| エンジンをかけ、ハンドルを握りなおす。美柚は私にもたれるような姿勢に戻った。言葉に出さなくても、期待しているのが伝わってくる。だけど今日はそれに応えられない。 「じゃあ、帰ろう。車出すよ。」 私の言葉に、美柚は不満そうに顔を上げた。 「見て、もう出ないと門限に間に合わない。」 美柚が拒否の言葉を口にする前に、デジタルの小さな時計を示した。素直な美柚はそれだけで従う気になったようだ。 その素直さに、私も助けられるわけだけど、少し物足りなくもある。 あまり好きではないけど仕方ない。少しだけスピードを上げて走らせることにしよう。 車がパーキング・エリアの明かりから解放されるとすぐに、美柚の腿に手を置いた。短かすぎない、上品な丈のミニスカート。細かいプリーツの可愛らしいデザインが美柚らしい。 スカートの上から、布ごしの感触を味わう。腿から足の付け根に向かってなで上げる。内腿の柔らかい感触、そして小指がほんの少しだけ、敏感な丘に触れる。 「…うぅん……あぅ…ん……は…あ…」 すぐに息を乱す美柚。自然に僅かに足が開いて、触れやすくしてくれる。だがまだ、期待に応える気はない。 「美柚、気持ちいい?」 美柚は黙ってうなずく。 「今日はこれで満足してくれる?」 さらにうなずく。私はより優しく、ゆっくりと美柚の腿を撫で続けた。丘に触れないように、注意を払って。 「んぅ……あ… ランさ…」 美柚の途切れ途切れの呼び掛けをしばらくは無視して、同じ動きを続けた。うつろな美柚の声は何度も私を呼んだ。無視されても不機嫌になったり、強い口調になったりしないのは、焦らされることを知らず知らず、喜んでいるのだろう。 「どうしたの?」 料金所を出て、すぐ信号につかまってようやく、私は美柚に問い掛けた。止まった手を、美柚が握り締めてくる。 「直接…触って欲しい…」 右手でうつむいている美柚の顔を上げさせる。逃げるように泳ぐ美柚の目に、視線を向けた。 「ちゃんと私を見て、はっきり言ってくれないと、ダメ。」 そして止めていた左手でまた、美柚の足を撫でる。勿論、服の上から。 「…ん……服の上からじゃ…なくて……直接触って……ください…」 途切れ途切れの言葉が終わったところで、私は再び車を走らせた。ここからは一般道。車の中とはいえ、少し人目を感じるようになる。 「じゃあ、触りやすいようにしなさい」 少しのまは、戸惑いではなくて、私の言葉に応える方法を探していただけだろう。すぐに美柚はスカートを捲り上げた。 「ダメよ、美柚。そんなにしたら、トラックから下着が丸見えになる。」 真上から見たら下着がのぞいて見えるくらいに捲り上げられていたスカートを、美柚は慌てて少しだけ戻した。 やはり他からの視線が頭から消えてしまっているようだ。しっかりとそれを再認識させた。 「それでいいわ。美柚はウソツキね。見た目は大人しそうなのに、本当はやらしい子…。」 言いながら、美柚の腿に触れた。布越しとは違う、吸いつくような感触。少し上昇してしまっている体温。 腿の内側を、ねっとりと撫でる。 「あぁん……嬉し…い…んぅ……」 溜め息のような、囁くようなかすかな喘ぎも、湿り気を帯びてくる。 小指の爪で下着を掻くように、丘を下からなで上げた。 「はぁ…ん!」 初めてはっきりした喘ぎを上げる。私の腕にしがみつく美柚の手に、力が篭る。 「ああ、ごめん。足だけでいいのよね、美柚は。」 私はつとめて静かに言って、撫でる手を丘から遠ざけた。そのまま、わかるように丘に触れるのを避けて、腿を撫でる。 「…だめ…足だけじゃ…い…やん……」 車はちょうど公園の駐車場に入ったところ。車が止まったことにも、美柚は気付かない。 「なあに? 約束したでしょ?」 私は撫でる手を休めず、そっと美柚に向き直った。 「ここから、歩いて帰れるわね?」 私の目を、懇願するように見つめていた美柚の瞳が泳いだ。ようやく車が止まったことに気付く。 「あ……はい、ここからなら…」 はっきりと気落ちした声を出す。私は美柚のスカートを直すフリをして、下着に触れた。指の腹で濡れた感触を確かめるようにひと撫で。 「…だ…めぇ……んん…」 小さく震えた美柚が、チラっと時計を盗み見た。門限まではあと40分。まだ少しだけ余裕がある。 くすっと、私は美柚にわかるように笑った。もう、美柚の言葉を促す必要は、なさそうだ。 「もう少し、だけ……触って……下さい…お願い…触っ…て…」 今はどこにも触れていないのに、美柚の声は途切れ途切れになる。羞恥で染まる頬。 「仕方ないわね。どこが、いいの?」 少しだけ後押ししてみる。 「あの……」 ためらいながらも、美柚はスカートを大きく捲り上げた。 「ここ……美柚の、ここを、触って下さい…」 スカートを両手で捲り上げたまま、美柚は顔を逸らして言った。もう充分。これ以上は、私のほうが我慢できない。
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