SMビアンエッセイ♪

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■5009 / ResNo.30)  (12)
  
□投稿者/ 琉 一般人(22回)-(2007/11/30(Fri) 16:53:43)
    「冗談きついですよ、センセ?」
    壁にもたれながら優雅にこちらを見据えるのは、
    この学園の生徒のようだった。
    これまた身長170cmは余裕でありそうなスレンダー美人だが、
    ここでは珍しいほど短めのセミロングの髪型だ。
    たぶん…來羽より少し長いくらいだろう。
    驚くべきは、その肌の白さだ。
    もともと色白な女生徒が多いこの学園の中でも屈指のきめ細かい
    もち肌が遠目からでもよく分かる。

    何一つ言い訳など出来ない証拠が揃った現場を見られた後ろめたさから、
    來羽は脱がされた制服や下着を鷲掴みにして前を隠した。
    これ以上、誰かに裸を見られるなんて恥ずかしい。
    しかし、そんな來羽をよそに、目の前の少女は
    ずかずかと部屋に入っていき、校医に向かって堂々と発言した。
    「困りますよ、先生。この子がどういう生徒か知っているでしょ?」
    一方で、注意を受けた校医の方はというと…
    ゲームオーバーを認めるかのように、両手をあげ降参のポーズをとった。

    …どういうこと?

    彼女は一体、何者なのか。
    凛とした佇まいや落ち着き払った行動から、
    おそらく上級生であるだろうことは分かる。
    でも、どうして一介の生徒が権威ある教職者に意見することができるのか、
    來羽は目を白黒させながら、そんなことだけを考えていた。

    「…まったく。私だって、まだ味見をしていないんですからね」
    「ごめんごめん。でも、ほら…つい、ね」
    前の二人は、何かコソコソ言い合っている。
    聞こえていないとでも思っているのだろうが、片言くらいなら
    案外ここまで響くのだ。

    味見…?

    心当たりがないわけではないが、それでもこういう予感は的中しないでほしい。
    それにしても、この学園は随分と教師と生徒の壁が薄いみたいだ。
    もちろん全ての教員がそうではないかもしれないが。
    すると、入室してきた上級生らしき生徒は、二人の会話に聞き耳をたてていた
    來羽の方へ向き直り、改めて自己紹介した。
    「初めまして、サ・フォス女学園高等部生徒会長の湊千影です。
    あなたが一年二組に転入してきた早乙女さんね。
    今日は寮を案内してあげることになっているので、迎えに来ました」

    生徒…会長

    それは文字通り、生徒会役員の最高幹部を意味していた。
    生徒会長が直々にお迎えにあがるなんて…
    こんなに歓迎されているとは知らなかった。
    來羽は密かな感動を覚えつつ、彼女の振る舞いにぼーっと見とれていると、
    会長は無言で思いもよらない行動をとった。
    「あの…何でしょう?」
    顎を軽く持ち上げられた來羽は、不安になって恐るおそる尋ねてみる。
    「いや、噂には聞いていたけど…本当に可愛いなと思って。
    寮の学生たちは、來羽ちゃんの歓迎会をやるって張りきっているから、
    早く紹介してあげないとね。
    あ、でも…とりあえず着替えてくれるかな?
    そのまま行くと寮生が大騒ぎしちゃうから」

    そうだった…!

    恥じらいを押し殺しつつも、來羽は言われたとおりブラやスリップを身につけ、
    乱れていたセーラー服を元通りに着なおした。
    その間、他の二人は背中を向けるといった一応の配慮をしてくれたが、
    特に校医にはすでに赤裸々に見られてしまったため、
    あまり関係がないような気もする。
    最後にネクタイを結び終えるのを待っていたかのように、
    会長は再び來羽に一緒に来るよう告げた。
    学習用品や鞄は、すでに教室から運びこまれたという。
    そういえば、理事長室までスーツケースなどの大型手荷物も
    受け取りに行かないといけない。
    何だってこの学園は日曜のうちに引越しをさせてくれなかったのか…
    ここへは身体一つで届けられたので、特に忘れ物を心配する必要もなく、
    來羽は早々と退散することにした。

    まだ少しここでやる仕事があるとかで校医は同行しなかったが、
    入り口までは見送ってくれた。
    「また、いつでもいらっしゃい」
    そうやってヒラヒラと手を振りながらの校医の微笑みが、
    來羽には逆に恐ろしく感じた。

    いつでもって…

    ここでお世話になる二度目があっては困る。
    部屋を出て新たに判明した事実は、この密室は地下室だったことだ。
    道理で窓がなかったはずだ。
    扉の外には『特別治療室』と書かれてあるが、実験室に名前を変更した方が
    妖しげなこの部屋にはぴったりだと思う。
    螺旋階段を上り、ようやく地上へと続くドアの前までたどり着くと、
    その向こうには眩いばかりの光に満ちていた。

    ここは…?

