| 姉は血を吐く、妹は火吐く、可愛いトミノは宝玉(たま)を吐く ひとり地獄に落ちゆくトミノ、地獄くらやみ花も無き
これを三回読んだら死ぬよ、と教えてくれたのは誰だったか…思い出せない。 「三回読んだら、じゃなくて、暗記したらだったかな…分かんない」 思い出した。綺麗な巻き髪の、ぱっちりした瞳のあの子だ―――名前は思い出せない。聞いていなかったのかもしれない…どっちでもいいか。 あたしは物覚えが悪く、何事も皆からワンテンポ遅れがちなため、おつむが足りないとよく言われた。そう言ったのは親だったか、学校の先生だったか、友達だったか…忘れてしまった。
暗いなあ。 どこだか分からないけど、ここは暗い。 狭いのか広いのかも分からない。そんな真っ暗闇の中、あたしはもうずいぶん長い事、ここに座り続けてる。 上を見上げると、そこには淡い光が見える。 …きれいだな、とぼんやり思う。ここまでは届かないけれど、ほのかに青く揺れる光は夜の水面のよう。深い海の底や井戸の底から水面を見上げたら、こんな感じなんじゃないかなあ。
誰に見咎められるわけでもないのにきちんと正座して、あたしは上を見上げ続ける。 そうしていると、何かを思い出せるような気がする。
何か、とても大切な事を。
(携帯)
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