SMビアンエッセイ♪
HOME
HELP
新規作成
新着記事
ツリー表示
スレッド表示
トピック表示
発言ランク
ファイル一覧
検索
過去ログ
[ スレッド内全34レス(30-34 表示) ]
<<
0
|
1
|
2
|
3
>>
■5755
/ ResNo.30)
鎮雛・30
▼
■
□投稿者/ 葉
一般人(44回)-(2009/04/27(Mon) 03:55:52)
怖かった。でも、だからこそ目を閉じられなかった。
沙耶は、いつの間にか刀を掴んでいた。
(そう言えば…どこに置いてたんだろう?)
どうでもいいような疑問がよぎる―――そうでもしていなければ、耐えられない。
ギシッ、ギシッ…
足音が障子のすぐ外までやって来て、しんと途絶えた。
突然、大きな音と共に障子が破られた。
私は悲鳴を上げた。障子の一角から、五本の指が突き出している。
「いや………!」
私は後ずさり、次の瞬間に声すら出なくなった。
障子に、はっきりと人影が映っていた。
視界の隅に、棒のような物が飛んだ。
私には、沙耶が刀の鞘を払った所は見えなかった。青白い光を見たと思った瞬間、障子は袈裟掛けに斬り倒されていた。
『―――舐めるんじゃないよ』
視界いっぱいに飛び散る血潮を見たと思った時に、沙耶とは違う、鞭のような女の声がした。
『年季が違うんだよ、年季が』
障子の向こうには誰もいなかった。
床や障子を染めたと思った血潮もなく、廊下にはただ庭から吹き込んだいくひらかの桜の花弁が散っているだけだった。
(携帯)
引用返信
/
返信
削除キー/
編集
削除
■5757
/ ResNo.31)
感想
▲
▼
■
□投稿者/ momo
一般人(1回)-(2009/04/27(Mon) 14:58:15)
今まで感想を書くのは無粋かと思ってましたが・・・。
お話とても楽しく読ませてもらっています。
世界観を大切にこれからも頑張ってください。
引用返信
/
返信
削除キー/
編集
削除
■5760
/ ResNo.32)
鎮雛・31
▲
▼
■
□投稿者/ 葉
一般人(45回)-(2009/04/27(Mon) 22:06:50)
俊江尼が住持をつとめる禅寺は、私の家から歩いて十分ほどの場所にある。
「―――まあまあ、綺麗なべべ着せて貰うて…」
母と同年ならば六十半ばだが、仕草や表情にどこか童女めいた所のある俊江尼は雛人形の包みを見ると目を見張り、いそいそと手を合わせた。
「娘時分にこさえた晴れ着やなんかも祥子はん、みぃんな処分してしもて……まさか居んようになってから、手放しなさった娘さんにこないにして貰えるやなんて、夢にも思うておりませなんだやろなぁ…」
俊江尼は愛おしげに目を細め、衣の袖でちらりと目尻を拭う。
「あんじょう承りました。私も独りですよって、祥子はんと昔語りする気持ちでお預かり致しましょ―――時に羽希はん、吉崎はんは…?」
「…はあ、あの」
私はちょっと口ごもる。
「今ちょっと、障子貼りを…」
「へ?」
俊江尼はぽかんとした。
「少し前に新調したばかりどっせ」
「はあ…ちょっと、色々…」
私は首をすくめ、恐れ入る。
