| 今日も電話は無い。
「麻衣…でもきっと夜になったらまた私が欲しくなる…そうしたら、抱いてあげるよ…」
サムは確信があってあんな事を言ったわけじゃない。 放心状態の時に言えば、もしかしたら暗示に斯かるかもしれないと思っただけだった。 初めてだったのに、あそこまでしてしまった。電話が無くても当然だ…そう思った。 サムは自分の中にあれほどの残忍さがあるとは知らなかった。麻衣…あれっきりなの…もう逢えないの…
「サムぅ、どうしたの?なんだか今日はノラないね。」 サムの胸を愛撫してたアキが言った。 「えっ、ああ…ごめん。」 アキの髪を撫でた。 「ねぇ、サムさっきから何か考えてるでしょ。だって私のことしてくれた時もお座なりって感じだったもん。」 拗ねたように言っているが、言葉はには責めてる感じはなかった。
アキというのはそういう子だった。人を責めたりしない、人の領域に入ろうとはしない。 それを中には『冷たい』と感じる者もいるようだが、サムはそういうアキが好きだった。 アキはタバコに火をつけた。口の中にメンソールが広がる。少し苦い。サムにそのタバコをくわえさせる。 アキの口からため息が漏れる。 「アキ…」 「誰か好きな子、できたんだ…」
えっ!サムは驚いた。好きな子?そんなこと思ってもみなかった。 麻衣の身体が忘れられないだけだと…そう思っていた。 本当のところはどうなんだろう…自分でも分からない。麻衣に逢いたい。 もう一度抱きたい。あの時のあの顔、声、そしてあの瞳…。抱きたい…
「そんなんじゃないよ…ただ…」 「ただ、なあに?サム…変だよ。いつもだったら好きな子できたんだって云うじゃない。サムどうしちゃったの?ただ、なんなの?」 アキにしては珍しかった。 いつもはこんなふうに絡むアキではない。イラついているようだった。 「アキこそどうしたの?らしくないよ。」 「嫌なのよ。こんなサム見た事ない!」
そう言うと、アキはベッドからでた。 そして自分の裸身(からだ)を誇示するように上体を反らせながら髪を掻き上げた。 アキの裸身は美しかった。下着のモデルをしているだけのことはある。 「サム、その子は私よりきれいな子なの?私より…」
サムは驚いた。 アキは焼きもちを焼いている。そんな事は今まで一度だってなかった。 どんな子と付き合おうが何をしようが、サムとアキの関係は変わらなかった。 そんなアキが焼きもちを焼いている。
「そんなんじゃないよ…そんなんじゃ…」 「それじゃわかんないよ!サム!私たちもう終わりかも知れない…、サム…今度は本気だね。今までとはぜんぜん違うもん…」
サムは一人ベッドの中にいた。 アキが別れの言葉を残し、出て行く時も別に止めなかった。 いったい何人の女がこうしてサムの元を去っただろう。 相手に対する感情が無い訳ではなかった。 だが…めんどくさいのだ。束縛されるのも、詮索されるのも。 その点において、アキはピッタリの相手だったはずなのに… アキも他の女と一緒だったってことか… ぼんやりとそんな事を考えながらアキの言った言葉を思い出していた。
『今度は本気だね。』
何が本気なのか…そんなこと言ったらみんな本気さ。 サムはサムなりにそれぞれの女を愛しているつもりだ。 しかし麻衣は…そんな相手じゃない。 ただ、一回やっただけじゃないか、ほんのつまみ食い程度のもんさ。そう思っていた。
しかし、それじゃぁなぜ自分は麻衣からの電話を待ってるんだろう… いやそれよりなぜ電話番号なんて教えたのか…
麻衣の仕草、笑顔、指、そしてあの時の…顔、声…
サムの身体の芯に何かが走った。指を秘部へと這わせる。濡れていた。 蜜をたっぷりと指に付け、ヒダの先にある硬く尖った物をそっと撫でる。 背筋が伸び、あごが上がる。 「うっ、麻・・・衣・・・・」 知らず知らずのうちに麻衣の名を読んでた。
あの細くしなやかな指…薄桃色の秘部…紅く小さな…
そんな事を考えながらサムはイッた。 「また、相手を探さなきゃなぁ…」 呟きながらサムはまどろんだ。
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