    プラネタリウムのような半球体のクリスタルガラスで出来た天井が美しい。
    地下室とは対照的に、窓だけで構築されている開放的な場所である。
    「ここが本来の保健室よ」
    会長の話に、來羽は驚きを隠せなかった。
    それもそのはず…部屋の外には一周を薔薇の花々が囲んでいて、
    まるでどこかの王室の庭園にでも迷いこんだよう。
    思わず息を呑む絶景に目を奪われながら、
    來羽はふらふらと壁際まで近寄ろうとした拍子に…
    すれ違いざま、誰かと肩がぶつかった。

    「あ…」
    そこに居たのは、意外な人物だった。
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■5010 / ResNo.31)  おもしろい!
□投稿者/ りっぴ 一般人(1回)-(2007/11/30(Fri) 23:25:15)
    私もながさわさんと同感ですよ。とても読みやすい文章だと思います。

    期待してます。がんばって下さい。

    (携帯)
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■5012 / ResNo.32)  りっぴ様
□投稿者/ 琉 一般人(23回)-(2007/12/02(Sun) 04:26:48)
    初めまして。読みやすいだなんて、恐れ入ります。
    書いている本人は、本当に普通のつまらない人間なのですが(汗)
    なるべくご期待に添えるよう、頑張ります。

引用返信/返信 削除キー/
■5013 / ResNo.33)  (13)
□投稿者/ 琉 一般人(24回)-(2007/12/02(Sun) 04:38:12)
    なんで…

    どうして彼女がこの場所に居るのだ?
    來羽の脳裏には、激しいフラッシュと共に、
    昼間のキスシーンが鮮明に映し出された。
    どこまでも澄んだ漆黒の瞳にサラサラと揺れる緑の黒髪、
    そして鳥肌がたつほど整いすぎた顔立ち…
    間違いない。
    彼女は…昼休みに口づけを交わしたあの美少女だ。
    時間はもうすぐ五時を回ろうというこの黄昏時なら、
    部活動をしていない一般生徒はとっくに寮に帰っているはずなのに。
    怪我をしている病人には到底見えないため、
    來羽にとっては余計と不思議でならなかった。

    「熱っ!ちょっと、急に飛び出してこないでよ」
    見ると、彼女の手元には淹れたばかりと思しき紅茶の入ったティーカップが数個、
    お膳に乗せられて運んでいる最中のようだった。
    カップからは朦々と湯気が立ちこめている。
    「ご、ごめんなさい…」
    長くて美しい指先が火傷してしまったかと焦って、
    來羽は彼女の手に触れるようとした、そんな時だった。
    「あら?ちょうど良かった、紹介するわね。
    彼女…桐生円さんは、寮であなたと同室になるルームメイトよ」
    ようやく追いついた会長が、タイミングよく間に入ってくる。

    るーむめいと…って

    「えぇっ!?」
    仰天する來羽を放ったらかしに、会長は延々と説明を続ける。
    「まあ、もともとうちの寮は二人用だからまだまだ充分な余裕はあるのだけれど、
    今年の一年生の大半が一人部屋として使い始めちゃってね。
    転入生が来ることが決まった時、部屋割りをどうしようか思案していたら、
    何故か一人部屋の彼女たちみんなで争奪戦を始めてしまって…
    …どうしてかしら?
    それで結局、決着は持ち越しになったのよね。
    とりあえず仮の同室者として桐生さんが選抜されたってワケ。
    あ、でも、あなたラッキーよ。
    桐生さんといえば…一年生の中ではダントツの成績を誇る才女だから、
    困ったことがあれば、いつでも彼女を頼れば良いわ」

