| 雪の周りには、雪の姿が確認出来なくなるほど人だかりができていた。
某ホテルのパーティー会場。 尚の務める会社の20周年祝賀会と新年会を兼ねたパーティーが催されている。 雪の会社は、尚の会社と取り引きがる。 上役が出席すれば、それで済むのだが どこの企業も、若い女性を数名出席させていた。 こういったパーティーでは、出席者の殆どが男性になる事がある。 そこに華を添える意味で、数名の女性が出席させられているのだ。 早い話しが、ホステス役。 会場がホテルなだけあって 場末のスナックのホステスのような役目はないが 笑顔を振りまき、軽快なおしゃべりくらいはしなくてはならない。 背中に、それぞれの企業の看板を背負っている以上、嫌な顔もできない。 世知辛い話しだが良くある事だ。
背中も胸元も大きく開いた黒いカクテルドレスに身を包んだ雪。 「しかし…モテモテだね。雪。」 「もう…嫌…」 愛想笑いにも疲れたのか、雪がポツリと言う。 「もうちょっとの辛抱♪」 ほんのりと桜色に染まった頬、うなじ、背中、胸元。 それが挨拶の度に飲んだ、シャンパンのせいだけでない事は尚の嬉しそうな表情からも伺われる。 雪の敏感な部分にはしっかりと悪戯を施してあるのだ。 バランスのとれたプロポーションと、一目見れば忘れられない印象に残る、所謂、美形の雪が、 今日はそれに加え桜色に染まる肌と、若干潤んだ瞳をトロンとさせているのだ。 人目を引いて当たり前だ。 お陰で、次から次へと、雪の前に現れる人が自己紹介をして行き あっと言う間に殆どの人と挨拶を済ませる形になってしまっていた。 「終わったら、たっぷり弄ってあげるよ♪」 尚はちゃっかりと、このホテルの一室を予約していた。 今日の午後には雪とチェックインを済ませ、パーティーの身支度を部屋で済ませていたのだ。
(携帯)
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