空。中等部の頃に知り合った友達だ。
    今は生憎、あたし隣の百合組になってしまったけど、中学校3年間はずっと、一緒なクラスだった。


    茶髪の腰までのロングヘアーをなびかせて走ってきて、あたしに抱きついた。
    それだけであたし達には視線が集まる。


    可愛らしい容姿と性格を持ち合わせた美空は、なんだかんだ結構な人気者。モテるし。



    女子校だとやはり、同性愛は生まれる物で、逆に男性と付き合っている生徒の方が珍しい。寧ろ引かれるかもしれない。







    「ねえ、帰ろうよ、梨乃」




    「うん、帰ろっか」






    彼女とはルームメイト。寮の部屋が一緒で、仲もいいため、毎日一緒に登下校をする。決して恋人ではない。



    そもそも、この子にはちゃんと、高等部2年菫組にいる恋人が存在する。
    あたしにはいないけど・・・・・・・・。
    最近は恋人である先輩と一緒に帰っていたから、久ぶりにあたしと帰る。


    何でも、先輩が部活で残らなければならないらしい。
    先輩は陸上部の長距離走選手。毎回お馴染みのエース。大会も近いし、練習に毎日遅くまで励んでいる。
    だからあたしと帰るらしい。


    先輩とは知り合いだけど、性格がサバサバしてて明るいし、いい人だ。
    先輩もあたしの事を知っているし、誤解される事もない。














    校舎の玄関からのびる、舗装された白い大理石の道を5分ほど歩くと、寮に着く。



    寮は3つあって、それぞれがある一定の距離を保って並んでいる。
    中等部は『向日葵』。高等部は『紫陽花』。大学は『シクラメン』という名前だ。
    この学校の創立者である人が花が大好きで、クラスや寮の名前も花の名前。
    花畑も敷地内に2ヶ所あり、鮮やかで綺麗な花がたくさん咲く。

[ 親 6001 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 6002 ] / ▼[ 6006 ]
■6003 / 2階層)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(3回)-(2009/06/27(Sat) 21:44:14)
    あたしと美空の部屋は、3階あるうちの2階にある。
    2階の1番奥だ。



    寮の部屋は全室大きい。快適だ。
    冷暖房がついているし、小さなキッチンもあるし、テレビや冷蔵庫なんかも揃ってる。
    本棚や机、ベッドもあって、流石お金持ち校だななんて思った時期もあった。
    が、今は慣れてしまって普通になってしまっている。








    ガチャリ、とあたしの持っている銀の鍵で、部屋の鍵を開ける。
    あたしの持っている、っていっても、美空も同じものを持っている。
    合鍵、というやつだ。





    美空は入るなり、涼しくしておいた部屋のベッドに飛び乗った。
    あたしはそんな彼女を見つつ、制服から私服に着替えた。


    クローゼットも1人ずつあるので、自分のクローゼットを開けて、白いワンピースと、黒い白いレース付きのレギンスに着替える。


    いつの間にか美空も着替えていた。
    美空は黒いサマーセーターにジーンズだ。髪の毛をピンクのシュシュで上でまとめている。
    今から先輩に会いに行くね、と行って、満面の笑顔で部屋を小走りで出て行く。














    1人になってしまったあたしは、特に空腹でもなく。
    1階にある食堂で夕食も摂らずに、外の空気を吸いに、薄暗い7時前の外に出た。





    みんなは夕食を食べたり、部屋にいる頃だ。部屋のほとんどに明かりが付いている。




    あたしも美空しか友達がいるわけでもない。他にも友達がいる。
    けど、なぜかそういう気分にならなかったのだ。
    食堂に行けば、部屋に行けば、確実に最低でも1人は会える。








    何となく今夜は森に近付きたくなって、ちょっと道を外れて森側に行った。
    やっぱり、暗闇に包まれた森は、昼間の森とは違って見える。怖さが倍増する。
    でも、なぜか今日は近付きたかった。








    「何してるの?」













    いつの間にか暗くなっていた背後から、ハスキーな声がする。
    知らない声だから、知り合いじゃあないみたいだ。

[ 親 6001 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 6003 ] / ▼[ 6008 ]
■6006 / 3階層)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(4回)-(2009/06/28(Sun) 17:12:34)
    後ろをばっと、勢いよく振り返ると、微笑んでいる人と目が合った。
    やっぱり見たことがない顔で、制服じゃないからどこの人かも分からない。
    ただ、教師ではないだろう、という事は頭の片隅で思った。
    何しろ、今までそんな教師は見たことないからだが、顔が整っていて分からない。





    「えーっと、驚かせちゃったかな?ゴメンね、いきなり声かけてさ?」





    あはは、もう馬鹿だなって苦笑いしながら頭の後ろで手を組む、謎の人。
    あたしはどうやら、酷く驚いた顔をしていたらしい。




    にしても、綺麗な顔だ・・・可愛くはない、どっちかというと、美人でカッコイイ感じの人だ。



    身長もあたしより10cmくらいは高そうだし、すらっとしていてモデルみたいだ。
    ボーイッシュに短く切ってある黒髪と、茶色っぽい目が特に惹きつける。
    白いTシャツと黒いジャージのズボンを着て、にっこりと笑ってくれていた。





    「君、高等部1年薔薇組の、天音さん、でしょ?天音梨乃だっけ」




    ああ、そうだという感じで名前を当てられた。しかも、クラスまでも。
    相手はあたしの事を、少なからず知っている人らしいみたいだ。




    「・・・・はい、そうですけど・・・・・・?」




    あたしのほうは相手の事を何も分かっていなくて、ちょっと疑っている感じになってしまった。警戒心丸出しだ。


    失礼だよね、と思ったが、相手は笑顔を崩さない。気にしてはないらしい。
    ポーカーフェイスか、とも思ったが、そこまで疑っては本当に失礼だ。




    「お、喋ってくれたね。てっきり、喋ってくれないかと思ってたよ」



    「・・・・・・すみません、もともと無口なので」



    「そうなんだ?ああ、もう行かなくちゃ。早く寮に戻りなさい、『あの事』を知らない訳じゃあないよね?」





    バイバイ、と手を数回振って、駆け足であっという間に闇に消えた。
    一体、何だったのか、誰だったのか。




    『あの事』というのを知っている限り、ここの学校の関係者らしい。



    今から約5年前・・・・・とある後輩に恋した女生徒が振られたショックで、ここの森のどこかに隠れてしまった、という話の事だ。
    だが、今まで見たことはないし、周りにもそういう人はいない。


    しかし、3年ほど前に、夜遅くに数人で森の近くで花火をしていた先輩が、その人を見かけたらしい。
    その人は、白い狐のお面をつけ、紫の綺麗な男物の着物を着ていたらしい。
    顔も声も分からなかったが、先輩が驚いて必死で逃げた後、どこを探してもそんな人は現れなかった。
    幻覚でも、夢でもない、とすると、本当にいるのかもしれない。



[ 親 6001 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 6006 ] / ▼[ 6009 ]
■6008 / 4階層)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(5回)-(2009/06/28(Sun) 17:33:28)
    あたしはその人の言うとおり、その後寮に戻った。
    食事は温かいきつねうどんを食べて戻ったが、まだあたしは1人だった。
    美空はまだ先輩のところにいるらしい、もしかしたら朝帰りかもしれない。


    一応、各寮にも監督の人がついているが、裏から入れば分からないのだ。
    それに深夜や早朝だと、流石に監督の人も睡眠中であるため、余計にばれない。
    多分、美空もそこを狙って帰ってくるはずだ・・・・ヤって帰ってくるだろう。



