| 新宿本通りを抜け、
小さな路地を左に右に曲がったところで佐野さんは止まった。
細くお洒落なビルのエレベーターに乗り、
最上階の17階のボタンを押した。
『ここ、飲めて食べられる、お気に入りの店!
個室だから静かだし、少し高めだからガキが来なくていいんだぁ。
大人のデートスポットみたいなもんだけどね』
と言ってまた照れ笑い。
エレベータのドアが開くと、目の前に黒服のお兄さんがいた。
『いらっしゃいませ。』
丁寧にお辞儀をしている。
お店の中に入ると、深海音楽の様なBGMが静かに流れている。
『二人用の個室空いてますか?』
違う黒服のお兄さんに佐野さんが聞いてる。
どうやら空いていた様で、その黒服さんが案内してくれた。
引きドアを開け通された部屋はを見ると、
一面ガラス張りで新宿の街を下界に眺めることが出来る。
二畳程度の広さで、窓に向かって座る様になっている。
そして窓ガラスの前のテーブルには、
アロマランプの灯がユラユラしている。
バッグを置き、コートを黒服のおにいさんに預け、とりあえず座った。
『ホント。デート用のバーね。ここ(笑)』
佐野さんに小さく耳打ちした。
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