    争奪戦…

    それは、まさしく聡美が話していたもう二つめのキーワードの
    『取り合い』に他ならない。
    一体、どんな決め方をしたのかは甚だ疑問だが、
    それでは決まらなかったというのだから、
    あまりに過酷で壮絶な戦いだったか、
    または余程くだらなかったかのどちらかだろう。
    それにしても、同室になる相手がよりによって彼女だなんて…
    初対面でキスをしてくるような女の子だ。
    何だかとんでもない寮生活が待っているような気がして、
    來羽の内心は不安でいっぱいだった。

    「ほら、二人とも仲良く、ね?」
    そう言いながら、会長は向き合う二人の手を取って、
    互いに握手させるような格好で促した。
    おそらく、生徒会長は今日の昼休みの一件を知らない。
    來羽は首を竦めて怯えながらも、言われたとおり挨拶した。
    「あ、どうもこんにちは。転入生の早乙女です。
    これからご迷惑をおかけしますが、どうかよろしくお願いしま…」
    「会長」
    來羽の話を遮って、円は会長へと声をかけた。
    「ご要望どおり、理事長室から彼女の残りの荷物を運びました」
    彼女の後ろのテーブルには、あの重い編入要項パンフレットが
    連絡事項のプリントと一緒に山積みになって置かれていて、
    さらにその下にはチャック柄のスーツケースが横たわっていた。
    紛れもなく、けさ理事長室に預けた來羽の手荷物だ。
    「あ、ありがとうございま…」
    慌ててお辞儀をしようとする來羽を、今度は会長の言葉が遮った。
    「まあ、ご苦労さま」
    「いいえ。同室の者として、当然ですから。
    …それより、ちょうどお茶を淹れたんです。
    ちょっと休憩して行きませんか?」
    会長はそうね、なんて笑いながら、二人でさっさと
    奥の洋卓の方へ歩いていってしまった。

    無視…されてる?

    歓迎されていると喜んだばかりで実はやっぱり違ったのかと、
    ならくの底に突き落とされるような仕打ちに來羽は再び沈みかけていると…
    「あなたもね」
    けれど、こちらに振り向いて円がさりげなくそう言ってくれた言葉だけは、
    確かに耳に入った。
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■5014 / ResNo.34)  はじめまして(^_^)/
□投稿者/ 籠女 一般人(1回)-(2007/12/02(Sun) 20:43:40)
    いつも楽しく読ましてもらっています(^^ゞドキドキしながら続きも楽しみに待っていますので頑張って下さい(o^v^o)

    (携帯)
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■5036 / ResNo.35)  籠女さま
□投稿者/ 琉 一般人(25回)-(2007/12/11(Tue) 21:08:18)
    こちらこそ、初めまして。応援していただき、ありがとうございます。
    本当にいつも、ちまちまとゆっくりな更新ばかりで申し訳ないです。
    これから年末に向けて忙しくなるので、
    ますます更新が滞りがちになることが予想されますが、
    まずは第一章の完結を目指してぼちぼち頑張ります。

引用返信/返信 削除キー/
■5037 / ResNo.36)  (14)
□投稿者/ 琉 一般人(26回)-(2007/12/11(Tue) 21:15:54)
    「で?」

    カップに注がれた真っ赤な紅茶を一口飲んでから、
    生徒会長は突如尋ねるように円に質問を投げかけた。
    「ですから、その話は以前お断りしたように…」
    「やっぱり生徒会には入ってくれないの?」
    …そうそう。
    生徒会に入ってほしいとかいう類の話だった。
    彼女たちを含め、この学園の生徒の会話は次からつぎへと話題が変わるのが速すぎる。
    これが女子校特有の怪奇現象なのだろうか。
    せっかくの茶話会も、いまの來羽にとっては、何を言うこともなく
    ただただ二人の話についていくだけで精一杯のティータイムとなっていた。

    「でも、あなたのほどの才能に満ち溢れている新入生がもったいない…」
    ため息混じりに心底残念そうに呟く会長の話によると、
    この天才的美少女の…桐生円は、高等部入学から半年以上経ったというのに、
    未だにどこの部活・委員会にも所属していないのだという。
    驚くことに、彼女は一学年主席という輝かしい成績だけでなく、
    体育で測定した短距離のタイムが、並みいる強豪を押さえて校内上位に
    くいこむほど抜群の運動神経に加えて、さらには数多の芸能プロダクションから
    これまで何度もスカウトの依頼を受け続けている経歴の持ち主であるらしい。
    これだけ有能な新入生が、特に部活動に精を出すわけでもなく、
    はたまた委員会や課外活動に熱中するわけでもない
    甘んじた学園生活を送っているとなれば、
    宝の持ち腐れ状態で会長が嘆き悲しむのも無理はない。

    …いったい、何を考えているの?