    いつ帰ってくるのか分からないあたしは、シャワーを浴びてパジャマに着替え、宿題をやり始めた。
    今日は古文と、歴史の宿題が出ている上に、予習もしている。
    やり終えた時には既に、時計は深夜の12時を指していた。
    森の近くで随分といたらしいが、それでも2時間くらいは勉強していただろう。



    明日の準備を済ませ、白いふかふかのベッドに潜り込む。
    電気を消して、近くのテーブルに置いてあるランプを付けた。この綺麗で優しい、温かな光が好きだ。
    これは確か、7歳年上の従兄弟がイギリスに留学し、一時帰国した時のお土産だ。




    目をつぶると、やはりそれなりに疲れているのか、眠たくなってきた・・・。
    あの人、誰なんだろう・・・・気になるなあ・・・・・・・。







    「もう、寝ちゃったか」







    「っ!?」







    ふと誰かの声がして、慌てて飛び起きた。侵入者ならば、あたしの身が危ない。






    しかし、その人を見た途端、胸を撫で下ろす事になった・・・・さっきの人だったのだ。
    どうやって入り込んだのかは分からないが、部屋の前にプレートが各室ある。
    それを見れば、簡単にあたしの部屋が分かってしまうのだ。





    「さっき見たときから、気になっちゃってさ。お話したいな」





    「いい・・・・ですけど・・・・・」







    あたしは電気を付けてランプを消し、その人と自分に冷たい紅茶を淹れた。
    コップを受け取ると、その人はありがとう、と言ってちょっと飲んだ。
    そして、美味しい!上手なんだね、と褒めてくれたのが無性に嬉しかった。
    何しろあたしが選んだ茶葉で、あたしが淹れた紅茶なのだ。嬉しいのは当たり前だ。






    「あれ?もう1人・・・・美空だっけ?どうしたの?」



    「ああ・・・・・恋人の先輩の所です」



    「へえ、じゃあ今頃ヤってんのかな?」



    「そうかもしれませんね・・・・・」



    「ははっ、そんな呆れた顔しなくてもいいじゃんか」



    「・・・・・してます?」



    「うん、してたよ。君はいないの?恋人」



    「いないですよ、好きな人さえ、気になる人さえいませんから」



    「そうなんだ?勿体無いなあ、こんな美人だから、何人かは狙ってるだろうに」



    「告白はされますが、その気になれないので、お断りさせて頂いてるんです」



    「じゃあ、一緒だね。告白されるけど、相手にしないところ、とか」







    こんな他愛ない話を1時間ほどすると、その人はまたも名前さえ明かさず、笑って帰って行った。



[ 親 6001 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 6008 ] / ▼[ 6016 ]
■6009 / 5階層)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(6回)-(2009/06/28(Sun) 17:46:19)
    朝、あらかじめ7時にセットしておいた時計が鳴り、目が覚めた。
    隣のベッドにはやっぱり、いつ帰ってきたのか美空が眠っている。
    毎回の事だが、溜息をつくとあたしが彼女を揺さぶり起こす。




    「起きて、美空。朝だよ、遅れるよ」



    「んぅ・・・・・?梨乃ぉ?おはよぉー」





    寝ぼけた感じで起きた美空を顔を洗いに行かせて、制服に着替えると食堂に向かった。
    勿論、彼女の首のキスマークを絆創膏で隠すことも手伝ってあげた。








    にぎやかな朝の食堂でサンドイッチとスープ、サラダとフルーツという朝食を2人とも済ませ、一旦部屋に戻って歯を磨いた。
    そして、やっと学校に登校するのだ。朝の8時45分までに行けば、遅刻ではない。







    「おはよっ、梨乃姫☆」








    教室に入るなり、ぽん、と肩を叩いて挨拶をしてくる、朝からハイテンションなクラスメイト。
    あたしは低血圧なため、朝にはめっぽう弱いのだ。羨ましく感じてくる。




    彼女もまた、中等部の頃からの友達の1人。朝日香蓮。バドミントンの実力が素晴らしい人である。






    「まーたテンション低いよー?」



    「しょうがないでしょ、梨乃は低血圧なんだからね」



    「あ、そうだよねー」







    隣のクラスメイトが、ぐったりしてしまっているあたしの代わりに答えてくれる。
    彼女もまた、バスケットボール界では有名な方だ。








    あたしは、その日1日ずっと、あの人の事が頭から離れなかった。

[ 親 6001 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 6009 ] / ▼[ 6021 ]
■6016 / 6階層)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(7回)-(2009/06/29(Mon) 14:16:55)
    また今日も平凡な授業を終えてしまって、今は掃除時間。
    自分の掃除場所である、校舎の中央部の階段をほうきで掃いている最中だ。



    結局、昼休憩に少しは探したり聞いてみたりしたが、それらしき人はいなかった。
    幽霊でもないんだし、ここの関係者のはずだ。
    敷地内には、生徒と教師の持つカードが無いと入れないからでもある。
    ただでさえ、セキュリティー面については厳しいのに、不法侵入出切る訳がない。
    入ったとすれば、学校全体で問題になってしまうだろう。




    そうごちゃごちゃ考えていると、一緒に掃除している香蓮に、ちりとりを教室から借りてきてくれと頼まれた。
    どうやら、他の生徒にちりとりを貸してしまったらしい。
    仕方がないので、あたしが取りに行く事になった。





    教室に行くと、すでにいくつかの机は後ろにあったのが、綺麗に整頓されて戻されていた。
    ちょうどちりとりを片付けようとしていたクラスメイトに借り、急いで階段のところへと向かう。
    早くしないと、終礼が遅れてしまうからだ。




    ちょうど廊下を曲がろうとした時に、誰かにぶつかってしまった。




    「あっ、ごめんね、大丈夫!?」




    尻餅をついてしまったあたしに、綺麗な色白の手が差し出される。





    「あ、ありがとうございます・・・・・・あ・・・・・・」




    あたしが顔を見てあ、と驚くのと同時に、相手も目を少しだけ見開いた。














    ・・・・・・・・・・・昨日の、あの人だ・・・・・・・・・・・・・!!!














    「あれ、梨乃かあ。昨日ぶりだね」





    あたしの体を簡単に引き起こすと、あの人はハハハッと笑った。
    相変わらずの美形だな、なんて見とれていると、あたしの手元をその人が見ている事に気がついた。




    「掃除中だったんだね、邪魔しちゃった?」



    「いえ・・・・・今から向かうところでしたし、別に・・・・・」



    「ならいいんだけど・・・・あ、いけない。急がなくちゃ、じゃあね、梨乃」



    「あのっ・・・・・・・・・・・・・・!?」






    あたしは、名前を聞こうとしていたのに、それは叶わなかった。










    「ん・・・・・ぅ、ふ・・・・・・・・!」














    ・・・・・その人がたまたま持っていた黄色いファイルで隠しつつ、キスをされているから。
    身長の差が結構あって、あたしが背伸びしないと口に届かない。
    いきなりの事と、ファーストキスという事もあって、上手く呼吸ができない。
    ちょっと苦しくなって、顔は熱いし、何か泣けてきて涙が溜まる。
    幸い、人がいなかったのが唯一の救いだ。





    「っ、はぁっ・・・・・・・・・・!」







    やっと離して貰えたあたしは、廊下に座り込んでしまった。力が入らない。




    「可愛いね、これなら無理もないかな・・・・・じゃあね、また会うと思うよ」




    意味深な言葉を残して、早くも消えてしまった。



















    しばらくしてから立てたあたしは、友達にお腹が痛くて、トイレに行っていたんだなんて嘘をつき、掃除を済ませた。









    その後の終礼も下校途中も、あの人の事で頭がいっぱいだった。



[ 親 6001 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 6016 ] / ▼[ 6022 ]
■6021 / 7階層)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(9回)-(2009/06/30(Tue) 19:07:45)
    1人で寮に戻ると、今日も1人だ。美空は今日もいない。
    今日はデートではなく、部活のコンクールが近くなってきたため、練習が入ったのだ。
    美空は合唱部で、今はソプラノを担当しているらしい。歌もかなり上手く、校内のイベントで優勝経験もある。




