| 6月から新しいフロアに異動することになり、早紀は張り切っていた。
研修中はフロアの異動はないと聞いていたが、どうやら早紀のやる気が認められ、それから少しの運の良さが味方して、研修中の身としてはあまり前例のない今回の職場替えとなったらしい。 「あなたなら、どのフロアでも大丈夫よ!」 と、前のフロアで太鼓判を押してくれたパートのおばさん達の声に元気づけられ、早紀は新しい仕事への意欲に燃えていた。
「よろしくお願いします!」 研修中の人間らしく、爽やかに丁寧に頭を下げる。にこやかに応えてくれる新しいフロアの面々。女性ばかり4人だ。
「岡野です。よろしくね。」 早紀の手を取り、一際にこやかに挨拶してくれた30代前半の女性は、少しポッチャリとしていて、何でも話を聞いてくれそうな優しい感じの人だ。
「主任の朝鷺(あさぎ)です。2Fでの活躍は聞いていますよ。ここは人数が少ないわりに重要な仕事が回ってくるから、大変だと思うけど頑張りましょうね。」 ハキハキと話す、どこか上品な女性は、20代後半くらいの、いかにも仕事ができますといった雰囲気をかもし出していた。 「伊藤です。」 「橋立です。」 同じくらいの歳の2人は、すぐにでも仲良くなれそうだ。
「早速だけど、今日早紀ちゃんの歓迎会をするから。夜、大丈夫でしょ?」 岡野にいきなり“早紀ちゃん”と呼ばれ、少し驚いたが、癒し系の岡野のキャラクターのせいか、それがかえって、緊張していた早紀の気持ちをほぐした。 「あ、はい!大丈夫です!ありがとうございます!」 早紀はめいっぱいの笑顔でそう言い、ピョコッと頭を下げた。
(携帯)
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