    頭の回転が速い人の行動とは、時として考えが読めないことがある。
    來羽などは、まさにその典型的パターンにはまりやすい人物なのだった。

    「別に私が入るまでもなく、生徒会にはすでに優秀な人材が
    いくらでも揃っているじゃないですか」
    特に、私の親友とか…と円は名指しして思い当たる人物の名前を
    ことごとく列挙していった。
    なるほど、彼女の身近な友人には生徒会役員が居るということか。
    「もちろん、若林さんもうちの一員としてよくやってくれているわ」
    会長はワカバヤシさんのフォローをするかのように、
    慌てて名指しされた生徒を庇いたてた。
    「だから、その…あなたはとても若林さんと馬が合うようだし。
    将来は、あなたたち二人で…今後の生徒会を引っ張ってくれたら、と
    私は考えているのよ」
    「遠慮します。私はいまの生活で充分満足しているので…
    生徒会だって、第二書記や第三会計まで居れば充分ではないですか?」
    一刀両断で返事するかのように、円はキッパリと断った。
    彼女の態度ときたら…何もそこまではっきり言わなくてもと、
    部外者である來羽がやきもきしてしまうほどである。

    「生徒会がここまで頼んでいるのに引き受けないなんて、
    よっぽどいまの生活が楽しいのか…それとも」
    生徒会長はそこまで一息で告げ、さらに來羽を向きながらこう続けた。
    「それほど新しく来た転入生のお世話に忙しいのかしらね?」

    えっ?…わ、私!?

    その矛先がこちらに向けられたことで、関係ないと思っていた來羽は萎縮してしまう。
    「彼女は関係ありません」
    事実だから仕方ないのだが、それでもこれから同室となる相手に関係ないと
    言い切られてしまうと、それはそれで心寂しく感じてしまうものだったりする。
    「それに…彼女はもう貝原先生とお楽しみだったようですし?」
    「…見ていたんですか!?」
    どこか棘のあるような口調で円はニヤニヤしたままそう呟いたが、
    その言い方が來羽にとっては許せないものだった。

    見ていたなら、助けてくれたって良いのに…

    彼女たち二人の会話を聴いていて、何となく分かった。
    円は最初の荷物を運んだときに、地下室の來羽を目撃して、
    さらにその後、再度理事長室へ向かっているうちに会長がやってきた、
    というわけだったのだ。
    保健医と生徒会長以外にも肌を見られていたかもしれない不安が募り、
    來羽は恥ずかしさと怒りで顔を歪めた。
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■5038 / ResNo.37)  待ってました(^o^)
□投稿者/ 籠女 一般人(2回)-(2007/12/12(Wed) 00:06:09)
    更新ありがとうございます!毎日チェックしながら首を長くして待ってました(^v^)ホントに楽しいお話ですね\(^O^)/これからも頑張って下さい(^o^)

    (携帯)
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■5046 / ResNo.38)  NO TITLE
□投稿者/ ノア 一般人(1回)-(2007/12/22(Sat) 15:55:11)
    はじめまして☆彡
    いつも楽しく読んでます♪
    忙しいとは思いますが、続き楽しみにしてますので頑張って下さぁいッ(・∀・)

    (携帯)
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■5065 / ResNo.39)  籠女様
□投稿者/ 琉 一般人(27回)-(2007/12/30(Sun) 21:08:29)
    こんばんは。お返事、ありがとうございます。
    クリスマスも終わってしまいましたね。
    ケーキの食べすぎで、お腹周りが気になるところですが、
    少し制限しながら年越ししようかと考えているところです。
    さて、お話はようやく学生寮へと移っていきます。
    この後、どんな人物が登場してどんな展開が待っているのかは…
    来年のお楽しみのいうことで(笑)
    それでは、良いお年を。

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