「器用な人ですなあ…」
俊江尼は感じ入ったように頭を振り、またひとしきり人形の包みをあちこちから眺めて感嘆し、はたと顔を上げて呟いた。
「お蔵の方は、もう…?」
「はい」
私は頷いた。
「さっき司法書士さんがいらして、目録をお渡ししました」
「ほな、手続きもぼちぼち終わりですなぁ」
少ししんみりした表情で、俊江尼は頷いた。
寺はなだらかな山の中腹にあり、通された庵室は竹林に面している。言葉が途切れると葉ずれの音が波のように響き、胸を浸した。
「―――本当に、よろしいんやな…」
「はい」
一度だけ、短いやりとりが交わされた。
どちらの声も、穏やかだった。
「どうだった?」
縁側に新しい紙を貼り替えた障子戸を立てかけて、足を投げ出して煙草を吸っていた沙耶が顔を上げた。
「喜んで下さってた―――それで袱紗とか、ぜひお願いしたいって」
「ああ、それが一番喜ばれる。職人は仕事が増えてナンボだから」
沙耶は小さく笑みを漏らし、生乾きの障子を振り返る。
「枠とかは、接着剤でくっつけただけだから…」
「気をつけるから大丈夫よ」
そして並んで縁側に座り、庭とその向こうに広がる景色をぼんやり眺めた。
「……供養塔に花、供えたんだ?」
「ええ」
「お仏壇のと同じだ」
「そう」
時間が、ゆっくり過ぎていく。
(携帯)
引用返信
/
返信
削除キー/
編集
削除
■5761
/ ResNo.33)
鎮雛・32
▲
▼
■
□投稿者/ 葉
一般人(46回)-(2009/04/27(Mon) 22:39:50)
「見てきたけど…」
私は背後の座敷を振り返る。
「空になってたわ、一升瓶」
「日本酒派だから……でも、飲ませ出したらキリがないよ」
「明日、二日酔いで電車に乗るのかな」
私の呟きに沙耶はちらりと視線を向け、再び煙草に火をつけた。
「……あれ、置いていっていい?」
「え?」
沙耶は肩をすくめる。
「からかわれるから……昨夜の……」
私もつられて赤くなり、背中を丸めた。
「大事な物なんじゃないの?」
「売り物にならないし、もし盗まれても自力で戻って来るし……」
また顔を出すから、と言って沙耶は俯いた。
私はひどく安心した。
「―――いつかは来るかもしれないよ、彼女」
低い声で沙耶が呟く。
「懲役になるかどうかも分からないし、懲役を終えた後かもしれない。それは彼女次第なんだけど―――」
「……そうね」
私は頷き、沙耶にならって足を投げ出した。
「その時はまず、お茶でも出すわ」
不意に、沙耶が弾かれたように笑い出す。
私はちょっと驚き、そして笑った。
(携帯)
引用返信
/
返信
削除キー/
編集
削除
■5762
/ ResNo.34)
ありがとうございます
▲
▼
■
□投稿者/ 葉
一般人(47回)-(2009/04/27(Mon) 22:50:08)
長々しい話を読んで下さった方やコメントを下さった方々に、今さらながらどうもありがとうございました…
恥ずかしいやら、何とお礼を言えばいいのか、いやもう本当にお見苦しくてすみませんでした…汗しか出ません。
ありがとうございましたm(_ _)m
(携帯)
完結!
