| 大学の卒業を目前に控え、私はそのアルバイトを辞めることになった。地元での就
職の決まり、彼女のいるこの街で暮らすのもあと10日ばかりになった。
アルバイトとして最後の出勤をした日、帰り際に社員の人たちを代表して彼女から
花束が渡された。お世話になりました、と挨拶をして、私はまだ仕事を続けている
社員の人たちの残るオフィスを後にした。
エレベーターの中で、もらった花束に顔を埋め花の匂いをかいだ。
するとそこには、小さなメッセージカードがあった。
手にとって、開くとその瞬間、彼女がいつもつけている「CHANEL NO5」
の香りが漂った。そこにはこんなメッセージが書かれていた。
『今日までおつかれさま。 二人でゆっくり飲みましょう。 さくら』
彼女からのメッセージだった。
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