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■5538
/ 親記事)
悲しみの果てには悦びの楽園
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□投稿者/ 李白
一般人(1回)-(2008/12/14(Sun) 23:24:31)
何で泣くんだと、少し相手に苛立ちを覚えた。
相手は、近所に住むフェム系の6歳年上の女。
ついさっき、こんな時間に家に来て何かと思えば、告白された。
でもはっきり言って、しつこくてお節介なこの女は嫌いだったから、
「アンタに興味ないの。むしろ嫌いだからもう近付かないでくんない?」
とインターホン越しに言い放った。
家の中に設置してあるモニターには、毛先を15cmほど巻いた茶色い頭は項垂れ、
ピンクと白のワンピースの生地を握り締めた女の姿。
そして、数滴の涙を残し、走り去った。
ふう、と軽く溜息をつく。
お風呂上りで火照っている身体を配慮し、暖かいリビングへと足を運んだ。
一人暮らしをしているため、家中が静寂に包まれている。
テレビは何も面白そうなことはやっていない。
ふと、ガラス製のテーブルの上にある封筒に目がとまった。
今日の夕方にポストに入っていた、黒と紫のクールな感じの封筒。
糊で貼り付けてあり、送り主は名前を書いていない。
多分前の彼女・・・いや、ご主人様からだろう。
つい3ヶ月前まで、夏樹には秋という彼女がいた。
恋人、というかご主人様とペットという関係だったが・・・。
夏樹は家の中では赤の首輪に、裸に白いエプロンという格好をしていた。
今思えば、馬鹿らしくて、悔しくて仕様が無い。
そんな彼女から、最近メールが来ていたのだ。
何を思ったのかは知らないが・・・。
そしてこの間『手紙を送る』とメールで言っていたのだ。
面倒くさそうに封筒を取ると、ビリビリと手で口を破る。
中からは万年筆っぽいもので書いた、手書きの便箋が入っていた。
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■5539
/ ResNo.1)
悲しみの果てには悦びの楽園A
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□投稿者/ 李白
一般人(2回)-(2008/12/18(Thu) 07:20:25)
封筒の中には、可愛らしい子犬の便箋が入っていた。
ああ、そういえば秋は犬が大好きだったっけ、とふとにわかに思い出した。
そして、肝心の内容は次のようなものだった。
『前略
夏樹、もう私達が別れてから1年半過ぎたわね。私はあの頃が懐かしいわ。
最近メールを送ったけど、元気そうで安心しました。
彼女はいない、彼氏もいないって言っていたけれど、私もいないの。
何だか夏樹をまだ好きな私がいるみたいで、駄目だったのよ。
・・・まあ余興はここまでにしておくわ。
夏樹、貴方に話があるの。
私の知り合いに優っていう子がいるの。私の4つ下で22歳。
ちょうど貴方とは2歳差ね。
その子が、夏樹と会ってみたいっていうのよ。何でも駅でたまたま会って、
優が一目惚れしちゃったみたいなの。
そこで、夏樹、優と会ってあげてくれないかしら。
優は完ビアンだから、気に入ったら付き合ってもいいわ。
好きにならなくても、友達として付き合ってくれないかしら?