    食堂で少し早めの夕食を食べようと、ボヘミアンなワンピースに着替えて食堂に向かった。


    カウンターでおばさんにハンバーグ定食を頼むと、運ばれて来るまで、窓際の白い4人がけのテーブルで待つ。
    生徒も段々増えてきたようで、かなりにぎやかになってきた。





    「梨乃さん。こちら、よろしいかしら?」





    窓の外の暗くなってきた夕暮れをぼーっと見ていると、1人の人が話し掛けてきた。
    美空と同じ、高等部1年百合組で生徒会の書記でもある、大崎さん・・・大崎ミチルだ。
    イギリス人の母と、日本人の父のハーフだという彼女は、輝かしいブロンドの名古屋巻きを揺らしてやって来た。
    彼女の綺麗な碧眼と目が合う。顔立ちがやはり美しいのである。





    「・・・・・・・いいけど?」



    「ありがとうございますわ、梨乃さん。今日は1人でいらっしゃるの?」



    「美空は部活で。1人なんです」



    「まあ、奇遇ですわね!わたくしも1人ですの。今日は、岬が部活ですのよ」





    岬、というのは、彼女の幼馴染であるという副生徒会長にして、高等部2年桜組の新野岬のことだ。
    彼女は吹奏楽部で、やはりコンクールが近いのだという。




    前々からだが、このミチルという同級生は、あたしに関心があるらしい。
    何かとしょっちゅう話しかけてくるのだ。・・・・・美空がいないときだけ。





[ 親 6001 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 6021 ] / ▼[ 6023 ]
■6022 / 8階層)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(10回)-(2009/06/30(Tue) 20:07:58)
    しばらく適当に相手の話を流しているうちに、2人分の夕食が運ばれてきた。
    あたしはハンバーグ定食・・・まあありがちな、ハンバーグとご飯、野菜スープとサラダ、デザートにパンナコッタ。そしてカフェオレ。


    ミチルの夕食は、これまた同じハンバーグ定食。唯一異なるのは、あたしが選ばなかったパンのところだけ。





    「まあ、またもや奇遇ですわ!ここまでご一緒なんて・・・ハンバーグはお好き?」



    「・・・・・ええ、まあ、好物ですが」



    「嬉しいですわ、わたくしもちいさい頃から好物なんですのよ」



    「あたしも好きですよ」





    そういうと、ミチルはまぁ、と小さく言って、頬を赤らめた。何を照れているのかさっぱりだ。


    にしても、大崎といえば有名な会社の名前。彼女はそこの会社の次女なんだとか。
    ちなみに、姉が1人いるらしい。詳しくは知らないが。


    今日はミチルは、淡いピンク色の胸元が開いたフリル付きのチュニックに、白いこれまたフリルのミニスカート。
    右手の銀のバングルが時折、彼女の動きに合わせて揺れる。





    「にしてもですわよ、梨乃さんは相変わらずお美しいですわ」



    「・・・・・・はぁ・・・・・貴女の方が見目麗しいと思いますが」



    「あら、謙虚ですのね。でも、結構いますわよ?梨乃さんを狙ってらっしゃる方」



    「そうですか?てっきり、美空への視線かと思って」



    「それもあるのでしょうけど、彼女の場合は有名なカップルではありませんか。
     何せ、あの先輩ですもの」





    そう、美空の恋人は、『ミス・黒百合』。成績優秀、眉目秀麗、まさに才色兼備の生徒に贈られる称号の持ち主だったのだ。
    確か、弦楽器が得意で、理数系では教師も驚くほどの天才ぶりなんだとか。
    まあ確かに、成績だっていいらしいし、見た目も美しい。
    というか、この学校は美人の割合が高い事でも有名なのだ。





    「そういえば、梨乃さん。今日はこれから用事はありまして?」



    「いえ、特には」



    「ならば、わたくしの部屋へ来て下さらないかしら?寂しいんですのよ」



    「あたしはいいですけど・・・・でも、ルームメイトは?」



    「大丈夫ですわ、緊急の用事だとかで、一時帰宅していますの」





    彼女のルームメイトは、あたしの隣の席にいる早坂瑠衣。バスケットボール部。
    それなりの容姿と、抜群の運動神経で、運動部活では重宝されている。
    たまに他の部活の大会にも出ているような、忙しくて活発な人だ。





    「先生によると、叔父様が交通事故にあってしまわれたんですって」



    「よくなるといいんですがね」



    「そうですわね・・・・・・心配ですわ。梨乃さん、わたくし部屋でお待ちしておりますわ」





    そういうと、彼女は最後のパンナコッタを口に入れて、お盆を持って立ち上がる。
    典型的なお嬢様だが、随分と早飯なのだ。








    あたしは正直面倒臭かったし、また今夜もあの人に会えるかもしれない、と淡い期待を抱いていた。
    が、結局気まずい事になると思われ、ミチルの部屋に行く事にした。

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▲[ 6022 ] / ▼[ 6024 ]
■6023 / 9階層)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(11回)-(2009/06/30(Tue) 20:32:44)
    彼女達・・・・・ミチルと瑠衣の部屋は、あたし達の1階上である3階の中央部。
    シャワーを軽く浴びてから向かった。




    コンコン・・・・・と控えめなロックをすると、ドアの隣のスピーカーからどうぞ、と声がする。
    室内の電話を取って話せば、外のスピーカーから聞こえる仕組みなのだ。





    「お待ちしておりましたわ、さあ、座って」





    ガチャリとドアを開けてはいると、ミチルが茶色い円形のテーブルにケーキを並べて待っていた。
    横には、温かい湯気を立てる紅茶も置いてある。





    「お気遣いありがとう」



    「どういたしまして。昨日、わたくしが突然思い立って作ったケーキですの。味は保障いたしませんわ」





    白い生クリームと、赤い苺のショートケーキ。上には蝶々型の飴細工が乗っている。これはまずいことはないだろう。




    あたしが椅子に座ると、ミチルはその横の方に嬉しそうに座ってきた。
    向かいも空いているのに、わざわざ椅子を移動させて、だ。
    彼女がつけている甘い香水が鼻をくすぐる。





    「いただきます」





    そういって1口食べてみると、やはり期待を裏切らず、美味しいケーキだ。





    「美味しいですね・・・!」



    「まあ、ありがとうございます。心配でしたの、甘い物はお好きか、尋ねるべきでしたわ」



    「甘い物は好きですよ」





    ちょっと機嫌を良くして、あっという間に全部食べてしまった。本当に美味しい、プロ顔負けの味だったのだ。
    思い立って作ったにしては、とても上手い。





    「あら、ここにクリームがついてますわよ・・・・・・」






















    ぺろっ






















    いきなり、右側の頬に温かくて柔らかな感触があった。
    ・・・・・・・ミチルがクリームを舐め取ったのだ。





    「すみません、近くに拭くものがなくて」





    そういう割には、近くの棚にティッシュが箱ごと置いてある。
    まあいいか、と割り切り、ありがとう、と照れつつもお礼を言った。





    「・・・・・っ!!!!!」





    何故かそれだけで赤く赤く顔を染め上げたミチルは、俯いてしまった。
    つくづく不思議で面白い人だ。





    「そ、そうですわ!梨乃さんの髪って、茶髪じゃないですか。染めてらっしゃるの?」





    そう、あたしの髪は生まれつきの茶髪で、目も茶色っぽい。よく不良みたく、染めていると思われがちだ。





    「いえ、生まれつきで・・・・・父親の遺伝なもので」



    「あら、そうでしたの。ずっと気になってしょうがありませんでしたわ」





    ふふふ、と口に手を当てて笑うミチルは、綺麗と言うよりも可愛い。





    「まあ、狙っている方が多い、というのも納得ですわ・・・・すらっとしてらっしゃるし・・・・・」





    そういって、つぅっと指であたしの横腹をなぞり上げた。
    つい体がびくり、と震える。





    「敏感ですのね・・・・・・ますます可愛らしい方ですわ、開発して差し上げたい位・・・・」





    ふふふ、とさっきとは同じような笑い方だが、全く違う。今度は怪しい笑いだ。
    あたしは逃げようか、と思ったが、体がいう事を聞かない。
    まるで、あたしが受け入れるかのようになってしまった。





