SMビアンエッセイ♪

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■1772 / ResNo.30)   魅せられてD−7
  
□投稿者/ t.mishima 一般人(41回)-(2005/03/04(Fri) 19:37:51)
http://pksp.jp/mousikos/
     もっとマシな誘い方はないのかと突っ込みを入れたくなる程、堂に入ったお決まりのナンパ男の台詞に、ほろ酔い気分も手伝って思い切りけなしてやりたい衝動に駆られたが。大人なんだからと危険な衝動を押さえ込んだ聖は、無視を決め込み、立ち去る事にした。
     だが、聖が右に行こうとすると、男達も右に立ちはだかり、左でもやはり左に立ちはだかり、聖は進路を絶たれてしまった。相手は、二人というのも厄介だった。
     「無視する事ないじゃん。一人って事は暇してるんだろ?」
     下卑た笑い声を立てた、男の一人に、大人の余裕は何処へやら、最近荒れ気味の聖は容易に切れてしまった。
     「ほんと、ウザイんだよ、貴様等。子供はさっさと家へ帰って寝な」
     鍛えられた腹筋から本気で出された声は空気を切る程大きくて、通行人がちらちら窺い出した程だ。
     「まさか、俺達に喧嘩売ってるんじゃないよね? それに、同じ年位だと思うけど、こう呼んで欲しいのかな?、”お姉さん”」
     聖の可憐な顔に似合わぬ・・・まあ、身に付けている皮ジャンには似合っていたが・・・威勢の良さに、顔をしかめはしたが、ナンパ男達は別段気に止めた様子もない。勿論、通行人はその様を歩きながら眺めてはいたが、見知らぬ女を庇ってくれるようなご親切な人間は居ないようだ。
     男達も外野の視線等お構い無しで、
     「良い事してあげるからさ。付き合ってよ」
     と聖の肩を掴む。
     大抵のナンパ男は、無視すれば放って置いてくれるのに、今夜は運が悪かったらしい。
     (あー。こんなんなら、朝まで飲んでおけば良かった)
     心底聖は悔やみ、「チャラ男」とはいえ自分より三十センチ近く長身の男を前に怯むことなく、
     「汚い手で触るんじゃね―よ」
     自分にとって「汚い手」を払い除けた。
     可愛らしく女らしく、怯えた声で「困ります」と言えば、状況は少しはマシだったのかも知れない。叫び声でもあげれば、同情した誰かが警官を呼びに行ってくれたのかも知れない。
     けれど、聖はそういう女ではなかったし、ここ一週間、鬱憤はやたらと堪っていたから、軽薄そうな男達の心理を思い切り逆なでしてしまった。
     軽々しい遊び人の男達の顔は、元々造りの良い方ではなかったが、怒りで思い切り歪み、二人の拳がどちらが先に聖の頬にヒットするか競うように襲い掛かって来た。
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■1773 / ResNo.31)  魅せられてD−8
□投稿者/ t.mishima 一般人(42回)-(2005/03/04(Fri) 19:38:55)
http://pksp.jp/mousikos/
    2005/03/04(Fri) 20:00:56 編集(投稿者)

     聖はそれを予想して、後ずさり、鞄に忍ばせてある傘の柄に手を忍ばせた。男の急所を傘で突いてやるつもりでいた。
     なのだったが、その機会は永遠に訪れなかった。
     ゆらりと一つの人影が、聖の前に現れたかと思うと、身軽な身のこなしで、的確に男達の急所に狙いを定め、あっという間にその巨体二つを伸してしまった。
     「やれやれ。貴女程可愛い方に軽々しく声をかけるなんて、世の中には身の程知らずが多いですね、僕の姫君」
     突っ伏した男を足先で突付きながら、嫣然と笑ったのは、他ならぬ那智だった。

     (STAGE6 へ続く)
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■1816 / ResNo.32)  椿様o(;・。・;)o
□投稿者/ 茜 一般人(1回)-(2005/03/12(Sat) 04:29:41)
    初めまして☆茜と申します椿様ぁo(;・。・;)o最近どうされたのですかぁ?とってもとってもとっても楽しみにしてるのに(T-T)本当の小説読んでるみたいに引きずり込まれてしまいます(;>_<;)がんばって書いてくださいっo(;・。・;)o