引用返信
/
返信
削除キー/
編集
削除
このスレッドをツリーで一括表示
<前のレス10件
スレッド内ページ移動 /
<<
0
|
1
|
2
|
3
>>
このスレッドに書きこむ
入力内容にタグは利用可能です。
他人を中傷する記事は管理者の判断で予告無く削除されます。
半角カナは使用しないでください。文字化けの原因になります。
名前、コメントは必須記入項目です。記入漏れはエラーになります。
入力内容の一部は、次回投稿時の手間を省くためブラウザに記録されます。
削除キーを覚えておくと、自分の記事の編集・削除ができます。
URLは自動的にリンクされます。
記事中に No*** のように書くとその記事にリンクされます(No は半角英字/*** は半角数字)。
使用例)
No123 → 記事No123の記事リンクになります(指定表示)。
No123,130,134 → 記事No123/130/134 の記事リンクになります(複数表示)。
No123-130 → 記事No123〜130 の記事リンクになります(連続表示)。
Name
/
E-Mail
/
Title
/
URL
/
Comment/ 通常モード->
図表モード->
(適当に改行して下さい/半角20000文字以内)
■No5760に返信(葉さんの記事) > 俊江尼が住持をつとめる禅寺は、私の家から歩いて十分ほどの場所にある。 > 「―――まあまあ、綺麗なべべ着せて貰うて…」 > 母と同年ならば六十半ばだが、仕草や表情にどこか童女めいた所のある俊江尼は雛人形の包みを見ると目を見張り、いそいそと手を合わせた。 > 「娘時分にこさえた晴れ着やなんかも祥子はん、みぃんな処分してしもて……まさか居んようになってから、手放しなさった娘さんにこないにして貰えるやなんて、夢にも思うておりませなんだやろなぁ…」 > 俊江尼は愛おしげに目を細め、衣の袖でちらりと目尻を拭う。 > 「あんじょう承りました。私も独りですよって、祥子はんと昔語りする気持ちでお預かり致しましょ―――時に羽希はん、吉崎はんは…?」 > 「…はあ、あの」 > 私はちょっと口ごもる。 > 「今ちょっと、障子貼りを…」 > 「へ?」 > 俊江尼はぽかんとした。 > 「少し前に新調したばかりどっせ」 > 「はあ…ちょっと、色々…」 > 私は首をすくめ、恐れ入る。 > 「器用な人ですなあ…」 > 俊江尼は感じ入ったように頭を振り、またひとしきり人形の包みをあちこちから眺めて感嘆し、はたと顔を上げて呟いた。 > 「お蔵の方は、もう…?」 > 「はい」 > 私は頷いた。 > 「さっき司法書士さんがいらして、目録をお渡ししました」 > 「ほな、手続きもぼちぼち終わりですなぁ」 > 少ししんみりした表情で、俊江尼は頷いた。 > 寺はなだらかな山の中腹にあり、通された庵室は竹林に面している。言葉が途切れると葉ずれの音が波のように響き、胸を浸した。 > 「―――本当に、よろしいんやな…」 > 「はい」 > 一度だけ、短いやりとりが交わされた。 > どちらの声も、穏やかだった。 > > > 「どうだった?」 > 縁側に新しい紙を貼り替えた障子戸を立てかけて、足を投げ出して煙草を吸っていた沙耶が顔を上げた。 > 「喜んで下さってた―――それで袱紗とか、ぜひお願いしたいって」 > 「ああ、それが一番喜ばれる。職人は仕事が増えてナンボだから」 > 沙耶は小さく笑みを漏らし、生乾きの障子を振り返る。 > 「枠とかは、接着剤でくっつけただけだから…」 > 「気をつけるから大丈夫よ」 > そして並んで縁側に座り、庭とその向こうに広がる景色をぼんやり眺めた。 > 「……供養塔に花、供えたんだ?」 > 「ええ」 > 「お仏壇のと同じだ」 > 「そう」 > 時間が、ゆっくり過ぎていく。 > > (携帯)
File
/
アップ可能拡張子=> /
.gif
/
.jpg
/
.jpeg
/
.png
/.txt/.lzh/.zip/.mid
1) 太字の拡張子は画像として認識されます。
2) 画像は初期状態で縮小サイズ250×250ピクセル以下で表示されます。
3) 同名ファイルがある、またはファイル名が不適切な場合、
ファイル名が自動変更されます。
4) アップ可能ファイルサイズは1回
200KB
(1KB=1024Bytes)までです。
5) ファイルアップ時はプレビューは利用できません。
6) スレッド内の合計ファイルサイズ:[0/500KB]
残り:[500KB]
削除キー
/
(半角8文字以内)
完結!
BOX/
お話が完結したらチェックしてください!
プレビュー/
Mode/
通常管理
表示許可
Pass/
HOME
HELP
新規作成
新着記事
ツリー表示
スレッド表示
トピック表示
発言ランク
ファイル一覧
検索
過去ログ
-
Child Tree
-