    「胸も結構大きいですわね・・・・・以前にお風呂にご一緒した時に思いましたわ」



    「んぅっ・・・・・・・!?」





    そういうと、いきなり胸を揉んで来た。最悪な事に、薄着なので余計リアルに感じてしまう。
    つい、声が漏れてしまった。ミチルはそれを聞いて、嬉しそうにしている。





    「やだっ・・・・・・・ミチル、やめて・・・・・・ひあ・・・・/////」



    「何と可愛らしくて素敵なお声とお顔なのでしょう。興奮してしまいますわよ?」





    あたしは力が抜け、椅子の背もたれにすがっていることしかできない。





    「実は、ずっとわたくしは梨乃さんを狙っていたんです。好きですわ・・・・」




















    ・・・・・・・・・・なぜ、このときに・・・・・・・・・・










    得体の知れない、あの人が脳裏を掠めたのか・・・・・・・・・・・・・・




















    あたしは、もうミチルのなすがままに、処女を奪われるのだろうか・・・・?







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▲[ 6023 ] / ▼[ 6027 ] ▼[ 6037 ]
■6024 / 10階層)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(12回)-(2009/06/30(Tue) 20:44:49)
    ミチルは、キスこそはしなかったものの、服の中に上から手を入れてきた。
    そして、中で器用にもあたしのブラジャーのホックを外してしまう。



    ミチルの冷たい指が肌に触れ、それだけでびくん、と肩を揺らしてしまう。
    温かい肌との温度差のせいである。





    「ここもきちんと感じさせて差しあげますわね」





    くりくりと乳首を両方いっぺんに弄られ、喘ぎ声が止まらない。





    「やぁぁっ、ミチ、んんん・・・・・・っ!!!」





    口を押さえようと弱々しく手を胸元まで何とか挙げるが、押さえ込まれてしまう。



















    誰か、助けて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!




















    半泣きしながら、ぎゅっと目を瞑って心の中で助けを必死に叫んだ。



















    「強姦は感心しないな、大崎ミチルさん?」




















    え・・・・・・・・。















    いつの間にか、ドアを蹴破ってあの人が入ってきていた。
    頑丈なドアを蹴破るとは、どういう力の持ち主なのか・・・・かなりの力だ。





    「なんですの、無礼者ですわ」



    「無礼者は君でしょ。嫌がってるのが分からない?強姦は犯罪、ね」





    そういって、驚いて何も言えないあたしの乱れた服を整えて、軽々とお姫様抱っこをした。





    「ちょ、ちょっと・・・・・・・・・・!?」



    「じゃあ、おじゃましました。ドアは弁償しておくから安心して」





    そういって、怒りを少しこめた笑顔を残し、あたしを抱えたその人は早足で過ぎ去った。






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▲[ 6024 ] / ▼[ 6029 ]
■6027 / 11階層)  NO TITLE
□投稿者/ ゆう 一般人(1回)-(2009/06/30(Tue) 23:51:28)
    続きが気になります(>_<)

    (携帯)
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▲[ 6027 ] / 返信無し
■6029 / 12階層)  possession〜ゆう様〜
□投稿者/ 美優 一般人(13回)-(2009/07/01(Wed) 17:23:45)
    またもやメッセージを残して下さり、ありがとうございます。


    私的に、え?まさか、って感じにしたかったので、新しくお嬢様を出してみました(苦笑)


    これからも頑張って、梨乃達のお話を書いていきたいと思います。
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▲[ 6024 ] / ▼[ 6038 ]
■6037 / 11階層)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(14回)-(2009/07/02(Thu) 15:47:45)
    あたしを抱えたまま、怒った顔で終始無言だった。
    まだ美空が帰っていない、誰もいなかったあたしの部屋に入り、ベッドに投げるように降ろした。





    「あ、あの・・・・・・・・えと・・・・・?」





    あたしをベッドに寝かせた後、その人はあたしの顔の横に両手を付いて、怒った顔のまま見下ろしてくる。


    あたしは、その見下ろした顔につい、ドキンと胸が高まった。





    「あ・・・・・え、あの・・・・・・・っ・・・・!」



    「・・・・・・高嶺涼」



    「って、え・・・・・・っ?」



    「名前。知りたいって顔してたじゃない」



    「あ、ありがとう、ございます・・・・・・・・?」






    なぜ、このタイミングで名乗るのだろうか。






    「あの、涼さ「涼って呼んでよ」りょ、涼・・・・・/////」






    あたしの言葉を遮って、耳元で吐息混じりに囁く、涼さ・・・・・涼。
    年上そうだから涼『さん』って呼ぼうとしたけど、納得してくれないらしい。






    「・・・・・ふふ、今日はその真っ赤な顔に免じて許してあげる」






    ようやく柔らかい微笑んだ顔と雰囲気になって、涼はベッドに腰掛けた。






    「今日はありがとう、ございました」



    「気にしないで。前からあの子は危ない感じだったからさ。気をつけてね」



    「はい・・・・・・・」



    「うん。他の人も狙ってると思うから、十分に気をつけてな」






    そういい残し、あたしの部屋を去った。




















































    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちゅ。








    ただし、キスをあたしの額に軽くしてから・・・・。
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▲[ 6037 ] / ▼[ 6039 ]
■6038 / 12階層)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(15回)-(2009/07/02(Thu) 20:48:03)
    ドキリ、と鼓動が不安な心を掻き立てる。


















    今は、6限目の体育の時間。みんな綺麗な青のジャージに着替えて、体育館に集まっている。




    何で、今日に限って百合組と合同で体育なんだろう・・・・・・・。




    あれからミチルには出会ってない。けど、合同という事は会うことになってもおかしくない。
    何でもないように、いつも通りに振舞わなければ、かえって怪しまれる。






    「あ、梨乃っ♪昨日はゴメンね!また先輩の部屋に行ってて・・・・」



    「いいよ、気にしてない」






    子犬のように走り寄って、美空があたしの腕に自分の腕を絡ませる。
    尻尾を犬がブンブン振っているような感じだ。
    結局、彼女は部活の後に先輩の部屋に行ったらしく、朝まで帰ってこなかったのだ。









    先生がちょうどそのとき、ピーーーッ、とホイッスルを吹いた。みんなで先生の所に走り寄る。




    静宮先生という先生で、それなりに好印象を生徒にも教師にも与えている。
    白い紫の蝶がペイントされたTシャツと、青いジャージのズボン。
    腰まで伸びた黒髪が揺れて、ナイスバディーな先生の綺麗さを際立たせる。
    実際、何人も狙っているんだとか。






    「はい、今日は薔薇組と百合組の合同授業にして頂きました!いきなりでごめんね?」






    そうやって、首を少し左に傾けてうるっとした目で謝る静宮先生に、何人かの生徒が顔を紅潮させた。
    静宮先生は、無意識なのが質が悪い。可愛らしさと色気を常に振りまいているのだ。