    (携帯)
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■1818 / ResNo.33)  茜さんへ
□投稿者/ t.mishima 一般人(43回)-(2005/03/13(Sun) 01:19:29)
http://pksp.jp/mousikos/
     嬉しい言葉をどうもありがとう(〃゚▽゚〃)&遅くなってごめんなさい♪ 今から追加しますねヾ(^- ^〃)
     自分のHPにSTAGE6を追加したのも昨日だったんですよ。汗 那智が序章で「今度は逃がさない」って言ってた意味がSTAGE6で分かります。STAGE7は今日から書き出して近日中にupしますが、Hシーン有です、多分。笑

     感想、今後ともヨロシク(゚0゚)(。_。)ヘペコッお願いしますvv
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■1819 / ResNo.34)  魅せられてE−1
□投稿者/ t.mishima 一般人(44回)-(2005/03/13(Sun) 01:22:50)
http://pksp.jp/mousikos/
    STAGE6 過去を知る者

    --------------------------------------------------------------------------------
     聖は動けなかった。道行く人々が足を止めざわめいている声さえ、まるで耳に入っていなかった。ただただ今見た映像を頭の中で反芻する。闇に舞い降りたしなやかな黒豹のような那智の動きを何度も思い描く。
     デジャビュのように不確かな、しかし確かな記憶の中の人物が、今しがた見た那智と重なった。
     一年以上も前に、今夜程度のほろ酔い状態ではなかったが、同じように深夜酔っ払った時、聖は同じように男に絡まれて、同じように助けられていたのだ。冷やかな眼前の麗人に。出会いだと思っていた日は再会だった。尤も、その時は男だと思い込んでいたが。
     「お前・・・どうして言わなかった?」
     先程までの威勢はすっかり消え失せ、聖は掠れた声で夜気を震わせるだけ。
     「僕だけ貴女を憶えていて探していただなんて、癪に障るじゃないですか」
     那智は遣り切れないとばかりに肩を竦め、「車を待たせてありますから」と聖の手を取ると、人前だということにも別段気に止めることなく、聖を抱き上げる。俗に言うお姫様抱っこというやつだ。
     「ちょ・・・! 降ろしてって」
     流石に我に返って、聖は暴れ出すが、那智は何食わぬ顔で、人通りの少ない所まで歩みを進めた。間もなく、頃合を見計らうかのように表れたリムジンに男達から掠め取った・・・もとい救い出した姫君を抱いたまま、乗り込む。
     聖は相変わらずもがいていたが、
     「暴れるのやめないなら、唇を頂きますよ?」
     那智の危険を孕んだ声音に、ぴたりと体を強張らせた。

