| ─『せんせぇ…ちょっと熱っぽいんだけどぉ…』─ ─「ホントなの?この前みたいに仮病じゃないでしょうねぇ?」─
─『あの…体育で怪我しちゃって…』─ ─「あら大丈夫?そこ座って。この位なら消毒しとけば大丈夫ね」─
─『2階の西トイレ、紙きれてるみたいなんですけど…』─ ─「分かった、分かった。ありがと。後で補充しとくから、東のトイレ使って」─
─『ちょっとぉ、体温計どこぉ?』─ ─「え?棚の真ん中の引き出しに入ってるでしょ?」─
今日も、×××女子高等学校の保健室は賑やかだ。 武山恵理子は、3ヶ月前に出産と育児を理由に退職した保健医の代わりに、×××女子高等学校に赴任して来た。 年が28才ということもあって、生徒達にとって先生というより頼れるお姉さんに近い感覚。 武山恵理子が生徒に慕われる保健医になるには、そう時間がかからなかった。 多くの生徒は彼女のことを『武山先生』と呼んでいたが、中には『えっちゃん』なんて呼ぶ生徒もいた。
保健室には休み時間のたびに沢山の生徒がやって来る。 本当に体調不良や怪我をした生徒もいたが、大半の生徒は『えっちゃん目当て』だったり、仮病だったりする。 保健医である彼女の仕事は、体調不良や怪我をした生徒の介護や治療。 でも、彼女は生徒の心のケアにも力を入れていた。 進路相談や友人との交友関係についてだったり、そして恋愛相談にも。 そんな彼女だから生徒に慕われたんだと想う。
ある日、武山恵理子は教頭に呼ばれた。 ─『武山先生に性教育をお願いしたいんですよ』─ ─「はぁ…」─ 突然の教頭の申し出に驚きを隠せないまま、彼女は返事をした。 ─『役員会の方で、エイズの学習をすることが決まったんです』─ ─『それでですね、この機会に性教育についても見直そうということになりまして』─ ─「はぁ…分かりました」─
そんなわけで、彼女は生徒に対して性教育の授業を行うことが決まった。 通常なら17時には勤務を終えて、職員会議でもなければ18時には学校を後にする彼女。 最近は、性教育の授業に使う資料などを作るために、遅い時間まで学校に残ることが多くなった。
そして、あの日も…
※ 私書箱番号「6877」 御感想・御意見お待ちしています^^
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