    先生によると、今日は百合組が本来習うはずだった歴史の先生が、肺炎で急きょ早退したんだそうだ。
    そのため、体育の授業にしてもらったらしい。




    2クラス、といえば、全員で80人くらいだ。
    そもそも学園の人数も多く、部活の種類もあるため、とても大きな体育館が2つある。
    あたし達がいるのは、そのうちの1つ。校舎側の体育館だ。
    別に80人いたって困らない。











    「あ・・・・・・・・・・・・・・・」










    先生が指示したとおり、ドッチボールの準備をしていると、コートに入った瞬間に不幸が起こった。
    ・・・・・・・・大崎ミチルだ。彼女と鉢合わせしてしまった。






    「ごきげんよう、梨乃さん」



    「ごきげんよう・・・ミチル」



    「今日は敵同士ですわね。お互い頑張りましょう」



    「ええ、頑張りましょう。健闘を祈ります」






    ミチルが何も無かったかのように笑顔で話すのが、唯一の救いだった。
    あたしもつられて、微笑んで答える。



    今日は薔薇組対百合組のクラス対抗戦だ。
    ミチルや美空に負けないように、頑張らなければ・・・・。
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▲[ 6038 ] / ▼[ 6040 ]
■6039 / 13階層)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(16回)-(2009/07/02(Thu) 21:19:24)
    「じゃあ始めてね!よーい・・・・・・・・・スタートッッ!!!!」





    静宮先生が、ジャンプボールをする瑠衣と美空の間で、高く柔らかい黄色のボールを上げる。



    ボールを先に自分のチームへと叩いたのは、やはり運動神経のいい瑠衣。
    弾んであたしの隣の子の手に渡った。



    その子がえい、と投げたボールは、見事にミチルにキャッチされてしまった。
    意外と彼女もやるのだ。
















    しばらくボールの投げあいが繰り広げられ、薔薇組は15人、百合組は19人の外野が出ていた。





    今、ボールを持っているのはミチル。彼女は1度も当たっていない。
    そして、狙いを定めてこちらに投げてきた。































    ・・・・・・・あたしの方に飛んできたから、避けた・・・・・つもりだった。






    「やっ、あぁっ!」






    顔に当たりそうだったが、何とか両腕でガードして防いだ。






    ボールは近くにいた瑠衣の足元に転がっていったが、なぜか取らない。



    疑問に思ってそっと見ると、まわりの人の大部分が顔を赤らめたりとか、口元を押さえている。






    「・・・・・・?私がどうかしましたか、先生」






    あまりにもあたしをじろじろ見るので、先生につい聞いてしまった。






    「い、いえ!!!別に何もしてないわよ!!!」






    慌てて先生は言って、じゃあ外野に、って言っていた。
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▲[ 6039 ] / ▼[ 6044 ]
■6040 / 14階層)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(17回)-(2009/07/02(Thu) 21:37:12)
    その後、何もなく普通に進んで、薔薇組が勝った。







    授業が終わり、自分たちの教室に戻って着替えていると、ちょうど上を脱いでシャツを着ているあたしに、話しかけられた。






    「ねえ、梨乃・・・・・・」






    クラスメイトの南城由貴と、美濃幸夜だった。去年くらいからクラスが一緒で、ある程度仲がいい。
    その2人が、いきなり話しかけてきた。






    「何?どうかしたの?」



    「あ、あのね・・・・・?今日の放課後にちょっといいかな」



    「予定もないし、いいけど。どこに?」



    「理科室の準備室に来てくれない?待ってるから、夕方5時に」



    「分かった」




















    まさか、コレがまたああなるとは、思いもせずに。
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▲[ 6040 ] / ▼[ 6046 ] ▼[ 6049 ]
■6044 / 15階層)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(18回)-(2009/07/03(Fri) 18:53:13)
    放課後、終わりのチャイムが鳴り響くと、あたしは図書室で借りていた小説を返却し、理科室へと向かった。


    理科室は、中等部と高等部校舎の接合部あたり、1階に位置する。
    準備室はというと、1階の理科室の隣に隣接しているが、滅多に人が来ないのだ。
    授業中でも、担当教師しか主に入らない。教師さえあまり入らないらしい。






    「由貴、美夜・・・・・・いるの?」






    カーテンが閉められた、薄暗い準備室。やっぱり1人で入るのは勇気がいる。
    何しろ、人体模型やら実験器具、いろいろなものがあるのだ。






    「あ、来た来た!」



    「ごめんね、待たせてしまった?」



    「ううん、こっちも今来たトコだし、大丈夫よ」






    2人は、窓際の使われていない大き目の机に、2人並んで座っていた。




    こうしてみると、実に2人は正反対だ。


    由貴は剣道部所属で、凛とした強気の明るい性格。肩までの黒髪と、黒い目。
    確か、勉強では物理と古文が得意なんだとか。


    一方の美夜は美術部。ほんわかした雰囲気の、マイペースで穏やかな性格だ。
    ツインテールの茶色っぽい髪と黒い目、勉強は美術と日本史が得意らしい。


    この2人は幼稚園に入る前からの幼馴染で恋人だなんて、誰が予想できよう。






    「で、話って・・・・・・?」






    あたしはなるべく早く済ませて、ここから出たかった。何だか呼吸がし辛いのだ。
    窓を閉め切っているせいだろう、湿気もすごい。






    「ああ・・・・・聞き辛いんだけど、この前高嶺って人といなかった?」



    「!?え、ああ・・・うん・・・・?」



    「この前、お姫様抱っこされて、ミチルの部屋から出て行ったのを見たの」






    唐突な由貴の質問に、美夜が説明を加えた。
    どうやら、あの日の出来事を見られてしまっていたらしいのだ。
    2人の部屋は、あの部屋と同じ階だから、見たとしても不自然ではない。






    「ねえ、あの人とどういう関係?」






    真剣な顔で問う由貴。狙っている・・・・・わけではないだろう。






    「えっと・・・・・まあ、知り合いと言うか、なんと言うか・・・・・」



    「困らせてごめんね?でも、忠告したくて」






    美夜はそうやってフォローしてくれるが、若干焦りを隠しきれていない。
    そして、忠告なんてさらりと言う。何なんだろうか。






    「ねえ、何を隠しているの?・・・・・・教えて」






    あたしがそうせまると、由貴が言いにくそうに口を開いてくれた。
    ものすごく言いたくないんだけど、と前置きしてから、小声で言った。






    「あの高嶺って人・・・・・・注意した方がいいよ」



    「え・・・・・・・・?!」






    そんな予想にもしない回答に、あたしはただただ驚いてしまった。
    涼が危険人物・・・・・・・そう言いたいのだろう。
    でも、あたしを助けてくれたりした人を、証拠もなしに疑いたくはない。






    「私のパパとママね、情報を管理する仕事をしているの、仕事については・・・詳しくはいえないんだけど・・・・・。
     とにかく、パパとママの仕事の同僚がこの前、情報を一部盗まれたの。犯人はとある裏の組織。正確な正体は分からないって言ってた。
     その組織のメンバーにね、高峰って女性がいるらしいのよ。彼女が情報を奪ったみたい・・・・・・」






    美夜がそう言い、辛そうに俯いた。
    あたしは今だに信じられなかった。確かめたかった。
    だけど、涼の連絡先は何も知らないし、いつ会えるかも分からないのが現状だ。






    「とにかく、あの人には注意して、近付かない方がいいんじゃないかな。
     どうも美夜のご両親が務めてる会社の情報曰く、結構危ない組織らしいから・・・。
     マフィアみたいに暗殺もするし、スパイや情報を流したりだとかするらしいし。そういう人達の集まった組織なんだって・・・・・」



    「でも、その人がそうとは限らないんじゃな「限られるのよ、梨乃」






    美夜が声を少し張り上げて、あたしの反論を封じ込める。






    「組織の正体や詳細はまだ掴めてないけど、何人かの人は分かっているらしいの。彼女は組織の幹部・・・・かなりの権力者らしくて・・・・」



    「彼女が動けば、会社1つ簡単に潰されるし、政治家も動くし、警察だって。そうなるかもしれない。詳しくは知らないから言い切れないけど。
     だけど、危ないよって事は、はっきりと言えるんだ」






    美夜、そして由貴が説得してくる。
    あたしは耳を塞ぎたい気持ちをこらえ、俯いていた。

















































    そして、しばらくして2人は、それじゃあ、そういうことだからと言い残して去った。









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▲[ 6044 ] / ▼[ 6047 ]
■6046 / 16階層)  NO TITLE
□投稿者/ ゆう 一般人(2回)-(2009/07/08(Wed) 12:06:22)
    美優さん
    かなり続きが気になって眠れません(笑)
    頑張って下さい!