     記憶の箱というものがあるとするのなら、誰にでもどうしても掴み出したくないものの一つや二つある。
     聖にとっては、それは一年前の冬、ずっと信頼し続けた恋人に別れを告げられた事が発端だった。
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■1820 / ResNo.35)  魅せられてE−2
□投稿者/ t.mishima 一般人(45回)-(2005/03/13(Sun) 01:23:58)
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     当時の恋人・五十嵐司は、聖が上京してから組んだ最初のバンドのギターであると同時に初めて深い付き合いをした男だった。ルックス的に特別イイ男という訳ではなかったが、才能と人望を併せ持ち、気さくな彼の性格は聖を和ませてくれた。そして何よりロックを始めるきっかけになったバンドが同じだったこともあって、初対面から四時間以上も話し込んだ程、フィーリングが合っていた。
     とはいえ、当初はメンバーだった為、一度関係を持ったものの、それ以降は暗黙の了解で仲間を貫いた。聖も司も他の異性を自分の恋人にしてはいた。
     だが、メンバーには二人の徒ならぬ雰囲気が伝わっていたのだろう。メンバーチェンジの繰り返しに、ライブ活動がままならなくなった二人のバンドは解散に追いやられ、その後付き合うようになった。
     交際自体は二年余り続いた。負けず嫌いの聖が初めて弱音を吐いたり甘えたり出来たのが司だった。お互い別のバンドを組んで、お互い立つステージは違ってはいたが、同じロッカーとしても、恋人としても上手く行っていると思っていた。
     だが、めきめきと頭角を表し個人的なファンを増やしていく聖とは違い、司のバンドには全くファンが付かなかった。幾ら司に才能があっても、表現する場所がなければ、当人の心は狂う。聖は後から人伝に聞いて知ったのだが、当時の司は、新しいバンドのコンセプトに合わないからと曲一つ書かせて貰えなかったそうだ。
     聖に罪等ない。だが、好きでもない曲をアレンジし、誰が聴いてくれる訳でもないギターを奏でていた自分と違い、華やいだステージで黄色い歓声を浴びる聖。当然、聖に対する妬みが生まれていた。別れた日から遡り半年間は同棲していたが、その時の聖はアパートに寝に帰るだけで、忙しくて司のそんな気持ちに気付く余裕も無かった。久々に丸一日の休みがとれて、何処かデートへ行こうと珍しくめかし込んだ日に、聖は司に乱暴に犯されて、事が終わった後、捨てられた。
     聖は裂けたワンピースを纏ったまま、女性にとって最も大事な器官から血を流したまま、司の去ったドアの周辺を一晩中見ていた。泣き声を上げる事さえ無く呆然と。部屋がぼやけて見えたのは、自分の流す涙だという事にも気付かずに、肩を震わせながら。
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■1821 / ResNo.36)  魅せられてE−3
□投稿者/ t.mishima 一般人(46回)-(2005/03/13(Sun) 01:25:16)
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    2005/03/17(Thu) 21:10:21 編集(投稿者)

