| 誰かなんて…この部屋には二人しかいないのだから、 必然的に自分以外のもう一人が誰であるかを思い出した時点で、 來羽の身体は硬直した。
長くて細い腕がゆっくりと絡みついてくる。 カーテンをしていない部屋に差し込んでくる 夜景の明かりに照らされたせいで、幾分艶かしい。 來羽は動くこともできないまま、 ただただ窓ガラス越しに円を見つめていた。 彼女の瞳もまたこちらの眼をじっと映している。 円の視線は、高揚していて眩しくて、そして痛かった。
ほっそりとした指が、次第に制服の胸の辺りを なぞるように触れてきた。 いつの間にか、首筋には息がかかるほど密着している。 幻想的なようで生々しいこの空間には、 間違いなくルームメイト同士である二人しかいない。 密室でこれから起こる出来事を想像して、 來羽の胸中は不安と期待で渦巻いていた。
円の甘い匂いに包まれながら、 來羽の思考回路が再び麻痺し始めようとした時… 突如として正面を向かされ、力いっぱい抱き寄せられた。
|