| もう、どうでも良い…
何回かの口付けを交わした後には、來羽はすっかり円の唇に夢中になっていた。 女の子のふっくらとした上唇がどう、とか、そんなことは すでに考えられなくなっていたからだ。 とにかく、気持ちが良いのだ。 持て余すくらいの快感が、急激に來羽の瞼を重くさせ、 うつらうつらと次第に眠気のような夢心地に浸っている間もなく、 円はわずかな隙間を伺うように自らの舌をねじ込んできた。
「んっ」 途端に、來羽の身体が硬直する。 予想だにしなかったディープキスの再来に、一気に頭が真っ白になった。 一度でも彼女の侵入を許してしまうと、それを拒むのは容易ではない。 ヌルヌルした生暖かい感触は先ほどの校医とのキスと何ら変わらないのに、 円の舌はどこまでも吸いついて離そうとはせず、逃げようとする來羽のそれを 執念深く捕らえて容赦なく追いつめる。 クチュ…クチュ… まるで息をすることすらも惜しむかのように、 二人の乱れた吐息と絡まった唾液の音だけが部屋には響いていた。
やがて、獲物を十分に堪能したような表情の円が唇を離すと、 口と口の間に透明な糸をひいた一筋の唾液があらわれる。 いつしか來羽はとろんとした目つきを向けながら、 彼女が繰り出す次の行動に期待することを隠せなくなっていた。
「可哀想に…縛られたのね」 同情するように、円は來羽の細い手首をさすった。 触れられるとヒリヒリとする痛みが襲ったが、時折「痛かった?」などと 声をかける彼女の気遣いが嬉しくて我慢していた。 「大丈夫よ…私にまかせて」 しばらくの間、手首をいたわるように撫でていただけだった円だが、 おもむろにこう言って大きなガーゼのようなハンカチを取り出そうとする。 きっと消毒か何かの処置を施してくれるものだと黙って見ていた來羽は、 次の瞬間…そのハンカチで再び両手首を二重に巻かれて仰天した。 「な、何するの!?」 「これ以上、悪い虫が寄ってこないように、もっとキツく縛ってあげる」
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