     『お前なんて女はうんざりだ!』
     まるで、この世で最も汚らわしいものでも目にするかのような司の目を、最後に聞いたその声を、聖は今でも鮮明に憶えている。
     司と別れて以来、恋愛はしていない。親にも「聖は、悩み一つ話してくれなかった」とぼやかれていたような気丈な聖にとって、初めて弱さを見せられた存在の損失は、大きな打撃だった。恋人なのに親友で仲間で、ずっと一生司とは一緒に居られるとまで思っていたから。
     暫くは男に恐怖を憶えて、メンバーの存在さえ無視して、スタジオの練習もそっち退けて、女性しか集まらない・・・所謂レズビアンのイベント会場やレズバーへ赴いて、飲んだくれた。やつれても尚輝きを放つ聖の見た目の可憐さに言い寄る女は何人もいたが、その度に聖は瞳を吊り上げ無言で追い払い、唯ひたすらにイベントの箱や店の隅で酒を煽った。
     部屋に居ればメンバーがアパートの戸を叩くし、嫌でも司を思い出すから、そうして夜を過ごすしかなかった。少なくともお金さえ払えば早朝までは其処に居る事が許されたから。
     女だけの空間に身を置いても、心に安息等なかったが、それでも、其処にいるのが一番マシで、僅かながらに生きている心地は蘇った。街角で男達を見れば、男達の中に身を置けば、嫌でも司だと錯覚して錯乱しそうになるから、其処に居るしかなかった。
     酒を煽る夜が二週間程続いただろうか。お決まりの習慣のようにその日も朝五時に店を出て、新宿二丁目を歩いていた。何時にも増して半端なく酔って、足取りもおぼつかなかった聖は、チンピラに運悪く遭遇してしまったらしかった。
     『ねーちゃん、ぶつかっておいて、無視か?』
     視界はぼやけているし、どすの利いた声は脳味噌をグワングワンと響かせるだけで現実感がなかったが。掴まれた肩に言いようのない不快感を覚え、聖は焦点の定まらぬ目を嫌悪感を剥き出しにするや否や、力の限りに叫び暴れ出した。
     『離せ!・・・男は嫌・・・! 近寄らないで』
     自分は確かそんな言葉を口走りながら必死にもがいていた。そして何度目かの抵抗が的中し、チンピラの皮膚に一週間切っていなかった爪先が突き刺さった。それに腹を立てた凶暴な拳が振り下ろされ、虚ろな意識で殺される覚悟を決めた時だった。
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■1822 / ResNo.37)  魅せられてE−4
□投稿者/ t.mishima 一般人(47回)-(2005/03/13(Sun) 01:26:50)
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     文字通り空気をも切るような速さで、別の腕が伸びて来て、チンピラの体を聖とは対極の位置に投げ飛ばしたのだ。
     鞭のようにしなやかな動きを見せた黒ずくめのその人間を、だからこそ、聖は男と決め付けた。その恩人に体を担ぎ上げられた時、男に感じる恐怖感は微塵も感じなかったのに。その腕に恐怖感がなかったからこそ、知らぬ間にその腕の中で久々に深い眠りに落ちて行けたのに、その強さが、男だと聖に勘違いさせてしまったのだ。
     聖が記憶を取り戻したのは、夕方だった。其処はやたらと豪勢なホテルの一室で、見たことのない聖でもスイートルームと認識出来た。獰猛な獣の手から辛くも逃れられた安堵感がもたらした睡眠で精神も肉体も回復したらしく、二日酔いながらも、気分はすっきりしていて、聖に正常な判断力を呼び戻していた。ホテルであることに焦った聖は、ベットのサイドテーブルに『夜の七時には戻る。ゆっくりしてて』としたためられたメモを見つけたものの、男+ホテル=犯されると見事な方程式を頭の中で作り上げ、お礼の文章を走り書きでしたためるや否や、さっさとその場を立ち去ったのだった。
     その日を境に、「夜遊びは帰りは朝とはいえ危険」と自粛した聖は、やっと自分に向き合い始めた。ホテルに連れ込んだとはいえ、一応チンピラから自分を守ってくれたのは男だったじゃないかという思い込みも手伝って、「メンバーは私を傷付けたりしないんだから」と、メンバーの一人一人に頭を下げ、このままでは辞めるしかないと思っていた音楽を続けられたのだ。
     恐怖が薄れた時、音楽に携わる人間以外の男性には、助けた人間をも狙う嫌悪すべき存在という意識は残ってしまったものの。

     「恐くはありませんでしたか?」
     半時程、過去に思いを馳せていた聖を酷く優しい那智の声が現実へと引き戻す。ずっとその腕に抱かれたままであった事に、聖は一瞬身じろいだ。
     「男が恐いんでしょう?、少なくとも一年前の貴女はそうだった」
     「・・・そんな事・・・!」
     強がるのが癖でそう言っては見ても、那智の余りに優しい眼差しに、それ以上は言えず、聖は押し黙った。
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■1823 / ResNo.38)  魅せられてE−5
□投稿者/ t.mishima 一般人(48回)-(2005/03/13(Sun) 01:27:34)
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    2005/03/17(Thu) 21:18:48 編集(投稿者)