じゃあ、いい返事待ってるわ。
秋』
右上がりの角ばった綺麗な字は、確かに本人のものだった。
仕事はいつが休みだったか、壁にかけてあるカレンダー見た。
ちょうど今週の日曜日は何も無い。
最近暇だったし、まあいいか、と夏樹は思い、早速秋にメールを送る。
『手紙読みました。今週の日曜日が空いているので、その日に会いましょう』
すると、秋からは了解と言う返事が返ってきた。
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■5542
/ ResNo.2)
悲しみの果てには悦びの楽園B
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□投稿者/ 李白
一般人(3回)-(2008/12/24(Wed) 07:09:59)
それから時は早くも過ぎ去った。
そして、あの約束の日曜日。
朝、目覚めた夏樹は、1つ伸びをする。
遂に今日『優』と会うのだ。どういう人かは年齢しか分からないが、何故だろう。
夏樹は自分の気持ちがワクワクしている事に気が付いた。
でも、同時に元カノである秋と会うのは、やはり気が進まない。
なんとも言えない気持ちだった。
待ち合わせは、午前10時。
壁にかけてある黒い時計を見ると、ちょうど9時だった。少し急がなければならない。
夏樹は、白いシーツのベッドから身体を降ろす。
夏樹の自宅は、全体的に黒や白でまとめてある。好きな色だからだ。
*
夏樹の自宅から歩いて15分。結構近場にある駅が待ち合わせ場所だ。
あれから数回メールを今日のためにやり取りしたが、秋が優を連れて来るらしい。
夏樹には優はどんな人なのか、全く聞かされていない。
今日の夏樹の格好は、黒い太ももまでの長Tシャツ。シルバーのドクロが描いてある。
そして、下は流行の赤のチェック柄のスカート、そしてレギンス。茶色のエンジニアブーツ。
本当はもう少しボーイッシュだが、初対面という事で一応気は使った。
でもまぁ、優は夏樹を見たことがあるのだから余計な気だが。
待ち合わせ時間の5分前、駅の改札口で待っていた夏樹の目に、2人の女性が映った。
秋と優だ。
「ごめんなさいね、夏樹。久ぶり。待たせてしまったかしら?」
秋の今日の服装は、薄いピンクのトップスに白いカーディガン、白いロングスカート。茶色のパンプスを履いている。
茶色に染めた腰までの髪は軽くウエーブがかかっている。
夏樹と付き合っていた頃からずっとフェム系だ。
そして、その後ろにいたのが、どうも優らしい。
黒いショートの頭、胸元が開いたグレーと黒のセーター、赤のミニスカートに、黒いロングブーツ。
顔は夏樹的には可愛い方だ。
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■No5538に返信(李白さんの記事) > > 何で泣くんだと、少し相手に苛立ちを覚えた。 > > > > 相手は、近所に住むフェム系の6歳年上の女。 > ついさっき、こんな時間に家に来て何かと思えば、告白された。 > でもはっきり言って、しつこくてお節介なこの女は嫌いだったから、 > > > 「アンタに興味ないの。むしろ嫌いだからもう近付かないでくんない?」 > > > とインターホン越しに言い放った。 > 家の中に設置してあるモニターには、毛先を15cmほど巻いた茶色い頭は項垂れ、 > ピンクと白のワンピースの生地を握り締めた女の姿。 > そして、数滴の涙を残し、走り去った。 > > > ふう、と軽く溜息をつく。 > お風呂上りで火照っている身体を配慮し、暖かいリビングへと足を運んだ。 > > 一人暮らしをしているため、家中が静寂に包まれている。 > テレビは何も面白そうなことはやっていない。 > > ふと、ガラス製のテーブルの上にある封筒に目がとまった。 > 今日の夕方にポストに入っていた、黒と紫のクールな感じの封筒。 > 糊で貼り付けてあり、送り主は名前を書いていない。 > > > 多分前の彼女・・・いや、ご主人様からだろう。 > > > つい3ヶ月前まで、夏樹には秋という彼女がいた。 > 恋人、というかご主人様とペットという関係だったが・・・。 > 夏樹は家の中では赤の首輪に、裸に白いエプロンという格好をしていた。 > 今思えば、馬鹿らしくて、悔しくて仕様が無い。 > > > そんな彼女から、最近メールが来ていたのだ。 > 何を思ったのかは知らないが・・・。 > そしてこの間『手紙を送る』とメールで言っていたのだ。 > > > 面倒くさそうに封筒を取ると、ビリビリと手で口を破る。 > 中からは万年筆っぽいもので書いた、手書きの便箋が入っていた。 > > >
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