    (携帯)
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▲[ 6046 ] / 返信無し
■6047 / 17階層)  possession〜ゆう様〜
□投稿者/ 美優 一般人(19回)-(2009/07/08(Wed) 22:05:10)
    最近忙しくて、更新できませんでした。ごめんなさい。



    そこまで気に入って頂けるなんて、身に余る光栄です。
    このお話は何も考えずに、後先考えずに突発的に書いた物でしたが・・・。
    そこまで気にしてもらえるなんて、書いて本当に良かったです。
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▲[ 6044 ] / ▼[ 6056 ]
■6049 / 16階層)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(21回)-(2009/07/08(Wed) 22:18:18)
    「・・・・・・の、梨乃!!!!!」






    美空の少し焦った声で目が覚めた。
    うっすらと目を開けると、心配そうに馬乗りになっている美空がいた。
    腹部が苦しいが、美空のその気遣いが嬉しい。






    「もう、心配したんだから!帰ってきてみれば、梨乃はボーっとしてるしっ!
     廊下では何故か美夜が泣いてて、由貴も落ち込んでるし・・・・・・しまいには梨乃がふらっと倒れて、何なのかと思うでしょ!?」



    「ご、ごめん・・・・」






    滅多に無いことに、美空が怒ったかのように涙目であたしにまくしたてる。
    それほど心配していた証に、額には冷たい濡れているタオルが置いてあった。
    近くに机の椅子が持って来てあって、どうやら座って見ていてくれたらしかった。







    そう、あたしはショックによって、貧血を起こして気絶したのだ。
    これほどダサい話はないだろう。たかが、涼の事でーーーー






    涼。その言葉と顔を思い浮かべてしまって、ずきりと胸が痛んだ。
    あの話は本当だろうかと、『また』ぐるぐると考え込んでしまう。
    ・・・・そう、あたしは昔から1人で何でも考え込んでしまう癖がある。







    「ねえ、悪いけど水をちょうだい?」



    「ああ、ここに用意してあるの。さっき冷蔵庫から取って来たから冷たいはずだよ」






    美空からボトルを受け取り、水をごくん、と3口くらい飲んだ。














    それからも心配する美空をどうにか静まらせ、シャワーを浴びてまた眠った。
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▲[ 6049 ] / ▼[ 6057 ]
■6056 / 17階層)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(22回)-(2009/07/12(Sun) 00:57:52)
    「ねえ、可笑しいでしょ」










    あたしは今、何故か森の木の幹に押し付けられている。
    ごつごつとした茶色い木の皮が背中に当たって、ちょっと痛い。
    更に今は制服なのだが、夏服で生地が薄いために木の冷たさが伝わってくる。
    持っていた黒い皮製の鞄は、足元の草むらに落ちてしまっていた。






    「涼・・・・・・さん?」






    押し付けている張本人、あたしの目の前にいる、黒いオーラを放っている涼を仰ぎ見る。





    最近会わなかったんだけど、今日校舎内で会って・・・・でもあの話のせいで、とことん涼を避けてこの通り。
    下校中にいきなり後ろから押し付けられたわけ。どうやら怒っているらしい。






    こうして見ていると、涼が危ない組織の幹部だなんて分からないし、信じられない。普通の綺麗な優しい人だ。
    でも今は殺気こそないものの、かなりの怒りを露にしている。






    「今まで無視してさ・・・・・そんなに僕が嫌い?」






    ふと焦りつつも思ったことだが、涼の一人称を今まで聞いた事がなかった。
    今初めて聞いたが、『僕』を使うらしい。
    あたしの顎を掴んで、自分と無理矢理視線を合わせる。
    ちょっと怒っている、でも悲しみも秘めたその顔に、不覚にもあたしは胸が高まった。






    「考え事なんて余裕だな」






    そういって、考え事をごちゃごちゃしていたあたしに、ますます怒りを募らせた。
    慌ててあたしが相手に謝ろうとした時・・・・・。






    「んんぅ・・・・・!」






    またもや無理矢理キスをされて、頭を後ろの木の幹に打ち付けた。
    痛みよりも、口内で暴れまわる涼の舌についていくことに、必死になる。
    クチュクチュと卑猥な音を立てて、あたしと涼は外で激しいキスをしていた。
    人通りが少ない場所でしているからいいものの、ばれたら大変だ。






    「はあっ・・・・涼っ、なん、で・・・・・・っ・・・・・・!?」






    2人の唇と唇の間に、銀色、というか透明の細い糸が引いていて、羞恥心をますます煽る。
    あたしは足がガクガクで、今にも崩れ落ちそうだった。キスはどうやら弱いらしい。






    そんなあたしに対して、涼はその冷ややかに怒りを表した顔を崩してはいない。
    余裕の顔をして、腕を組んであたしを見下ろすように立っている。
    威圧感がばっちりだ。





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▲[ 6056 ] / ▼[ 6058 ]
■6057 / 18階層)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(23回)-(2009/07/12(Sun) 01:14:18)
    恥ずかしくて真っ赤に染まった顔を見られたくなくて、視線を右に逸らした。
    でも、明らかにそんなあたしの顔は、ばっちり涼に見られていたと思う。
    さっきからオーラが怖くて、まともに涼と視線を合わせられない。
    けど、その反面やけにドキドキしてる自分がいる。






    「何?外でこんな事されるの好きなの?」






    低い、冷たい、凛とした声。周りが静かだから、いつもより響いて聞こえる。
    あたしの髪の毛をくるくると指に巻いて弄ぶ。











    正直、あたしはこういう強気な俺様Sみたいな人はモロタイプだから、クラクラしてきた・・・・・・。
    ああ・・・・・ヤバイ、かも。学校内ではクールでポーカーフェイスで通ってるのに・・・・・。











    一人で混乱しているうちに、涼のひんやりした手が、制服のボタンの隙間から入りこんで腹部をなぞる。






    「ん・・・・・・・・・・・・ぅ、や、」



    「声、エロイよ?感じちゃってるんだ」






    お仕置きが必要だよね。そういって、涼が不敵に微笑んだ。
















































































    バチバチバチ・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!









































    袖口から出した、初めて見た本物のスタンガンで、あたしはあっという間に気を失った。
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▲[ 6057 ] / ▼[ 6059 ]
■6058 / 19階層)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(24回)-(2009/07/12(Sun) 01:32:08)
    初めましてな方、初めまして。
    今までこの駄作を読んで下さっている方、どうもありがとうございます。
    『possession』を書かせて頂いている美優、といいます。以後お見知りおきを。



    もうこの話を書き始めて17日、つまりもうすぐ3週間目です。
    途中で展開に困って止まってしまいましたが、なんとか書けました。



    一応、前回のお話で第一幕といいますか、区切りを付けさせて頂きました。
    しかしながら、お話を終わらせるわけではありません。



    これからも涼と梨乃の関係を描いていく予定だし、他にも新キャラを出す予定でいます!


