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■8020 / 7階層)  浄魔師弓香の受難その2
□投稿者/ 水無月 一般人(20回)-(2017/06/26(Mon) 00:30:43)
    問題児たちを体育館の床に座らせるとあたしは車から衣装ケースと浄魔の篠笛を出し、体育館の更衣室に運び込む。
    ひかる先生は問題児たちにこれから行うことについて話す。無論厳しい口調だ。
    「これからあんたたちに憑いた悪念を浄化する。あんたたちの身体を痛め付けるようなことはしない。ただ逃げられたくないからこんな手段を取った。猿轡も舌を噛まないようにするためだ。本当はあたしだってこんなことしたくない」
    ひかる先生の言葉を聞きながら装束に着替えるあたしの耳に「本当?」と突っ込むような呟きが飛び込んだ。幽体のアニータだ。
    あんたなにしにきたん?
    「野次馬。どんなことをするか見ようと思ってね」
    あたしはあきれたが、すぐに気を取り直し、着替えを続行する。
    「音だけであんたがダメージ食らうとは思わないけど、ひかる先生の刀には触れないようにね」
    あたしはアニータに言った。
    白衣と緋色の袴、それが本来のあたしの装束。

    「今夜の行であんたに今憑いている悪念は祓えるだろう。だが回復への努力を怠ったらまた同じものが憑く。これからやることはそう何回もできることではない。だから昼間のあたしの提案を聞き入れろ。いいな」
    ひかる先生の言葉に問題児たちは頷く。

    あたしは白衣に緋色の袴
    ひかる先生は白衣に紫の袴、左手に白鞘の長刀を携えている。長い髪をポニーテールにした彼女は時代劇に登場する美しい若武者のようだ。
    そしてもう一人、あたしと同じように白衣に緋色の袴の女性は琵琶を構えている。森川涼音さん、表稼業の彼女の演奏は何度か聞いているが裏仕事で組むのは初めてだ。
    「笛使いの早瀬弓香です」
    「弓香さん、堅苦しい挨拶はなしよ」弓香さんは頬笑む。
    「弓香は涼音さんのそばにいて。何かあったら懐刀で涼音さんを守って」
    実は涼音さんは視力が大変弱い。普段は分厚い眼鏡をかけている。
    加えて琵琶は座って奏でる楽器なので予想外の事態になっても機敏には動けないのだ。あたしは涼音さんの右前に位置をとる。
    音合わせをする。理想の音祓いができそうだ。あたしと涼音さんは微笑んだ。
    「おい、そこの淫魔、邪魔するなよ」ひかる先生はアニータに警告する。
    「するわけないわ。あんたは敵にしたくない」アニータは面倒くさそうに答える。

    「始めよう」ひかる先生はいうと問題児たちの上の空間を見据えた。
    涼音さんが琵琶を掻き鳴らす。あたしも篠笛を奏でる。

    笛が、琵琶があたしたちに語りかけてくる。
    そうそう、この感触だ。
    涼音さんとあたし、理想的に清めの音を奏でている。
    あの悪念をもうすぐ引きずり出せる。
    それからはひかる先生の刀の出番!。
    「もうすぐ出ますよ」涼音さんが叫ぶ。
    問題児たちの鼻から霧のようなものが出てくる。それらが集まり、姿を現す。

    これは、餓鬼?
    目の前に現れたのはいわゆる「地獄絵図」で見た餓鬼の姿だ、
    だが妙な感じもする。
    「虚仮威しです 。ひかる先生の刀で充分対処できます」涼音さんがいう。
    目の前の「餓鬼」は下卑た笑いを浮かべながら言う。
    「小娘三人で大した度胸だな。だがこれ以上何ができる」
    ひかる先生は鼻で笑って言い返す。
    「虚仮威しも大概にしてこの娘たちから離れろ」
    餓鬼は言う。
    「嫌だと言ったら?」
    ひかる先生は「痛い目にあってもらうさ」と言い、刀を抜く!

    右肩の上に担ぐように刀を構える。
    そして一歩踏み出し「臨!」と叫びながら袈裟懸けに刀を振り下ろす。
    もう一歩踏み出し「兵!」と叫び、今度は左上から右下に刀を振り下ろす。
    餓鬼は苦悶の表情を浮かべる。
    「まさか!」その声には狼狽の色があった。

    「闘」「者」「皆」「陣」「烈」「在」
    一太刀ごとに餓鬼の姿が弱々しくなる。
    そして最後の一太刀は上段から真っ直ぐ切り込む、
    「前!」
    餓鬼の姿は崩壊し、無数の蝿や蛾になって、そして消えて行った、

    ひかる先生は外で待機していた啓子先生を中によんだ
    「終わりました、もう彼女たちを自由にして構いません」
    あたしも子供たちの拘束を解く。

    あたしたちが着替え、装束等を片付けている間、啓子先生と子供たちは泣いていた。
    「この涙を忘れなきゃいいけどな」ひかる先生はドライにいう。
    「忘れないでしょう」と涼音さんはいう
    「わすれられたら困る」とあたしは言う


    「終わりました。警備装置を作動させてください」
    啓子先生は事務員に連絡をする。遠隔操作で体育館の警備装置が作動を始める。
    「それじゃ帰ります。みんな。あたしの指示を守るんだよ」ひかる先生は医師の顔に戻った。生徒のうち三人は啓子先生の車で送る。
    一人はひかる先生のツーリングワゴンに乗る。ひかる先生は涼音さんも送るので自宅に帰るのはやや遅くなりそうだ。日付が変わるかも知れない。

    あたしの車で送る生徒は加藤小百合と言う名前だった。
    あたしは小百合ちゃんに声をかけても彼女は生返事を返すだけだった。
    あたしはカレンおばあちゃんのいる教会に行くことを勧めてみた。
    「宗教なんて馬鹿馬鹿しいよ」小百合ちゃんは答えた。
    しばらく沈黙したあと、小百合ちゃんは口を開く
    「でも早瀬先生が尊敬するおばあちゃんにはあってみたい」小百合ちゃんは笑ったような気がした。

    部屋に帰ると服を脱ぎ捨てショーツ一枚でベッドに潜り込む。
    幽体のアニータがあたしの表情を除きこむ。
    「へえ。心配してるの?」
    「そんなんじゃないわよ」アニータはそっぽを向いて答える。
    案外かわいいヤツかも。

    「今日のあれみてどう思った」あたしはアニータに尋ねる。
    「あの剣豪姉さんだけは敵にしたくないわ」
    そりゃそうだろうな。

    「本当に頼むから今夜はいたずらしないでね。」あたしに眠りの波が訪れる。
    アニータの唇が、微かに額に触れた気がした。
    「お休み、いい夢に包まれますように」
    アニータがそういった気がした。
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