     (とにかく、一応コイツは恩人なんだ・・・)
     等と考えると、那智が更に不可解な者に思えて、混乱する。確かにあんな屈辱的な仕打ちは受けたが、ただ卑怯なだけの輩が、わざわざ見ず知らずの人間を助けたりするだろうか? ついさっきだって、またも自分は那智に助けられたのだ。と思い出したところで、
     「・・・って、なんで、あんなにタイミングよく、あんたが現われるんだ?」
     無意識に聖は子供がせがむような無邪気な表情を那智に向けていた。
     おや、と那智は心中でだけで眉をひそめた。
     聖が礼儀正しい口調は、その人間との距離に比例する。TOPは大切だという意識もあるにはあるが、礼儀を通すにしてもライブハウスやスタジオで働く人には、「ういっす」だとか砕けた物言いをする。バンドの仲間内では、年上だろうと平気でお前呼ばわりだし、逆に年下で身近だろうと美沙に対しては、名前でなくマネージャーとその肩書きで呼ぶ。砕けた物言いと言っても、「貴様」や「お前」は完璧に侮蔑を含んだ敵視で、「あんた」は気の置けない仲間だという意識の現われだったりするのだ。
     聖は気に介していなかったが、那智は違う。
     初めて見る素の聖を目に気を良くしながら、
     「雨宮に尾行させていたんですよ、貴女が荒れ模様だと姉から聞いていたので。僕はここのところ舞台稽古で忙しかったので、貴女のライブへも行けませんでしたがね」
     雨宮の事は言いましたよね?と運転手を視線で示す。
     そして意味ありげに目を細める。
     「勿論、姉が貴女のバンドのマネージャーだったのは偶然ですが、それ以外は違いますよ。然う然う都合の良い偶然なんてありませんから。雨宮は元々探偵事務所の人間なので、使えるんです。で、貴女が単身で打ち上げに出ていると聞いて、都会は物騒ですし心配になって外で待ってたんです」
      そう言い終わっても那智は何処か不自然にではあったが、微笑んでいた。だが、聖は冗談じゃないと言わんばかりに一気に不愉快さを露にする。
     「尾行だって? 一人だから物騒だって?」
     この一週間、不機嫌極まりない心境だったが、誰にも聞いてもらえるような話ではなかったし、薬物どころか煙草にさえ手を出したことの無い聖は、酒を飲んで憂さを晴らすしかなった。
引用返信/返信 削除キー/
■1824 / ResNo.39)  魅せられてE−6
□投稿者/ t.mishima 一般人(49回)-(2005/03/13(Sun) 01:28:13)
http://pksp.jp/mousikos/
    2005/03/17(Thu) 21:33:38 編集(投稿者)

     徒でさえハードなロッカーの生活に加えて、煩わされる必要など無い悩みを抱える嵌めになったのは、他ならぬ那智の所為でだ。
     「あんな真似をした輩が心配するから待ってたなんて信じられない。大方、私を誘い出す口実を窺っていたんだ」
     那智がどうして自分に拘るなんて分からなかったが、そう考えるのが自然だった。冷静になって考えると那智との初めての出会いがスタッフとバンドマンとしてではなかったと分かった以上、桃生家での一夜だって、予(かねてからお膳立てされていたとしか考えられない。そしてそれからの一週間も美沙まで自分の目として使っていたのかも知れない。
     確かに、二度も救われたのは事実だったが、この男装の麗人は掴みどころがない。表情の細部や雰囲気にまで、天使の優しさと悪魔の巧緻さを巧みに使い分けているのだから。
     (恩人をそこまで疑うなんて、私の器が小さいだけかもしれないけど・・・)
     那智は確かに偶然を否定したのだ。もしそうならと、訝る聖を目に、那智はシャワーを浴びた後の爽快感すら漂わせて、一言、言い放った。
     「まあ、確かに、あのくどいナンパ男その1とその2は、僕の信仰者の劇団員ですがね」
     文字通り悪びれた感等微塵も感じさせずに、だ。
     「奴等が劇団員だと・・・?」
     聖はただ驚くだけだった。一年前、自分をチンピラから守ってくれた腕をただ見詰める。軍人に扮するハリウッド役者のように無駄な肉等ない細身ではあったが、引き締まったその腕は今、其処にあるのに、那智の瞳の奥には絶対零度の氷のような光がある。
     窮地から再び生きる力を奮い立たせるきっかけになった人間が、そこまでの企てを実行するなんて、信じたくなかった。
     だが、
     「貴女って、意外とロマンチストなんですね。さっきも言ったでしょう?、然う然う都合の良い偶然が重なる筈がない。そんなにタイミングよく何度も正義のヒーローが窮地を助けてくれる訳がないでしょう?」
     からかうような那智のその声音に、聖は真実を認識する。
     敵だと認識しさえすれば、聖の行動は早かった。半時以上前に襲い来る男の股間にお見舞いしようと握った傘の柄を握り、鞄から取り出すや否や那智にその突先を向けた。
     それは、護身用として売っていた傘で、先端は正真正銘鉄製の矢尻のそれだった。
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