    これからも読んでやって下さいませ!





















    作者・美優
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▲[ 6058 ] / ▼[ 6060 ]
■6059 / 20階層)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(25回)-(2009/07/12(Sun) 01:39:51)
    ここは・・・・・・どこだろう。





    暖かな太陽の光と、澄んだ綺麗な青空、辺り一面のお花畑。





    季節関係なく、とにかく花が咲き誇っている。





    そんな綺麗な景色の真ん中に、白い無地のワンピースを着て、裸足で眠っているあたしがいる。





    あたしは地面にいるのに、それをもう1人のあたしが空の上から見ている感じだ。幽体離脱のような感覚だろうか。





    すると、誰かが、黒いシルエットが近付いてきて、あたしの頬に口付けをした。愛おしそうにしてるけど、誰だろう・・・・・・?





    そして、もう1つのシルエットもやってきて、2人してあたしを何処かへ運び去った・・・・・。









































    シルエットにあたしは愛おしさを抱きながらも、微笑みつつ運ばれていったけど・・・・誰かは分からなかった。




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▲[ 6059 ] / ▼[ 6061 ]
■6060 / 21階層)  possession   T
□投稿者/ 美優 一般人(26回)-(2009/07/12(Sun) 15:41:33)
    ふと重たい瞼を無理矢理上げると、灰色のコンクリートと、黒い鉄製の数本の棒が目に入った。





    そこは明らかに校舎内でも寮内でもなく、どこか知らない別の場所だという事がぼんやりと、朦朧とする意識の中でも認識できる。
    でも誰もいないようで、まだ麻痺しているような感覚の身体を起こした。









    ジャラ・・・・・ッ









    すると、身体を動かした瞬間に鎖が動く音がした。
    ふと視線を下へ向けると・・・・・。






    「何・・・・・・・・・・これ・・・・・・・・・・・・・・」






    自分の首元から、頑丈そうな銀の鎖が伸びている。
    どうやら離れた場所に鎖の先端は繋がれているらしく、あたしの身体の後ろへと伸びていた。
    首の慣れない圧迫感からして、繋がれてしまっている上に、閉じ込められている事が理解できた。












    朦朧としていた頭が、突然はっきりしてきた。監禁されたんだ、と分かっても、犯人が分からない。
    唯一、涼の存在が心残りだーーーーーーー











    1人で蒼白な顔をして混乱していると、ガチャ、と鍵が開く音が右側からした。
    あたしの居る場所は部屋の端で、左側はコンクリートの壁なのだ。




    キィィィ・・・・と軋む音がして、重たそうなこれまた鉄製のドアが開く。
    数段の低い階段の上、ドアの向こう側に立っているのは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・涼。



    全身黒でまとめていて、黒い裾の長い7分丈の服に、黒い長ズボン、裸足の足の指には、黒いラメ入りマニキュア。
    ドアを閉めて鍵を掛け、ひたひたと音を立てながら部屋に入る。






    「赤い首輪が似合うね、可愛いよ」






    そういって、今分かったのだが檻の中にいるあたしの頭を撫でた。



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▲[ 6060 ] / ▼[ 6062 ]
■6061 / 22階層)  possession   U
□投稿者/ 美優 一般人(27回)-(2009/07/13(Mon) 00:09:36)
    「ちょ・・・・・あの、ここは何処ですか?」







    頭を撫でてくれる手が暖かくて、優しくて、気持ちいい、幸せかもなんて考えてたけど、思考と止めて問うた。
    すると、涼は手を止めて引っ込ませて、満面の笑みを浮かべる。






    「僕の自宅の地下室、ってとこかな」






    地下室ーーーーーー少なくとも、涼の自宅はマンションやアパートではなく、一戸建てらしい。









    改めて周囲を見回すと、右側に鉄製で分厚い重たそうなドア、そして3段の低いコンクリートの階段、木製の棚が向かい合って置いてあって。
    その自分の背後の方には白いシーツが掛けてあるクイーンベッド、そして高いポール。
    結構広い地下室だが、壁や床や天上などは、全てがコンクリートだ。







    「そんな不安げな顔しないでよ・・・・・・」






    涼は何故か、切なげで悲しそうな顔をして立ち上がった。






    「実は、僕は梨乃に前に一目惚れをしたんだ。それで、時間が空き次第会いに行ってた。会えば会うほど好きになった。
     仕事上、次はいつ会えるかなんて全く分からない状態だし、梨乃のクラスメイトや先輩後輩は、何人も梨乃を狙ってるし。
     ずっと傍に置いておきたい、長い時間を一緒に過ごしていたくて。
     スタンガンを使って、君を気絶させて車で攫ったんだ・・・・ごめんね。
     でも、梨乃のことを愛してるんだ・・・・・・・・」 







    監禁や拉致なんて、漫画やドラマや小説の中での話だけかと思ってたけど、本当にあるのかなんて呑気に考えた。
    話を整理すると、一目惚れしたあたしを愛すが故に、こうなってしまったらしい。






    「でも梨乃・・・・・・・「涼、ごめんなさい」






    いきなりあたしが言葉を遮ったから、ビックリした顔であたしを見下ろしてる涼。






    「あたし、昔に何人かの人と付き合ったの。でも、あたしの束縛とかが激しい、愛が重たいって言って別れてた。
     あたしは変わった愛し方しかできなくて・・・・愛してたのにって、毎晩泣いてたんだ。
     でもっ・・・・・・・・・・!!!」






    自然と、涙が溢れる。理由は分からないけど、とにかく伝えなくては・・・・・・!!!!
    ずっと、悩んで否定したかった想いを。




































































    「あたしも、涼が好きです・・・・・・!」 
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▲[ 6061 ] / ▼[ 6104 ]
■6062 / 23階層)  possession   V
□投稿者/ 美優 一般人(28回)-(2009/07/13(Mon) 00:38:26)
    いきなり名前も何も明かさないで話しかけてきた涼。



    それからは何度も部屋に来てくれて、孤独なあたしと楽しく話してくれた。



    ミチルに襲われていた時に、ドアを蹴破って助けてくれた涼。



    額、次は唇。あたしのファーストキスを無断で奪った涼。



    今目の前にいる、いつもとは違って悲しそうな、苦しそうな顔の涼。



    普段は勝気の自信家で、明るく元気だけど秘密主義で神秘的な涼。



    いつの間にか、彼女の事ばかり思ってて、惹かれていた。



    無意識にその思いが、口から溢れ出すーーーーーーーーーーーー



























    「・・・・・・ほんと、に?」






    信じられない、と目を見開いて驚いている相手と同様、あたしも内心驚いていた。
    無意識にいつの間にか勝手に口が動いて、告白をしてしまったから。
    付き合うような人はいないと思っていたのに・・・・・・。






    「梨乃・・・・・・・」






    座ったまま見上げるあたしに、涼は嬉しそうな顔を見せてくれた。いつもの涼の表情だ。






    「あ・・・・・ゴメンなさい、あたし、勝手に口が・・・・・・・・」






    慌てて今更涙を拭い、項垂れた。
    恥ずかしさと緊張。不安が一気に襲ってきて、気持ち悪いし、気分も悪い。






    「嬉しいよ、梨乃。てっきり、軽蔑されるかと思ってた。
     でも前に1度、僕が行ったのに寝てるときがあってね、そのときに寝言で『好きだよ』って言ってて・・・・まさかとは思ってたけど。
     両思いで嬉しいな」






    知らなかった・・・・確かに初めて会ったときから気になってたけど、既に寝言で告白してただなんて・・・・・・・。
    あれが、本当の恋をしている感情だったのだろうか。いつも片隅に密かに思っていたのが。






    「あ、お腹減っただろう?梨乃」






    そういって鍵を外された檻から四つん這いで出て、涼に抱きついた。
    ・・・・・・・何かが胸の中、心の中で弾けて、ストッパーが外された気がした。






    「・・・・・・ふ、可愛いよ、梨乃。さて、夕食にしよう」






    頬を摺り寄せるあたしをそのまま引き摺るように、階段を上って上へ行った。 
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▲[ 6062 ] / 返信無し
■6104 / 24階層)  possession   W
□投稿者/ 美優 一般人(32回)-(2009/08/12(Wed) 16:19:00)
    手を繋がれて慣れない首輪に違和感を抱きつつも、分厚いドアの向こうへと行く。
    そこは普通のフローリングの冷たい床で、普通の家と変わらない感じだ。
    床は坂になっていて、どうも坂で地下室へと行く構造らしい事が分かった。
    壁は白く、何も飾られていないシンプルな白い壁紙が数メートル続く。
    そして最後にもう1度、今度は茶色い木製のドアを開けて涼に連れられていった。





    ドアの向こう側は至って普通の家の中。端の方にあるらしく、左側は壁だった。
    正面は大きな広い和室になっていて、本格的に囲炉裏まで中央にあるのが見えた。
    和室の隣はリビング。その部屋に連れられていく。





    リビングは白いソファーにガラス張りの四角い低いテーブル、白の薄いカーテン。
    大きな薄型テレビに黒いパソコンがあり、黒の加湿器とベージュのカーペット。
    さっきからシンプルだが、やはりここもシンプルな部屋だった。
    シンプルが好きだからね、と涼が呟いて教えてくれたけど、本当にシンプル。
    生活感が感じられない程綺麗にしてあって、歩くのが勿体無いくらい。





    そしてその横に繋がってある部屋は、キッチンとダイニングだった。
    やはり廊下や和室やリビングと一緒で生活感があまりない印象の部屋だ。
    白いよく磨かれた広いカウンター付きキッチンの横には、大きな茶色いテーブル。
    茶色い食器棚と窓に挟まれて置いてあるテーブルの上には、湯気を立てる料理。
    誰がいつ作ったのかは分からないが、豪華なのは確かだ。





    テーブルの上にはコンソメスープにフランスパン、デミグラスソースがかかったハンバーグにポテト、人参のグラッセ。
    更には野菜サラダ、マグロのカルパッチョにデザートに生クリーム付きのチョコレートムース。
    とにかく豪華な食事が置いてあって、あたしはつい驚いたまま固まってしまった。




    「自分で作ったんだけどね、味は保障しないよ、梨乃」




    「これ全部・・・!?」





    照れくさそうにうん、と頷く涼を見て、涼は料理も出来る事が分かった。

















    涼に食べよ、と促されて、大人しく涼の向かい側に座った。

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▲[ 6001 ] / ▼[ 6020 ]
■6019 / 1階層)  Re[1]: possession
□投稿者/ 愛美 一般人(1回)-(2009/06/30(Tue) 11:22:18)
    続きが気になります^^
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▲[ 6019 ] / 返信無し
■6020 / 2階層)  possession〜愛美様〜
□投稿者/ 美優 一般人(8回)-(2009/06/30(Tue) 18:51:39)
    初めまして、小説を読んで下さってありがとうございます。


    一応、1日1回は更新したいな、と考えてはいます。


    ご期待に添えるかどうか分かりませんが、これからも読んでやって下さいませ。

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▲[ 6001 ] / ▼[ 6048 ]
■6045 / 1階層)  感想
□投稿者/ あき 一般人(2回)-(2009/07/08(Wed) 00:31:13)
    一気に読んじゃいました。これからもファイトです

    (携帯)
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▲[ 6045 ] / 返信無し
■6048 / 2階層)  possession〜あき様〜
□投稿者/ 美優 一般人(20回)-(2009/07/08(Wed) 22:06:57)
    初めまして、あき様。


    時間を見ると、深夜の12時となっていますが、わざわざ深夜に読んで頂いたのでしょうか?
    もしそうなら、本当に嬉しいです。


    駄文・駄作ですが、これからもめいっぱい頑張らせて頂きます。
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▲[ 6001 ] / ▼[ 6096 ]
■6095 / 1階層)  感想
□投稿者/ 鈴湖 一般人(1回)-(2009/08/11(Tue) 04:43:50)
    夜中にふと目が覚めて、ここのエッセイを読んでいたのですが、特に美優さんのこの話にハマりました(o´∀`o)

    これからも頑張って下さい、では☆。

    (携帯)
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▲[ 6095 ] / 返信無し
■6096 / 2階層)  possession〜鈴湖様〜
□投稿者/ 美優 一般人(29回)-(2009/08/11(Tue) 21:05:14)
    しばらくの間忙しくて、全く更新できてませんでした;;
    話が思いつかない、というのもありましたが・・・・。



    応援、ありがとうございます。
    わざわざ夜中に目を通して頂いて・・・・嬉しいです。




    なるべく急いで書きますので、もうしばらくお待ち下さい。
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▲[ 6001 ] / ▼[ 6101 ]
■6097 / 1階層)  感想応援
□投稿者/ あき 一般人(1回)-(2009/08/12(Wed) 00:55:52)
    引き続きファイトです。マイペースでも大丈夫☆ゆったりとした気持ちで執筆お願いします!応援してます☆

    (携帯)
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▲[ 6097 ] / 返信無し
■6101 / 2階層)  possession 〜あき様〜
□投稿者/ 美優 一般人(30回)-(2009/08/12(Wed) 14:28:21)
    お心の篭った2度目のメッセージ、本当にありがとうございます。



    あき様の『マイペースでも大丈夫☆ゆったりとした気持ちで〜』に救われました。



    頑張ります。






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▲[ 6001 ] / ▼[ 6102 ]
■6098 / 1階層)  感想
□投稿者/ 雪の 一般人(1回)-(2009/08/12(Wed) 09:05:14)
    一気に読みました。
    途中で美優さんが涼タイプなのか?梨乃タイプなのか?考えながら読んでしまいました。
    読み終わってまだドキドキしています。
    楽しみにしていますのでどうかよろしくお願い致します。
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▲[ 6098 ] / ▼[ 6105 ]
■6102 / 2階層)  possession 〜雪の様〜
□投稿者/ 美優 一般人(31回)-(2009/08/12(Wed) 15:27:53)
    一気に読んで下さって、どうもありがとうございます。



    私ですか?私は涼タイプですかねー。
    よく掴みどころが無い、と言われますね。
    雪の様はどのタイプなのでしょうか?



    頑張って続きを考えますので、しばらくお待ちくださいませ。
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▲[ 6102 ] / ▼[ 6106 ]
■6105 / 3階層)  Re[3]: possession 〜美優様〜
□投稿者/ 雪の 一般人(2回)-(2009/08/12(Wed) 20:18:30)
    お返事ありがとうございます。
    私は普段が美空で好きな人には梨乃タイプです。
    美優さんが涼タイプと聞いて一層ときめいてしまいそうです♪

[ 親 6001 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 6105 ] / 返信無し
■6106 / 4階層)  possession 〜雪の様〜
□投稿者/ 美優 一般人(33回)-(2009/08/14(Fri) 00:28:46)
    ご丁寧にどうもありがとうございます。



    そうなんですか?じゃあ日頃から可愛らしい方なんですね。
    私は結構ポーカーフェイスっぽいらしいので・・・。羨ましいです。




    ありがとうございます、ときめくだなんて。
    これから涼の友達が出てくる予定ですが、涼と似ている感じの性格の予定です。
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